OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

傑作盤の肖像

2009-07-04 11:37:06 | Pops

Portrait / The 5th Dimension (Bell)

なんともサイケポップでビューティフルなジャケットも眩しい、フィフス・ディメンションの傑作アルバム♪♪~♪ 世に出た1970年から瞬時にしてサイケおやじを心底、シビレされた愛聴盤でもあります。

フィフス・ディメンションは黒人コーラスグループながら、白人的な洒落たセンスとジャズやソウル、ロックやクラシックまでも自然体に歌える幅広い音楽性を有する実力派ですが、結成当時は当然ながらR&Bやモータウンっぽい曲ばかりを出していたようです。

それが1966年、西海岸の新興レーベルだったソウルシティにスカウトされ、当時のフォークロックで人気絶頂だったママス&パパスの黒人版として、フィフス・ディメンションとなるのですが、男が3人に女が2人という編成も、当時としては珍しく、さらにファッションもピッピースタイルを基調にしていたという先進グループになるのです。

メンバーはマリリン・マックー、フローレンス・ラルー、ビリー・デイビス・ジュニア、ロン・タウソン、ラモンテ・マクレモアとなっていますが、各人がそれぞれにポップスからゴスペル、ジャズのキャリアを有していたことは言うまでもありません。

さて、本日ご紹介のアルバムは、大ヒットした前作「輝く星座」に続く意欲作! プロデュースはボーンズ・ハウ、アレンジはボブ・アルシヴァーとビル・ホールマンという鉄壁の制作チームに加え、バックアップのミュージシャンもハル・ブレイン(ds) にジョー・オズボーン(b) という、当時最高のリズムコンビを中心に、ラリー・ネクテネ(p,org,key)、ジミー・ロウルズ(p)、マイク・ディーシー(g)、トミー・テデスコ(g)、フレッド・タケット(g)、ラリー・バンカー(per,vib) 等々の超一流が召集されています。

 A-1 Puppet Man
 A-2 One Less Bell To Answer / 悲しみは鐘の音と共に
 A-3 Feelin' Alright
 A-4 This Is Your Life
 A-5 A Love Like Ours
 B-1 Save The Country
 B-2 Medley:
       The Declaration / 平和のために(独立宣言)
       A Change Is Gonna Come
       People Gotta Be Free / 自由への賛歌
 B-3 Dimension Five

まず冒頭、ニール・セダカとハワード・グリーンフィールドが書いた隠れ名曲「Puppet Man」が、これ以上無いというソウルロックなグルーヴで演じられる、そのリズム隊の凄さだけも感涙悶絶の快演になっています。疑似ブーガルー気味の8ビート、動きまくりのエレキベース、ロックジャズなドラムス♪♪~♪ そこへテンションの高いボーカル&コーラスが乗っかり、唸るギターが最高の装飾フレーズを出し惜しみしないんですから、たまりませんねぇ~♪

そして一瞬の静寂を挟んで始まるのが、バート・バカラックとハル・デイヴィッドが書いた畢生の名曲「悲しみは鐘の音と共に」なんですから、この2連発の潔さ! 激しい情熱から一転してのせつない安らぎが、マリリン・マックーの深い声質で伸びやかに歌われ、ソフトでお洒落なコーラスが彩るこのバージョンは、多くの歌手やグループによる数ある同曲の名唱・名演の中でも、決定的じゃないでしょうか。本当に身も心も奪われてしまいますよ。

さらに、またまたこれが危険極まりないというトラフィックの人気曲「Feelin' Alright」が、極めて黒っぽいロックジャズ系のボーカルで演じられるんですから、もう絶句! もちろん黒人らしいゴスペル感覚が満点なんですが、同時に必要以上の脂っこさが無いあたりも秀逸で、それは些かB級テイストのビリー・デイビス・ジュニアのリードボーカルと間奏のジャズロックがモロ出しとなったピアノがキモでしょうか。もちろん蠢くエレキベースの快感も絶品ですよ。

それは続く「This Is Your Life」の冒頭では、思わずニヤリの仕掛けが見事ですし、フローレンス・ラルーのボーカルが見事過ぎて、泣けてきます。スローな表現にイヤミがないんですねぇ~。そのくせ、盛り上げも最高だと思います、ジャズテイストも濃厚なんですが、それがA面ラストの「A Love Like Ours」では、やや裏目になった感もあり、ここは賛否両論かもしれません。

しかしB面に入っては、私の大好きなローラ・ニーロの「Save The Country」が、その歌詞の内容とは裏腹の軽快さで歌われますから、緻密なコーラスワークとバックの演奏が完全融合した大ヒットとなるのもムベなるかな! ライトタッチのオルガンとヘヴィに蠢くエレキベースが、本当にたまりませんねぇ~♪

ちなみに、この曲はローラ・ニーロがロバート・ケネディ上院議員の暗殺事件直後に書いたとされる、ある意味でのプロテストソングなんですが、フィフス・ディメンションは、B面ド頭に「Save The Country」を置き、続くメドレーでは平和への願いや人種差別への抗議をあからさまに歌うという過激(?)な姿勢を打ち出したのも、意味深でした。なにしろアメリカ合衆国独立宣言の一節を歌詞に使った「The Declaration」、黒人公民権運動のテーマソングとも言うべきサム・クックの「A Change Is Gonna Come」、そしてラスカルズの「自由への賛歌」へと続く構成はストレートの剛球ど真ん中! 黒人R&Bからモダンジャズの4ビート、さらにはロックやラテンのリズムまでも変幻自在に歌いこなす、まさにフィフス・ディメンションが実力の証明でもあります。

そして実はこのアルバムからの先行シングルとして最初に発売されたのが、このメドレーを両面に収めたものだったんですが、A面の「The Declaration」は放送禁止となり、ヒットには至りませんでした。

このあたりは当時のアメリカの政局や社会情勢がドロドロしていた中で、いくら人気の黒人グループでも、生意気と受け取られた証かもしれませんし、フィフス・ディメンションが以降、人気に翳りが出たのは、哀しいことでした……。

しかしそれをブッ飛ばしたのが、A面2曲目の「悲しみは鐘の音と共に」で、これはチャート2位のウルトラヒット♪♪~♪

そういえば、この年には万博関連で来日コンサートもやっていましたですねぇ~。テレビ出演もありましたが、代表的なヒット曲に加えて、確かこの曲も歌ってくれたと記憶しています。

ということで、実に意欲的な名盤アルバムだと思います。

ただし、ここまでやってしまえば、後の煮詰まりも当然の帰結……。アルバムのオーラスに収められた「Dimension Five」はオープンハーモニーとモードを大胆に使った、完全なるジャズコーラスの極みつきになっているほどですよ。

全体としては、当時最新のレコーディング技術を駆使した立体音響が見事ですし、各楽器と歌とコーラスのミックスバランスも秀逸! 総合力の勝利という感じでしょうか、とにかく聴いて納得、そして感動するしかありませんねぇ~♪

最後になりましたが、印象的なアルバムジャケットの絵画は、挿絵と音楽家の肖像で有名なリロイ・ネイマンの力作というのも、実に嬉しいです。

コメント (2)
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