フィヨルドの変人 ~Odd person in fjord~

ぇいらっしゃ~い!!!

ともかく仕事にちょっと余裕がないのよ

2024年06月18日 20時31分28秒 | 日記
NASAでかつて打ち上げられていたスペースシャトルはフライトごとに「STS-○○」というナンバーが振られていた。例えばスペースシャトル最後のフライトは「STS-135」であり、シャトルの135回目のフライトとして「計画」(打ち上げ順の番号付与ではない)されたものであることを示している。
そんなフライトの中で、STS-27というフライトが1988年に行われている。フライトミッションが軍事目的であり、我々一般人に馴染みの出来事があるわけではないのだが、このフライトは成功に終わったスペースシャトルのフライトの中で、最もシャトルの損傷が激しかったフライトとして記録に残っている。
この激しい損傷がなぜ起きたかと言えば、外部燃料タンクの表面、部位的には「パイポットランプ(タンクとシャトルの接続部)」と言われる箇所に貼り付けられた断熱材が発射時の空力で剥離し、それが機体にぶつかり傷をつけたもの。
先にも言ったとおり、このフライトは成功しクルーは無事に帰ってきている。しかしクルーは激しい感情のジェットコースターに乗せられることになった。打ち上げ後、衛星軌道上で損傷を知らされ、シャトルのアームに取り付けられたカメラで損傷を確認したところ、相当に激しい損傷が確認された。まだチャレンジャー号の事故から2年経っていない時期であり、クルーの絶望は想像に難くない。早速地上に画像を送ったところ、回答は「飛行に問題は無い」だった。相当に激しい損傷で完全に剥離したタイルらしき部位も見えるのに、だ。これにより今度は困惑と苛立ちのコースターに乗せられることになった。そして彼らは無事に地上に帰ってきたわけだが、この際の歓喜は相当なものだったろう。自分たちが絶望した状況でも地上スタッフは事態を冷静に判断していたのだ、という事であり、クルーの一人は後に「スタッフにキスして回りたいと思った」と述べている。
だが、歓喜は後にまた暗転する。後に彼らには「送られてきた画像は荒く、損傷部が光と影に見えた」と言うことが告げられる。地上スタッフは損傷の深刻さを認識していなかったと告げられたわけだ。ミッションが軍事目的であったためシャトルに積まれた無線機は画像を送るように想定されたものは積んでいなかったためである。実際は損傷した部位がたまたま大丈夫な位置だったと言うだけで、少しでもズレていれば大惨事だった、と言うのが結論。尤も後にフライトクルーの一人も自伝で振り返っていたが、NASAが重大さを認識していたとしても出来ることは何もなかった。救出用のロケットを打ち上げるにしても時間がかかりすぎ、その前にシャトルの空気が尽きる。当時は国際宇宙ステーションも建設前でどこにも逃げ場はなかった。生き残る唯一の手段は、運を天に任せて着陸を行うことだけだったのだ。
さてこの事態だが、実は剥離した「パイポットランプの断熱材」はこの飛行時から仕様変更が行われていた。空力を考え、より性能を良くしようとしたための変更らしい。
工学の優先事項に「より良い、は、使い物になる、の敵」と言うのがあるそうだ。STS-27のクルーの叫びはまさにこれだったそうだ。もっと砕けた言葉で言うなら「ちゃんと動いてるならいじるな!」である。
ちなみにこのパイポットランプのフォーム剥離。STS-27のフライトの15年後に起きた、かのコロンビア号空中分解事故の直接の引き金になった。損傷部分が機体腹部のフォームと翼の前縁部というズレこそあるが、現象とすれば同じことである。これでNASAはどう対応したか。
「フォームはいつも剥離してるし、飛行に影響が出るほど機体を傷つけることなんてないよ(意訳)」と抗弁したのである。今まで大丈夫だったんだから、というわけだ。
この後は多くは報道でも扱われたが、実際にフォームを翼の構造材にぶつける実験が行われ、結果、構造材には大穴があき、「てめえら舐めくさるのも大概にせえよ」とかえって追及が厳しさを増すという事態にもなったわけだが。

とまあ、今日のネタで何が言いたいかと言えば、ぬたりの会社で今年から大規模システム変更を推進、決断した社員は全員○を切って○ぬべきである、ということである。
今までのシステムに大きな不満が出てたわけでもないのに、なぜまるごとシステムを変える必要があるのかね。現場の大混乱の責任誰が取るんだコラ。
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