気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-10-24 18:57:50 | 朝日歌壇
海釣りも畑仕事もジョギングもみな奪われて福島にいる
(福島市 武藤恒雄)

小走りに半蔵門線へと乗りかえるがくがく笑う営業の膝
(東京都 斎木てつ)

フェルメールに会いにゆく朝首筋に一滴二滴香り纏いて
(福山市 金尾洵子)

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一首目。福島にとどまって暮らしておられる作者の思いがそのまま出たわかりやすい歌。新聞では二行に表記されるが「福」と「島」がたまたま分かれたために、「福島」が「福の島」、もっと言えば「幸福の島、幸福の場所」なのだと、今更ながらに気がついた。それなのに、なんと皮肉なことだろう。
二首目。よく短歌に常套句を使うな、と言われる。ここでは「膝ががくがく笑う」というのが、常套句であるが、途中に「営業の」が入っているので、気にならない。東京に行くと、地下鉄が深く何層にも作られていて、矢印にしたがって構内をうろうろすることになる。乗り替えに、けっこうな距離を移動しなければならない。労働の歌として読んだ。半蔵門線という固有名詞も魅力的。
三首目。京都市美術館で「フェルメール展」をやっていて、行きたいと思いながら、とうとう行き損ねてしまった。作者は、香水をつけてうきうきして出かけられたのだろう。「香り纏いて」の結句がいい。難を言えば、漢字が多すぎる気がする。私なら、首筋をひらがなにするかも・・・。

短歌人10月号 同人のうた その3

2011-10-24 00:27:28 | 短歌人同人のうた
ふるさとを探すごとくに夕焼けの路地ゆく影を道連れにして
(宇田川寛之)

ねんねこの矢絣の紫とほき日の母の匂ひがまだ沁みてをり
(有沢螢)

三年前むすめ住みたる常滑の住所も駅もはや忘れたり
(関谷啓子)

いかずちの遠く響ける夕つ方歌詠む椅子がかすかにきしむ
(松永博之)

千の秘めごとある響きなりアマポーラ アマポーラ吐息のやうに
(檜垣宏子)

夏深き未明の街にうぐひすのこゑ立ち渡る山喪ひて
(榊原敦子)

愚痴ばかり聞かされている部屋の椅子ゆらりゆらりと時折揺れる
(川島眸)

幹に枝に蝉を休ませわが辛夷暑きひと日を声の樹となる
(古川アヤ子)

夏山より帰り来たりし息子の背おほきなる雲ひろごりてゐる
(斎藤典子)

ごはん炊いてうなぎをのせてひとり食ふ坂くだるごと一年が過ぐ
(小池光)

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短歌人10月号、同人1欄より。
次の号が来るまでに、同人1欄を読み終えることが出来ました。