気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人12月号  同人1欄

2010-12-01 19:15:59 | 短歌人同人のうた
様式の機能美として家来ども「御意!」とこたへて颯(さつ)と散りゆく
(川本浩美)

一夏(いちげ)わがうち棄てたりしプランターにゑのころ草風草生ひ出でて風
(酒井佑子)

病もつ肉体もまた器なりといえばこころをしまう十二時
(青柳守音)

大き画板かかえて川のほとりゆく少女の見えてそこからの秋
(木曽陽子)

生涯にたつた一度の口紅の濃きいろを見つ死に化粧にて
(杉山春代)

かくしごとあるやも知れぬ思い出の小抽斗あり残照の入る
(川田由布子)

眠れねば鶴にしなれと淡黄の紙のひかりを卓にたためり
(春畑茜)

死者に会ふため矢印を二曲がり一番輝く家に着きたり
(鈴木律子)

青山に行くことありて「茂吉之墓」を携帯の待ち受け画面とする
(山寺修象)

晴天ゆ銀杏黄葉は降りやまず前世に恋ひしひとをまた恋ふ
(阿部久美)

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一首目。短歌人誌を読む喜びの一つは川本浩美の歌が読めること。気分のいい歌。
二首目。酒井佑子の歌にハズレはない。四句目、十音もあるのにちゃんと納まっている。
三首目。亡くなった守音さんの歌を読むのは悲しい。歌は静かに語りかけてくる。
四首目。木曽さんの歌は、本人の人柄どおりいつもさわやか。。
五首目。もうこの一首で亡くなられたお母さまの人柄が立ちあがってくる。
六首目。川田さんの歌もお母さまの挽歌。結句「残照の入る」が決まっている。
七首目。淡黄の紙は薬包紙かもしれない。色の選択にほのかな温みがある。
八首目。一番輝く家は、一番悲しい家でもある。そのあとの寂しさをも感じさせて。
九首目。相変わらずの茂吉愛の歌。「携帯電話の待ち受け」という選択もあるが、やはり画面を選んだのは、正しいと思う。
十首目。上句は景が見えて美しく、下句、永遠を感じさせる。