朝ランから7時半過ぎに宿に戻った後、シャワーを浴びて、すぐにチェックアウト。奈良を11時に出なくてはいけないので、8時から制限時間3時間の奈良観光をスタート。奈良と言えば見仏しかない。
【三月堂(法華堂)】
まず向かったのは、さっき横を走ったばかりの東大寺の三月堂(法華堂)。奈良の中でも個人的にもっとも落ち着くお堂であり、奈良に来たからには必ず訪れなくてはいけないところ。8時半からの拝観のはずなのだが、8時20分に到着した時にはもう開いていた。
753年創建とされる東大寺の中でも最古の建物は実に品の有る佇まい。そして、中の仏像群が素晴らしい。本尊の不空羂索観音像を中心に10体(国宝、奈良時代)の仏像が並ぶ。この静寂のお堂の中で仏像たちが放つそのエネルギーや気にあてられるだけで、心身が浄化される。
うれしいのは、このお堂には仏像と対面しながら座れる小上がりがあること。小上がりに腰かけながら、仏さまと対話する。
【不動堂】
続いて、三月堂脇の案内表示に導かれ、東大寺敷地の東端にある不動堂を訪れる。こぢんまりとして、言いようによってはどこにでもあるようなお堂は江戸時代の建物とのこと。お堂の外縁から中をのぞいていると、寺務所のお坊さんが「どうぞなかにおはいください」と言ってくれた。
恐る恐る障子をあけて、中に入る。誰も居ない。中央に護摩壇があり、その前は5名も入れるかどうかぐらいの大きさ。部屋にはお香の匂いが立ち込めている。護摩壇の奥には、五大明王像が祀られていた。護摩壇の前で正座し、静寂の中で明王様とご対面。
【四月堂】
不動堂を出て、二月堂の前の四月堂に立ち寄る。かつて旧暦の4月に法華経に由来する法華三昧会が行なわれたことから、四月堂の通称がある(東大寺HPより)とのこと。平安時代の治安元年(1021)に創建されたとの記録が残るらしいが、現在の建物は江戸期とのこと。不動堂よりも一回り大きいが十分に小ぢんまりとしたお堂の中に入ってお参り。
中には、十二面観音像や普賢菩薩騎象像が安置してある。小さいお堂にぴったりの小さな仏さまだ。これはこれで親近感を覚える。不動堂と同様、中にいるのは私だけなので、じっくりと仏さまを近くで拝見したり、座ってなんちゃって座禅を暫し試みたりした。落ち着くなあ~。
【東大寺ミュージアム】
二月堂のエリアを離れ、大仏殿近辺に戻る。丁度、東大寺ミュージアムの開館の9時30分。仏像好きを自認するにはお恥ずかしい話だが、初めて東大寺ミュージアムを訪れた。
東大寺の秘宝を集めたミュージアムは見応え満載。とりわけ、仏像コーナーでの千手観音菩薩(木造 彩色 平安時代)の優しさと威厳が両立した美しさと両脇を固める日光菩薩立像と月光菩薩立像(いずれも塑像 彩色 奈良時代)の落ち着いたお姿は壮観だ。更に国宝の四天王立像や吉祥天像、弁才天像も見応えたっぷり。
ただ、ミュージアムでの見仏は東京の展覧会企画でもあるし、奈良である必要はない。国宝のお値打ち仏像ではあるが、やっぱりもともとあった法華堂にあったらまた全然違った雰囲気なんだろうなあと思った。
【興福寺 東金堂】
ミュージアムを出ると周囲の風景が全く違っていてびっくり。観光客がぞろぞろと現れていて、外国人観光客は鹿に餌を与え、狂喜している。これはこれで奈良っぽくて良いし、微笑ましい。
さ~て、残り時間は45分をどう使うか。荷物を預けたホテルに戻りがてら、興福寺の東金堂を訪れることにした。
見仏客が多く落ち着いてゆっくりという雰囲気ではなかったが、お堂の中に林立する仏像は見事としか言いようがない。中央に本尊の薬師如来座像、その脇を文殊菩薩座像と維摩居士菩薩坐像、日光・月光菩薩像が固める。そしてさらにその周りを十二神将像。四天王立像が睨みを利かせている。全てが国宝・重要文化財。
安寧と緊迫が混じった、微妙なバランスに満ちた空間。これはミュージアムでは味わえない空気である。できれば、朝の二月堂のように静寂の中で、ご対面できたらとは思う。そしたら、どんな感動があるのだろうか。無いものねだりをしてもしょうがないので、残り時間をフルに使って、仏さまを拝ませていただいた。
この日の3時間奈良見仏の結論。やっぱり、見仏はお堂に限る!
2023年5月13日