気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2008-09-16 01:22:35 | 朝日歌壇
中指の包帯少し汚れいて店主ゆっくり釣銭渡す
(西宮市 荻田萬里)

子供っぽく指輪をいじる不思議だね祖母になっても同じことをする
(アメリカ カーリー・ブラウン)

舌先で西瓜の種をさぐるとき言葉を探すごとく黙しぬ
(武蔵野市 野口由梨)

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一首目。小さな店なのだろう。何を商っているのかは、わからないが、店主が指に怪我をして包帯をしていても接客をしている。包帯の少しの汚れ、ゆっくり渡す釣銭・・・と店主の様子をよく見ている。
二首目。作者はアメリカ人で、アメリカに住んでいるようだ。三句目「不思議だね」がちゃんと五音でおさまって歌のかたちになっている。内容も人のちょっとしたクセの変わらなさを言っていて面白い。
三首目。確かに西瓜の種を探したり、食に集中していると、黙ってしまう。それは言葉を捜しているときも同じこと。口は食べることも話すことも両方をこなす大事なところだと再認識させられた。

短歌時評の欄で穂村弘が、大辻隆弘『時の基底』(六花書林)について書いている。この本で著者の大辻隆弘に、あるときはさんざんに書かれているのに、ものともせずこの本を応援する穂村弘は、なかなかの人物。彼が短歌以外の分野でも活躍している理由がこのあたりにあるのかと思った。