その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

山崎貴 監督/ 映画 『永遠の0』: いろんな意味で「良く」できた「フィクション」

2014-01-15 00:01:27 | 映画


 ヒット上映中の映画『永遠の0』を見に行きました。2年前に原作を読んで、なかなか良かったので、あの原作がどう映像化されるかを楽しみにしていました。

 2時間20分余りの上映時間は少々長いですが、原作の良さをしっかりと引き出した佳作で、興行成績が良いのも納得しました。特に、俳優陣が熱演です。主人公を演じた岡田くんを初め、各俳優陣が持ち味をしっかり出していて好感が持てました。ジャニーズの岡田くんには正直あまり期待してなかっただけに、落ち着いた内省的な演技には大拍手です。今年のNHK大河ドラマの主役を張るだけはありますね。

 最近、原作者百田氏の保守的発言をしばしば目にする機会があり、本作が懐古的なゼロ戦や戦争美化映画になっているのではと危惧していたのですが、それは杞憂でした。現実の戦争の前線はもっと血なまぐさい、殺伐としたものではないかと思うので、映像がちょっと美し過ぎるのではとは思いましたが、本作は戦争を美化するようなところは無く、戦争に参加せざる得なかった一日本人兵士の家族や仲間への愛、それらと自己の信条との葛藤が描かれており、十分に感情移入できる内容です。

 この映画を見ているとどうしても昨今の靖国参拝議論を考えてしまいます。この映画に登場する戦争に駆り出された人達、それも特攻隊という非人道的かつ非合理的な作戦に命を投げださざるえなかった兵士たちと、この戦争を指導し、作戦を立てた指導者層が、同様に祀られるのは、やっぱりおかしいのではないかと一般感覚としては感じざる得ません。日本人はこの戦争の「敗戦」責任を、自分たちで総括ができてないと改めて考える次第です。

 非常に良い原作、映画であると思うのですが、ストーリーがあまりにも上手く出来すぎているところは、あまのじゃくな私としては少々鼻白むところはあります。主人公にしても、軍隊や戦闘の中であそこまでの言動が本当に可能だったのかと言ったリアリティについても一歩引いてしまいます。まあ、フィクションなのだからと割り切るべきなのでしょうが・・・



≪スタッフ/キャスト≫
監督 山崎貴
原作 百田尚樹
音楽 佐藤直紀
脚本 山崎貴 、林民夫

岡田准一(宮部久蔵)
三浦春馬(佐伯健太郎)
井上真央(松乃)
濱田岳(井崎)
新井浩文(景浦)
染谷将太(大石)
三浦貴大(武田)
上田竜也(小山)
吹石一恵(佐伯慶子)
田中泯(景浦(現代))
山本學(武田(現代))
風吹ジュン(清子)
平幹二朗(長谷川(現代))
橋爪功(井崎(現代))
夏八木勲(賢一郎)

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