5月にアムステルダムで開催されるマーラー・フェスティバルに出演するプログラムのお披露目演奏会。アジアのオーケストラでは初めての招聘で、N響以外の招待オケはロイヤル・コンセルトヘボウ、ブダペスト祝祭管、シカゴ響、ベルリン・フィルというから、メンバーの高い士気も容易に想像がつく。
そして演奏は、その気合と緊張感がひしひしと伝わり、美しく力強い響きは交響曲を聴く醍醐味にあふれたものだった。冒頭のホルンの合奏から最終楽章でタクトが下ろされるまでの100分間、聴くほうも緊張感一杯で全身感度をマックスにあげて受け止めた。痺れっぱなしの音楽体験だった。
オーケストラはほとんどのパートで各パートリーダー2名が演奏する強力布陣。しかも合唱陣が後ろに位置するためか、オーケストラは1階前方にせり出したステージの前一杯から配置されている。結果として、私の3階席右サイドから演奏者たちとの距離が縮まり、3階席ながら音がダイレクトかつ明瞭に伝わってくる。音のシャワーを思いっきり浴びた。
第4楽章のアルトのオレシア・ペトロヴァの独唱や第5楽章のコーラスもオーケストラとのバランスが素晴らしく、突出して目立つことなく、音楽全体の中に溶け込んでいた。ペトロヴァは丁寧かつ繊細な歌唱で、しっかりした芯と豊かな表現力を感じるものだった。
合唱陣は東京オペラシンガーズ・NHK児童合唱団とも純度高い透明感にあふれる歌唱。以前、パーヴォ/N響で同曲を演った際に、児童合唱の子が演奏中に体調を崩してしまうというアクシデントがあったが、この日は異様なまでの緊張感の中、しっかり歌い切った(小学校低学年と思われるような児童もいた)。
最終楽章の美しさは私の筆力ではとても書き表せないもの。静かに弱音で演奏される部分は耳をそばだて、ピュアで奥深い音楽を前のめりで聴いた。始まって相当長い時間がすでに経過しているのだが、この楽章が終わってほしくない、いつまでも続いてほしいという思いで一杯だった。
前日は金管陣が不調との指摘を多くのポストをX上に見かけて心配したのだが、この日は大きな違和感は感じることなく、むしろ金管陣の積極的に攻めに出る姿勢が感じられた。木管陣は節々に美しいソロを聴かせたし、弦陣は前のめりの演奏は普段以上に太く、厚いアンサンブルを創っていた。
ルイージはいつものアツアツの指揮ぶりで、オケ、合唱を引っ張る。ところどころの緩急や強弱のアクセントがつくが、全体としては無駄無い筋肉質の音楽作りの印象。ただ私自身、楽譜読んだり、聴き比べするほど聴き込んでも居ないので客観的な解釈論はよく分から無い。私自身は十二分に楽しんだ。
終演後は、完売・満員のNHKホールの聴衆から割れんばかりの熱狂的な拍手と歓声が贈られた。私も手が痛くなるほどの拍手を寄せた。アムステルダムでは果たしてどのような評価を受けるのか。ぜひ、遠慮することなく存分に力を発揮し、欧米の参加オケと聴衆を驚かせて来てほしい。
定期公演 2024-2025シーズンAプログラム
第2036回 定期公演 Aプログラム
2025年4月27日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]
NHKホール
― N響ヨーロッパ公演2025 プログラム ―
マーラー/交響曲 第3番 ニ短調
指揮:ファビオ・ルイージ
メゾ・ソプラノ:オレシア・ペトロヴァ
女声合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:NHK東京児童合唱団
Subscription Concerts 2024-2025Program A
No. 2036 Subscription (Program A)
Sunday, April 27, 2025 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]
NHK Hall
- The Program Scheduled to be Performed in NHKSO Europe Tour 2025 -
Mahler / Symphony No. 3 D Minor
Conductor: Fabio Luisi
Mezzo Soprano: Olesya Petrova
Female Chorus: Tokyo Opera Singers
Children Chorus: NHK Tokyo Children’s Chorus