気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

未完の譜 渡辺茂子

2008-09-18 23:49:29 | つれづれ
登れども同じ位置なる錯覚にわが生き想ふ螺旋階段

溢るるほど洗剤泡だてもの洗ふわがすぎゆきに得しものは何

回りゐる記憶の底の風車子の未来とも吾の過去とも

枕辺の折り鶴一羽嘴下げて夜の灯明るくついばむ姿勢

人並みの人生(みち)など歩みたくなしと子は人並みのことなど言ひて

柿の実の朱きも共に描き添ふるかさこ地蔵は描(ゑが)く子に似る

生き残る一尾の金魚水槽に静止のかたち永く崩さず

(渡辺茂子 未完の譜 短歌新聞社)

* ***************************

先日、日本歌人クラブ近畿短歌大会で、私の歌を選んでくださった渡辺茂子先生(関西覇王樹編集人)の歌集を読む。教師として主婦として歌人として、ずっと誠実に生きて来られた人生が詰まっているような歌集で、読むこちらも姿勢を正される思いで読んだ。この歌集は、平成十年の日本歌人クラブ近畿ブロック賞を受賞している。
自らのなすべきことや立場を充分に自覚しながらも、ふと揺れるこころが表れた歌に魅力を感じた。職業としても家庭でも、子供に関わることが多いので、子供を見る眼差しがやさしく、きめ細かい。ますますのご活躍を!

さみどりのそら豆解凍するやうに寺山修司の新歌集読む
(近藤かすみ)