目指せ! 標高1122メートル

山の神にお供して歩きつづける、ある山のぼら~の記録。ネイチャー、冒険の本もとりあげるよ。

洞窟探検の魅力が詰まった『洞窟ばか』

2017-02-17 | 山・ネイチャー・冒険・探検の本

 『洞窟ばか すきあらば、前人未踏の洞窟探検』吉田勝次(扶桑社)

表紙を見ただけで、思わず吸い寄せられ、手にとってしまった。この引力はすごい。ページを開くと、洞窟のスケールの大きい写真、神秘の世界を切り取った写真と圧倒される。

口絵に続いて読み始めると、期待にたがわず面白い。著者の吉田さんは、いきなり洞窟探検にハマったわけではなく、スキューバや登山をやっていたそうな。その経験がいかんなく洞窟探検には活かされている。縦穴の洞窟には、登山のロープワークが必要だ。それも岩角でロープが傷まないような精緻なロープワーク。地底へ潜っていけば、水没していることもあるというから、その場合はスキューバだね。なかなか洞窟探検家でこの両方を兼ね備えた人は少ないらしく、吉田さんのような方は貴重な存在で、いわば洞窟探検界のスーパースターだ。

そんなスーパースターでも、地味な作業を延々こなしたこともある。岩手県安家洞(あっかどう)で、次なる広場や横穴があると確信して6日もただひたすら掘りまくったというからすごい。結果は貫通し、喜び炸裂、そのエキサイトぶりがストレートに伝わってくる。洞窟探検の醍醐味のひとつは、この新発見なのだという。誰もまだ見たことのない景色を見ること。一番乗り! 三重県の霧穴(きりあな)も一番乗りを果たしている。たんに土地所有者が否といって人を寄せ付けなかっただけなのだが、2度目に許可をとりに来たら、OKしようと所有者は考えていたという。吉田さんはあきらめずに2度目の交渉で、あっさりOKを勝ち取り、未踏の洞窟に入ることができた。

吉田さんは、こうして洞窟の魅力に取り付かれ、もともと自らが社長を務める建設会社、有限会社勝建内に、探検ガイド事業部「地球探検社」を設立する。それがどんどん膨れ上がって、JET(Japan Exploration Team)や洞窟探検ガイド集団「Ciao!」につながっていく。それだけ、洞窟の魅力を知ってしまった人が増えたということなのだろう。

この本の魅力は、吉田さんたちが編み出した洞窟探検のルールの紹介にもある。たとえば、メシや睡眠のルール。基本真っ暗闇の洞くつ内では夜昼の区別がなくなるので、疲れたら休み、腹が減ったらメシを食べ、眠くなったら、寝るを繰り返すという。人間の生理そのままに生きる原始人の生活みたいで面白いね。ほかには、糞尿の始末をどうしているかなど興味深く、過激(!)な話が出て来る。とくに便は、洞窟内に放置できないので、持って帰るというのだが、吉田さんだけが特異で、ヘルメットの下に入れるという。そうすれば、どんな狭いところを通過しようが、破裂の心配がない。ザックに入れているとそうはいかない。必ず狭いところで、圧迫されたり、摩擦を受ける。その結果……おそろしや。

狭いところの通過話が出たので、吉田さんの怖いエピソードを一つ。狭小の場所で頭を下方45度に向けた状態で全身がすっぽりとはまり、動けなくなった。パニックに陥ると、過呼吸になってしまうから、心を十分に落ち着かせ、対処法を考えた。そして両の手のひらで土を押さえて少しずつバックを試みた。わずかに動いた。それから気の遠くなるような30分をかけて窮地を脱出したという。

想像するだに恐ろしい。でも写真を見る限り、ちょっと行ってみたい気もする。

 
おまけ;本の小口に吉田さんの写真。最初汚れているのかと思った(笑)

洞窟ばか
クリエーター情報なし
扶桑社

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