花は、率直にいえば生殖器である。
有名な蘭学者の宇田川先生は、彼の著「植物啓源」に、「花は動物の陰処の如し、生産蕃息(はんそく)の資(とり)て始る所なり」と書いておられる。
すなわち花は誠に美麗で、且つ趣味に富んだ生殖器であって、動物の醜い生殖器とは雲泥の差があり、とても比べ物にはならない。
そして見たところなんの醜悪なところは一点もこれなく、まったく美点に充ち満ちている。
まず花弁の色がわが眼を惹きつける、花香(かこう)がわが鼻を撲(う)つ。
なお仔細に注意すると、花の形でも額でも、注意に値せぬものはほとんど無い。
-牧野富太郎-
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