(illustration/Fujio Akatsuka)
「イスラム帝国夜話」にこんな話が出てくる。
ある男がいた。その男は知人縁者たちからの多くの推薦状を携えある国の宰相に仕官先の紹介を頼みにいく。
しかし時の宰相はけんもほろろ取りつく島もなく、おまけにコテンパンに侮辱までされる有様となった。
宰相の面罵が終わると男は少しの間考えたあと、笑みさえ浮かべて丁寧な謝辞を述べ辞去しようとする。
宰相は、こんな最悪な仕打ちに対してさえ感謝されるのは何故かと気になり、呼び止め尋ねると男はこう答えた。
「しかるべき理由があってこそ、私は閣下に感謝申し上げているのです。
と言いますのも、閣下が私の事についてどのように考えておいでになるのか、最初の出会いで正直に御本心をみせて下さりました。
そのお蔭で、私は就職を願うあまりに屈辱の頭を下げる、そうした辛い事をせずに済みましたし、閣下のところに夜討ち朝駆けをするという苦労をしなくてもよいようになりました。また閣下への執り成しを頼んだ人たちへの機嫌取りもしなくて済むことになりました。まことにありがとうございました」。
「イスラム帝国夜話」にこんな話が出てくる。
ある男がいた。その男は知人縁者たちからの多くの推薦状を携えある国の宰相に仕官先の紹介を頼みにいく。
しかし時の宰相はけんもほろろ取りつく島もなく、おまけにコテンパンに侮辱までされる有様となった。
宰相の面罵が終わると男は少しの間考えたあと、笑みさえ浮かべて丁寧な謝辞を述べ辞去しようとする。
宰相は、こんな最悪な仕打ちに対してさえ感謝されるのは何故かと気になり、呼び止め尋ねると男はこう答えた。
「しかるべき理由があってこそ、私は閣下に感謝申し上げているのです。
と言いますのも、閣下が私の事についてどのように考えておいでになるのか、最初の出会いで正直に御本心をみせて下さりました。
そのお蔭で、私は就職を願うあまりに屈辱の頭を下げる、そうした辛い事をせずに済みましたし、閣下のところに夜討ち朝駆けをするという苦労をしなくてもよいようになりました。また閣下への執り成しを頼んだ人たちへの機嫌取りもしなくて済むことになりました。まことにありがとうございました」。