気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2008-03-04 00:53:49 | 朝日歌壇
太秦のみ仏いまもその指は頬に届かずうつつは吹雪
(大阪市 関満恒子)

山梨に生れ甲州市山梨市甲斐市となりて迷う故郷
(牛久市 熊本照子)

痛み癒え勇みて泳ぐ一掻きのその一掻きの嬉し立春
(枚方市 秦順之)

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一首目。京都太秦の広隆寺の弥勒菩薩像のことを歌ったのだろう。確かに指が頬に触れそうで触れていない。結句、「うつつは吹雪」で視点が外に向いていくのが面白い。
二首目。作者の故郷の呼び名が市町村の編成のうつりかわりに伴ってつぎつぎかわり、戸惑っているという歌。馴染んだ名前と別れて、慣れたころにまた変わるというのは、複雑な気持ちになるだろう。
三首目。体調が悪くて泳ぐことを禁じられていた作者が、やっと回復して泳げるようになったことの喜びを詠っている。私も先月、少し体調が悪くてプールを休んでいたので、この気持ちはよくわかる。健康で運動できることに感謝しなければと思う。

この春も戸棚に眠るお雛さまを起こさぬままのわれは罪びと
(近藤かすみ)