咲とその夫

 定年退職後、「咲」と共に第二の人生を謳歌しながら、趣味のグラウンド・ゴルフに没頭。
 週末にちょこっと競馬も。
 

池波小説・・・堀部安兵衛

2011-11-02 22:47:30 | レビュー
 「人ひとり、生まれ出でてより死ぬるまで、それぞれに生くる道は、永く、けわしく、めんどうなものでございますが・・・・死ぬるときは一瞬でございますな」

 「いかにもな・・・」

 「人は必ず死ぬるもの、でござりますな」

 「それが身にしみてわかったか?」

 「はい。私も和尚様も、一日一日と死につつあるのでございますな」

 「それで?」

 中略

 「ゆえに・・・人は、死ぬるつもりで生きなければならぬ、と思い至りました。このことは、いつもいつも、菅野の叔父から申し聞かされていたことでございますが・・・それが、そのことが、今日はじめて・・・・」

 「人生の極みとおぼえたか」

 「はい」

 この一遍は、主人公・中山安兵衛が義理叔父・菅野六郎左衛門の助太刀をして、村上兄弟やそれを助勢した中津川祐見一党を相手にした史上に名高い「高田の馬場の決闘」に勝利した後、重傷で林光寺に担ぎ込まれた義理叔父・菅野六郎左衛門の最期を看取った安兵衛と道山和尚との会話である・・・。

 死というものが、常に身近にあるこの時代、池波正太郎小説には必ずといっていいほど、人の死についての記述が多分に書き込まれている。そして、そこから人が生きるためにいかにして個々の人生を送るのか・・・などが、生き生きと書き込まれており、いつも感服しながら読んでいる。

 我が国も戦前までは、死と言うものが身近にあったことで、人々は懸命に生きていたと思われる。ところが、戦後60有余年、身近に死と向き合うことの少なくなった現代社会では、懸命に生きるということが忘れられようとしている。

 さて、堀部安兵衛こと、中山安兵衛については、高田の馬場の決闘に助太刀をして名を馳せたことで、赤穂藩浅野家の家来・堀部弥兵衛に請われて養子となった。後に藩主・浅野内匠頭長矩が江戸城で刃傷に及んだことから、赤穂義士の一人となった・・・程度、の知識しかなかった。



 今回の小説では、主人公・安兵衛が元服前の頃から物語がはじまるが、父は越後国新発田藩溝口家家臣・中山弥次右衛門(200石)である。母は安兵衛を産んでまもなく死去、嫁いでいる姉たちがいる・・・。

 厳しい父から連日剣術の基本を教わるが、どちらかというと読み書きの方が好きであった・・・幼少時代。ところが、ある時突拍子もない事件が起こり、父が一身に罪を受けて切腹して果てる。

その間際に安兵衛に対して・・・
 「中山弥次右衛門。何事にも見苦しき、いいわけはせぬぞ」

 絶叫するや、腹から抜いた刀の切っ先を喉のあたりへ当てがい

 「や、安兵衛・・・・」

 「し、死ぬるをおそれるな。死ぬるはおそろしきものでないこと、父はいま、はじめて知っ・・・・」

 と、絶命したその父の死を胸に秘め、14歳の安兵衛は後日父の汚名を晴らすため出奔する。そして、流浪するうちに若き日の剣客・中津川祐見(後に高田の馬場で決闘)に助けられる。

 その後、一人の女性を巡り中津川祐見と敵対し、彷徨っているうちに菅野六郎左衛門に出会い、安兵衛の生き様や人間らしさを気に入り叔父・甥の関係になる。

 また、安兵衛はさまざまな人たちとの関わりの中で、剣術修行にも打ち込んでついには堀内源左衛門の門弟になった。そして、天性の剣の才能により堀内道場で頭角をあらわすようになり、後に四天王となる。人間的にも大きく成長し、その間に赤穂藩士である奥田孫太夫とも親交を深める。
 そして、些細なことが発端となって起きた高田の馬場の決闘で、義理叔父・菅野六郎左衛門の助太刀をすることとなる。

 その後、堀部弥兵衛に執拗に請われて弥兵衛の一人娘「幸」の婿養子となって、播州赤穂藩・浅野家に仕えるが・・・・・。
 この小説に触れたことで、堀部弥兵衛の生き様を垣間見る事ができた瞬間である。

 小説の世界であり当然フィクションの部分も多彩であるが、池波小説の世界に誘われ秋の夜長を満喫している・・・相も変わらず。

 それが、また楽しいひと時でもある。(夫)


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競馬の話・・・パドック解説

2011-11-02 21:50:21 | スポーツ
 JRA競馬中継番組を観ていると次のレースに出走する競走馬たちがパドック(下見所)に出て、各厩舎のスタッフに連れられて隊列よろしく周回が始まる。

 その周回の模様を中継用TVカメラが、1頭、1頭を舐めるように画面に映し出す。すると、それに合わせるように中継局のアシスタントの女性が馬体重を発表し、競馬評論家や競馬記者などの解説者が各馬の動きに併せて各競走馬の出来上がり具合を簡潔に解説する。

 一通りの解説が終わるとパドックの画面は、切り替わって他場のレースが中継される・・・3場で開催されていると概ね10分間隔で、パドックと本馬場でのレースが中継される。全場の全レースを検討することは不可能であり、決めたレースのみ検討することとなる。

 その目まぐるしい模様を解消するため、競馬専用チャンネルのJRA・グリーンチャンネルでは、今年の7月から1チャンネルはパドック専用チャンネルに変更。もう1チャンネルはレース優先チャンネルとなった。

 このパドック専用チャンネルでは、周回する競走馬の様子をじっくりと映し出し、さらに返し馬の模様も放映するものだから現地に行っているような気分に・・・。



 ところで、パドックの放映では、その日出走する各馬の調子の良し悪しについて解説し推奨馬を上げている。その際にいろいろな言い方で、中には専門用語などもあるけど、簡潔明瞭に解説している・・・解説者によって特徴もあるが。

 先日、リビングで競馬中継を見ていると、次のような解説があった。
 「今日の○○○(馬名)は、前回見たときよりも、前の出(前肢の一歩)が固く全体に覇気がないです」とか・・・。

 「今日の△○▲は、最終調教がしっかりできており、トモの張りもあって全体のつくりがいいです。今回は大丈夫でしょう」とか・・・。

 「今日の○×○は、まだもう一絞り必要でしょう。全体にゆるいです」とか・・・。

 「今日の××▲は、プラス15キロでも馬体が戻ったのでしょう。太め感はないですから今回はいいです」とか・・・。

 そのうちに次のような表現の解説があった。
 「今日の▲●×は、肌艶(はだつや)も良く皮膚も薄く、後肢の踏込も強いのでいいでしょう」と・・・。

 「今日の△△▲は、前向きさが見られません。トモの送りも甘いです」と・・・。

 すると、キッチンの片隅で干し柿の準備をしていた家内が偶然、耳にしたらしく。
 「何、馬に前向きさがあるとか、ないとか。肌艶がいいとか、悪いとか言っているが、前向きさなんてどうして分かるの・・・」と、さらに「馬の気持ちが分かるのかね・・・」と

 当方も思わず笑った。「パドックで周回している馬を何度も見ているプロの人にとっては、それぞれの競走馬がレース前に行う一挙手一投足の微妙な変化を見つけて解説しているんだろう」と・・・答えた。

 「確かにパドックを何度も眺めていると今日はこの馬やる気があるとか、あまりやる気がなさそうだとか、第一印象で分かるような気もするよ。でも、その通りにならないところが面白いところだけどね。解説のプロの人たちでもその通りにはならないからね」などと説明すると、家内も笑っていた。

 あの天才・武豊騎手でも地方競馬に出向き、パドックで競走馬を見て馬券を買っても全く当たらないと・・・ある番組で語っていた。
 なお、JRAの馬券は購入することはできないが、地方競馬は購入できるらしいので、地方競馬でのことらしい。

 いかに当日の体調がよくてもレースにおける展開とか、思わぬハプニング(コンマ1秒以下の世界)などで実力をうまく発揮できないことも大いにあるのが競争馬の世界。そこが面白いところでもある。
 パドック解説者の見解は、あくまでも参考意見であり、それ以降は自己責任の範疇であろう。(夫)


[追 記]~競馬用語~
●パドック
 各競馬場では発走前に当該レースに出走する馬が、装鞍所からここに入り、この中を厩務員にひかれて周回する。下見所ともいう。ファンはここで馬の状態を観察できる。本馬場にむかう前に騎手が乗り、ひと回りする。
●返し馬
 パドックから本馬場に入場してきた馬が、発走時刻まで馬場のあちこちに散ってする足ならしのこと。いわば馬のウォーミングアップ。
●トモ
 馬体を大きく2つに分けて前躯〔ぜんく〕、後躯〔こうく〕と呼ぶが、その後躯のうちの腰部、臀部、後肢のこと。


(出典:JRA 公式HP抜粋)

参考資料:サンスポ、大スポ、JRA 公式HP、JRA-VAN NEXT他

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