気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-03-24 21:19:32 | 朝日歌壇
瞬(まばた)きを二つ三つして春の陽は少し明るむ梅の香のする
(鳥取市 山本憲二郎)

故里も昭和も遠し朝霧の川を渉りし牛たちの影
(岡山市 奥西健次郎)

素裸のマネキン五体積み込んで小型トラック雪の街ゆく
(京都市 吉岡節雄)

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一首目。春らしいきれいな歌。春の陽のまぶしさが「瞬きを二つ三つして」で、具体的に表れている。結句に梅の香も持ってきて、春らしさを強調した。リズムも良いと思う。
二首目。故里も昭和も遠いことの例として、後半部分の具体がある。今はもう牛たちが朝霧の川を渉ることはないのだろうか。望郷の思いが感じられ美しい一首。
三首目。京都には、マネキンや理科の教材を製造する会社があって、これは実際に見たものを詠ったのだと思う。マネキンだから素裸でも寒いはずはないが、なにかうら寂しさを感じる。雪の街の寒さが際立ってくる。

だれにでも裸体をさらすマネキンのやうな日記をまた読みに行く
(近藤かすみ)