アジアと小松

アジアの人々との友好関係を築くために、日本の戦争責任と小松基地の問題について発信します。
小松基地問題研究会

論考 米日による北朝鮮侵略戦争を阻止しよう!

2017年09月07日 | 侵略と領土排外主義
論考 米日による北朝鮮侵略戦争を阻止しよう!

 朝鮮人民民主主義共和国(北朝鮮)が立て続けに大陸間弾道弾(ICBM)の発射実験(8・29)と核実験(9・3)をおこなった。ICBM発射実験にたいして、Jアラートで東日本の住民に警戒警報を発し、すべてのTVチャンネルは危機をアジり、北朝鮮への先制攻撃論に誘導した。そして翌30日には衆議院安全保障委員会と参議院外交防衛委員会で、全会一致で北朝鮮弾劾決議を挙げた。(去る3月9日にも衆議院本会議で「北朝鮮によるミサイル発射に抗議する決議」が全会一致で挙げられている)
 北朝鮮の「瀬戸際政策」をもたらしているものは何か、その本質を見極めてものを言わねばならない。第1に、米軍の軍事(核)圧力である。第2に、核実験(使用)の反人民性である。第3に、戦争にたいするわれわれの態度である。

米日韓による核軍事包囲
 この間、米日韓は北朝鮮にたいしてすさまじい軍事圧力をかけてきた。3、4月にはキーリゾルフ、フォールイーグル(米韓31万人動員)が強行された。
 7月30日、米空軍はB1戦略爆撃機2機を日韓の上空に派遣し、空自や韓国空軍と共同演習を実施した。この訓練は北朝鮮の政治・軍事中枢に壊滅的な打撃を与えるための侵略予行演習である。
 8月4日、小野寺防衛相は北朝鮮の軍事施設を破壊する「敵基地攻撃能力の保有」を検討すると発表し、10日には(北朝鮮のミサイル問題で)「存立危機事態」と語った。これは宣戦布告と同義語だ。これらの発言は日本から北朝鮮を先制攻撃するという宣言である。
 8月12日には、北朝鮮の対グアムICBM攻撃声明を口実にして、中四国4県の陸自駐屯地に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊を配備した。
 8月21日から31日まで、米軍1万7500人、韓国軍5万人が参加して、米韓合同軍事演習「乙支フリーダムガーディアン」がおこなわれた。「作戦計画5015」に基づき、北朝鮮軍事施設への先制攻撃や北朝鮮の体制崩壊も含まれている。
 8月22日、防衛省は2018年度予算の概算要求で、対北朝鮮軍事体制を強化するために、過去最高額の5兆2551億円を盛りこむと発表した。
 8月31日、ふたたび米軍B1戦略爆撃機と空自F15戦闘機が九州周辺で共同演習をおこない、その後朝鮮半島上空で米韓合同演習をおこなった。
 9月3日、トランプは日米首脳電話会談のあと記者会見し、北朝鮮の核開発にたいして「通常兵器、核兵器のあらゆる能力を使う」と発表した。安倍首相の同意が前提だ。日本でも、核武装論があがり始めた(「日本のこころ」)。
 9月4日、韓国国防相は核兵器の韓国国内再配備を検討すると表明した(大統領府は否定)。また12月1日までに「斬首作戦」の実行部隊を創設するという。
 このように、日米韓は北朝鮮にたいして、核攻撃を含めてあらゆる戦争準備を進めている。北朝鮮の「瀬戸際政策(核開発)」と米日韓の核戦争政策が相乗的にきりもみ(スパイラル)状態になって、危機を醸成している。
 このスパイラルを停止させる要は日本の労働者人民の双肩にかかっている。北朝鮮パッシングがマスコミのエンターテイメントになっている真っただ中で、「戦争の元凶はアメリカと日本だ」と声を上げることだ。愛国主義、祖国防衛主義、排外主義と全面的に対決し、革命的祖国敗北主義を貫くことだけが、「対戦国人民」との連帯・国際主義実践の途だ。

すべての核(原発)に反対する
 北朝鮮は対米対抗策として核(開発)政策を進めているが、根本的に間違っている。核兵器とは資本主義が生み出し、人民の命を犠牲にして資本を守るための最終兵器だ。敢えて言えば、資本が人民と共倒れしても、人民に権力を明け渡さないという思想・兵器である。それは階級支配を廃絶するための人民の武器にはなりえない。広島・長崎、ネバダ(核実験場)、第5福竜丸事件(水爆実験)、チェルノブィリや福島(原発事故)に見るとおり、人類(生命体)の生存環境を根底から破壊するからだ。
 トランプは北朝鮮の核開発にたいして核攻撃を排除しないと言い、北朝鮮は核開発を対抗カードにしている。だが、北朝鮮の核武装の論理には人民解放の哲学も論理もない。そこにあるものはパワーポリティクスであり、結果は核兵器による両国(関係諸国)人民の無差別死である。
 日本政府(安倍)は北朝鮮の核開発を口を極めて非難しているが、その口で核兵器禁止条約に反対しているのだ(7/7)。アメリカは核使用をちらつかせながら、北朝鮮の核開発に反対するという身勝手な対応に終始している。日本政府(安倍)もトランプに同調している(9・3)。
 かつて、ソ連の核実験をめぐって、原水爆反対運動は分裂した。共産党は「ソ連の核実験は平和のためだ」(1962年「前衛」10月号)と肯定し、われわれはすべての核兵器を許さないという立場を確立し、米ソの核実験に反対してきた歴史を持っている。
 核兵器は誰が使おうと、その被害者は人民である。広島、長崎がそのことを示している。北朝鮮が真に人民の解放をめざすならば、人民丸ごと破壊する核兵器を持ってはならない。如何に帝国主義に籠絡されているとしても、その人民こそ日帝(米帝)打倒の共同戦線に立つ主体である。連帯の相手を殲滅して、国際連帯を語ることはできない。
 ベトナム戦争で、必死にたたかうベトナム人民の姿と訴えに、アメリカの人民が応えて、戦争継続を破綻させたのではなかったか。参戦国日本でも、ベトナム参戦国家反対を掲げて羽田、王子に押し寄せた数万の労働者人民が、逮捕を恐れずたたかいぬいた歴史がある。帝国主義国人民に帝国主義打倒を呼びかける政治(外交)こそ、北朝鮮に求められているのではないか。

朝鮮侵略最前線・沖縄と小松
 昨年12月、尹奉吉義士追悼84周年・暗葬地跡集会(金沢野田山墓地)に参加したAさんは「私は辺野古の海でカヌーに乗って基地建設阻止をたたかっています。なぜ朝鮮人が沖縄でたたかっているのか。わが国は38度線で分断されています。辺野古新基地が出来れば、その矛先がわが祖国朝鮮に向けられます。この米軍基地を撤去させることが朝鮮統一の最大の近道だと思っています」と述べた。
 朝鮮の38度線分断は日本の朝鮮植民地支配に発し、日本の敗戦を奇貨として、米ソ(中)緩衝地帯として、朝鮮半島の分断が固定化されて今日に至っている。朝鮮の平和と統一を阻んでいるものは米日帝国主義の東アジア政策であり、朝鮮の平和と統一を実現するためには、日帝(安倍)の戦争政策とたたかわねばならない。
 私たちは北朝鮮の瀬戸際政策の非をあげつらうことに熱中するのではなく、その淵源に横たわる日米軍事拠点としての沖縄基地群・小松基地を無力化するたたかいに全力で立ちあがらねばならない。
 かつて、朝鮮を植民地化し、満州国をでっち上げ、上海に上陸した日本軍にたいして一発の爆弾を以て対峙した尹奉吉のたたかいに学ばねばならない。かつて、朝鮮侵略戦争の砲弾試射場接収に、身体を張ってたたかった内灘住民や北陸鉄道労働組合に学ばねばならない。いま、辺野古新基地建設阻止をねばり強くたたかいぬいている沖縄人民に学び、支援しなければならない。
 北朝鮮を弾劾する決議に自民党とともに賛成し、大和堆(漁場)から北朝鮮漁船を排除せよと要求することは真逆の道だ。その道は城内平和を期待し、愛国主義、祖国防衛主義で一致し、侵略戦争の片棒を担ぐことである。日本の人民はこのような道を進んではならない。

日本海(東海)はもう戦場だ
 日本海(東海)中央部の大和堆での北朝鮮イカ釣漁船にたいして、共産党から自民党までが政府や海上保安庁に取り締りを要求し、それを受けて海上保安庁の巡視船が出動し、放水や大音量放送によって北朝鮮イカ釣漁船を漁場から追い出した。今回出動した巡視船「わかさ」は全長92メートル、1250㌧である。巡視船に追いかけられる北朝鮮漁船は木の葉のように小さい老朽船である。



 イカ釣り漁船の拠点小木港(石川県)には小型船(30㌧以下)、中型船(31~139㌧)、大型船(139~500㌧)が錨を降ろしており、大型船は山陰沖から北海道沖まで8カ月間かけて操業する。強力なエンジンに大容量の集魚灯をつけてイカをかき集め、コンピューター制御の自動イカ釣り機で次々と釣っていく。この船団が通過した後はぺんぺん草も生えない。
 他方北朝鮮漁船は老朽小型船で、命がけで大和堆(南北)までやって来る。エンジンが小さいのでろくな集魚灯もなく、漁獲量はたかが知れている。
 この北朝鮮漁民を大和堆から排除するために、海上保安庁の巡視船を遣わしたのだ。報道によると、7月上旬から大和堆周辺で、北朝鮮漁船にたいして、汽笛、長距離音響発生装置、放水で、800隻以上の北朝鮮漁船を排除したという(9・1「北陸中日新聞」)。まさに宣戦布告なき戦争行為である。
 公海上に帝国主義的領土概念を適用して、勝手に線(排他的経済水域)を引き、他国籍の漁船を排除することは帝国主義者(日本政府)の論理であり、人民の論理ではない。巡視船(海上警察軍)に取り締まりを要請するなど、もはや階級移行としか言いようがない。谷本石川県知事の日本漁民を守るためならば、朝鮮人を餓死させよという発言と変わるところがない。
 東アジア情勢は一触即発の戦争的危機下にある。愛国主義と祖国防衛主義が渦巻く真っただなかで、反戦闘争を貫く困難を乗り越えるために、必要な確固たる思想と論理が必要である。(2017年9月7日)

注:最近ほとんど使われなくなったが、「革命的祖国敗北主義」という言葉がある。帝国主義国家間戦争にたいする共産主義者の行動規範として、自国の勝利のために戦争に協力するのではなく、戦争への協力を拒否(非国民の道)し、反戦・反軍闘争を貫くこと。また、「侵略戦争を内乱へ」も同様の意味を持つが、階級関係や実践的準備を無視してスローガンとして掲げても、観念的言葉遊びでしかない。
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