気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2013-06-03 19:38:23 | 朝日歌壇
二人きり孤島のようなソファーにて授乳している午前三時
(桜井市 山添聖子)

その人が妻と言うとき泳がせる視線の先に咲き匂う花
(松阪市 こやまはつみ)

完治などありえぬ母の手をとれば百年生ききし皮膚の固さよ
(佐世保市 近藤福代)

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一首目。赤ちゃんが小さいと夜中にも授乳しなければならない。作者は午前三時にまで、深夜の授乳をしている。母と子の濃密な時間。孤島のようなソファーの比喩がいい。
結句、午前三時と字足らずになっている。事実はどうであれ「午前二時半」とか「午前三時に」と七音になるように整えることはできる。それをせずにあえて字足らずで挑戦した作者の心意気を感じる。しかし、勇気のない私は、いつもほぼ定型の歌を作ってしまう。特に結句字足らずは、こわくて出来ない。
二首目。その人と作者の関係はわからない。何か想像をかきたてる言い方だ。妻の存在感も大きい。下句の「視線の先に咲き匂う花」が美しい。「・・・さきにさきに・・・」というリフレインは、意図したものかどうかわからないが、妙に気になる表現だ。
三首目。百歳を超えたお母様の存在感が強く伝わってくる。上句の「完治などありえぬ」がかなしく、結句「皮膚の固さよ」が実にリアル。
図らずも、一首目、二首目、三首目と人生を大急ぎでたどるような展開となってしまった。