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小松基地問題研究会

スマラン事件資料から見る日本軍「慰安婦」制度

2014年06月14日 | 日本軍性暴力関係原資料
スマラン事件資料から見る日本軍「慰安婦」制度

 日本軍の「慰安婦」問題の深刻性は現地軍隊の暴走ではなく、軍隊「慰安婦」を制度(システム)として確立させていたことにある。具体的にスマラン性奴隷事件資料から見ていこう。

「慰安婦」必要論
 スマラン駐屯地司令・能崎少将は「この種慰安設備は何れの国の軍隊でも必要ではないだろうか。この種の設備が全然なかったとしたら、軍隊はとても治まりがつかなくなる」(1966.4.5)と述べているが、この「慰安婦」必要論が最大の問題である。昨年、橋下大阪市長が「銃弾が飛び交う中で走って行くときに、昂ぶっている集団を休息させてあげようと思ったら、「慰安婦」制度が必要なのは誰でもわかる」(2013.5.13)と発言したように、「必要論」は過去の論理ではない。

 能崎は「何れの国の軍隊でも必要」と述べているが、林博史さんは「軍が組織的に「慰安婦」制度を作っていたのは日本とドイツだけ」と書いているように、どこの国にもあったわけでもない(ドイツではどのような制度があったのかを調査中)。

 帝国主義の戦争目的が略奪と侵略なるが故に必然的に引き起こされる問題である。他方中国紅軍は「三大紀律・八項注意(民衆の物は針1本、糸1筋も盗るな。売買はごまかしなく、借りたものは返せ。壊したものは弁償しろ。人を罵るな。民衆の家や畑を荒らすな。婦女をからかうな。捕虜を虐待するな)」を徹底して、長征を敢行した。それ故中国紅軍は「童貞の軍隊」(アグネス・スメドレー)とさえ言われていたのだ。

具体的システム
 民間ではなく軍当局(兵站)が慰安所を管理した理由は、「慰安所は軍の治安や風紀に関係が深いということから、慰安所の管理だけは何処でも軍側がこれを管理することになっていた」(能崎)と述べているように、軍務として考えられていたのである。2人の兵站担当参謀は以下のように述べている。

 バタビア戦犯裁判で、「兵站ハ慰安所開設ノ許可附与ニ際シ、如何ナル条件ヲ定メアリシヤ?」と問われて、山口兵站参謀は「1.慰安婦ハ自由意志ニ依ル者ノミヨリ採用ス。本人署名セル宣誓書ニ依ル。2.慰安所ノ開設サルル場所ノ衛戍地司令官ヨリノ申請タルコト。3.慰安婦トナルベキモノハ姓名、国籍、人数ノ報告。4.使用区分(将校或ハ其ノ他)。5.医務関係ラノ監督。6.使用期間。7.料金。」と答えている。

 同じく、宮元静雄第16軍参謀(兵站主任)も、「通常ノ慰安所開設ノ経過次ノ如シ。1.慰安所開設ノ許可申請。2.慰安婦ヲ何処ヨリ得ルヤノ報告。3.慰安婦の名簿ノ提出。」と答えている。

 スマラン駐屯地から慰安所設置の許可申請があり、「抑留所ヨリ抑留婦女ヲ連出ス許可ハ司令部兵站ガ与ヘタリ」(宮元)と述べているように、兵站部が慰安所開設・管理の総元締めであった。「自由意志宣誓書」などの申請用書類は司令部兵站で印刷され、各地に配られていた。

 その他にも、「慰安所(複数)ノ監督ハ兵站将校ニ依リ行ハレヰタル」(三橋地方法院裁判官)、「ジャワノ大都市ニハ慰安所関係業務ヲ取扱フ将校ガヲリ、之等ハ通常尉官ニシテ、所謂兵站係将校ト呼バレテヰタリ」(岡田慶治少佐)、その判決書には「軍人の慰安並に厚生を掌管せる兵站業務」「慰安所に対する監督は、兵站係将校」等の証言が記載されている。

『慰安所管理人の日記』でも
 昨年8月韓国で発行された『慰安所管理人の日記』でも、慰安所収入の報告、コンドームの配布、性病管理、前線への移動、「慰安婦」の就業・廃業・内地帰還にはことごとく軍(兵站)と警察が関与していることが記されている(2013.8.7『毎日新聞』)。

 具体的に見ていくと、「航空隊所属の慰安所2カ所が、兵站管理に委譲された」「(慰安所)一富士楼が兵站管理となり」「インセインの慰安所2カ所が兵站管理になった」「司令部命令に勝てず、慰安所をイェウーへ移すことになった」と明記されている。

 また、「慰安婦の検査も兵站の軍医がする」「連隊本部医務室から衛生サック1000個」「今日の検査の結果、病気だった○千代と○子の2人が不合格」と書かれ、「慰安婦」の衛生管理(性病検査)は兵站の軍医がおこなっていた。軍は戦力維持の観点から慰安所を設置し、性病に罹った「慰安婦」の営業を禁止した。

 以上のように日本軍が直接関与した証言があるのに、安倍首相は「証拠がない」として、日本軍の責任を否定しているのだ。まるで「裸の王様」のようだ。
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