『ナショナル ジオグラフィック日本版』2020年10月号
最近の仕事の忙しさから、だいぶ遅れて読んでいるナショジオ。いま読んでいるのはまだ昨年の10月号だ。この号の記事でアメリカの3大トレイルをとり上げたものがあったので簡単に紹介しよう。
最もよく知られているのは、やはりソローの『森の生活』で有名になったアパラチアン・トレイルだろう。私は常々行きたいと思っていたのだが、お金と暇がなく、行きたかったことすら忘れていた。
最近はコロナのせいで、どんなに行きたくても可能性がゼロと来ているから、あきらめもつくというものだ。
まず3大トレイルをごく簡単に紹介しよう。
- パシフィック・クレスト国立景観トレイル(PCT)4,265Km
- コンチネンタル・ディバイド国立景観トレイル(CDT)4,990Km
- アパラチアン国立景観トレイル(AT)3,525Km
PCTは西海岸、ワシントン、オレゴン、カリフォルニア州にまたがるシエラネバダ山脈を南北に縦断するトレイルで、見所はやはりヨセミテの壁だろう。
CDTはモンタナ、ワイオミング、コロラド、ニューメキシコを縦断するトレイルで、3大トレイルのうち最も長い。イエローストーン国立公園を抜けていく。
ATは東海岸のメーンからジョージア州までのたおやかなアパラチア山脈を貫くトレイルで人気が高い。
いずれも容易には完歩できない長さなのだが、この3大トレイルを端から端まですべて歩いたという人が全米で400人超いるというから驚きだ。これだけの距離を歩きとおすと、おのずと自然の偉大さや神について考えることになるらしい。筆者のニコラス・クリストフ(ピュリッツアー賞受賞者)は、トレイルは大自然の中の大聖堂だと喝破し、17世紀オランダの哲学者スピノザの言葉を引く。「神とは自然とその法則だ」。自分をはるかに凌駕する存在を目の前にして、畏怖の念を抱き、謙虚さを思い出すのだそうだ。
これらのトレイルは歩きやすいように整備されていはいるものの、ガラガラヘビやサソリがいるので注意が必要だ。大自然とはそういうものなのだ。