なんともいい感じの表紙。BRUTUS 2016年9/1号
しばらくツン読になっていた「BRUTUS」に気づき、喫茶店でパラパラめくって眺めて読んだ。昨年は星野道夫さんの没後20年。このBRUTUSと同時期にcoyoteもとり上げていた。彼の著作では、『イニュニック』くらいしか読んでいない(読んだけれど、忘れているだけなのかもしれない)ので、まだまだ星野さんのことを知らないのだが、星野ワールドにはとっても惹かれるものがある。
この特集号では、星野さんの生い立ちからアラスカでの生活までをたどる。アラスカの土地に心奪われるきっかけになったのは、ナショジオ刊行の写真集『ALASKA』だという。何度もページを繰り、そのなかに掲載されていたShishmarefという村の村長に、何でもするから村に滞在させてほしいという趣旨の手紙を送ったというエピソードが出てくる。完全に魅入られていたし、一途だったんだね。その村長が見ず知らずの日本の若者の熱意に応えるところがまたすごい。
アラスカに定住してから撮影行には欠かせなかった、ブッシュパイロットとの付き合いについてもすごいエピソードが出てくる。アラスカの地では、夏でも天候の急変で突然吹雪になることがあるというから、その気候たるや想像を絶する。そんな時は運を天に任せ、いくつもの山を、そして谷を縫って飛び、町に戻ることになる。運が悪ければ、町のはるか手前の山中で視界が閉ざされてしまう。そんな事情を、星野さんは『旅する木』にしたためていて、抜粋がこの雑誌に掲載されている。ほかにも抜粋されていて目を引いたのは、イヌイットたちのクジラ狩の話。非常に原始的な狩りではあるけれども、ある種の荘厳さ、自然への畏敬が伝わってくる。
特集では、星野さんシンパの方々も登場している。それぞれが星野さんの人となり、思想、生き方、思い出話などを語っている。池澤夏樹さんや岩合光昭さんの話は、へえ、そうなのかと思わせるもの、膝を打って共感できるものなど読み応えがある。特筆すべきは、ナショジオの編集者だったロバート・ヘルナンデスさんが語る星野道夫さんとの出会いだ。そもそも彼が星野さんの写真を評価し、ナショジオ誌面に掲載しなければ、いまの星野道夫はなかったかもしれない。
BRUTUS1冊でだいぶ星野道夫さんのことを知ることができた。次は『旅をする木』を読んでみようかな。
BRUTUS(ブルータス) 2016年 9/1 号[こんにちは、星野道夫。] | |
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