気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

まだ遅くない  加藤扶紗子 

2010-12-16 01:20:28 | つれづれ
昨日より今日もう一歩とリハビリに励みて着きし池までの距離

一人病めば一人は杖を捨てて立つやじろべえのごとき老父母の夏

亡き義母は眼鏡のわれを知らざればはずして行かん墓に近づく

一針を積み重ねきて仕上がれり「ちどり足」なるキルトの時間
           「ちどり足」はキルトの図柄の名前

よろけ縞はぎ合わせてもよろけてる菜の花畑の見えない出口

年齢に一つ加えて一月の天の蒼さよ白き百合買う

白き灯の冴え冴えと真夜のコンビニに天国の地図売っていますか

花の下くぐり棺にわかれ来し夜の髪より黄の蕊こぼる

昼間にはなかった気がするパチンコ店「宇宙センター」生き生きと夜

お地蔵のよだれかけなど縫いながらひとを惑わす歌うたいたし

(加藤扶紗子 まだ遅くない 砂子屋書房)

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加藤扶紗子さんの第一歌集を読む。
どんな方か面識はないが、小島ゆかり氏の序文、ご本人のあとがきによれば、58歳のときに椎間板ヘルニアで手術することになり、突発的に短歌を始められたという。それまではパッチワークなどの手芸をなさっていたようだ。
家族詠、旅行詠が多く、裕福で幸せな雰囲気が伝わってくる。そのなかに、彼女特有のユーモアが感じられ、微笑ましい。もう70歳を過ぎられたらしいが、「ひとを惑わす歌」をもっともっと作って欲しいと思う。