OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

明日を歌うアイビーズ

2009-07-18 11:48:52 | Rock

Maybe Tomorrow / Iveys (Apple / 東芝)

「第二のビートルズ」なんていう宣伝文句は星の数ほどありましたが、それを実現出来たバンドはひとつも無いのが、これまでの歴史です。

しかし小型ビートルズとか、そっくりさんバンドというのは、これまた星の数ほどあり、その中でも特に「弟バンド」として注目され、人気が高かったのがバッドフィンガーでした。

そして本日ご紹介は、その彼等がアイビーズと名乗っていた頃のデビューシングル盤です。

その経緯には様々な紆余曲折があるのですが、特にラッキーだったのは、彼等のマネージャーだったビル・コリンズがポール・マッカートニーの父親と音楽仲間だったこと、またビートルズのツアー担当だったマル・エバンスとのコネクションがあったことから、1968年にビートルズが設立したアップルレコードの新人発掘企画に潜り込めたというのが、大凡の事情だったようです。

ちなみに当時のメンバーはピート・ハム(g,vo)、トム・エバンス(g,vo)、ロン・グリフィス(b,vo)、マイク・ギビンズ(ds,vo) の4人組でしたが、バンドそのものはメンバーチェンジを繰り返しながらも、既に数年のキャリアを積んでいたのですから、曲作りも演奏もツボを押さえた技量がありました。

そしてポールとジョージが彼等を気に入ったことから、ついに7月から5年の契約を獲得し、制作・発売されたのが、このシングル盤というわけです。

まずA面の「Maybe Tomorrow」は、ビートルズというよりも、当時はソフトロック路線で人気が高かったビージーズのような、優しさと秘めた情熱が上手くミックスされた素敵なメロディが魅力の名曲♪♪~♪ ストリングスの使い方がモロにビージーズしていて、思わずニンマリです。しかしドラムスの力強さや演奏全体の纏め方は、これまたホワイトアルバム期のビートルズに近い雰囲気が濃厚ですから、たまりません。

日本はもちろんのこと、欧州各地でも忽ちのヒットを記録しています。

しかし何故か本国のイギリスでは全くヒットせず、アメリカでも小ヒットがやっとでした……。う~ん、何故だ!?!

そして当時に作られていたデビューアルバムも、昭和44(1969)年に日本とドイツだけの発売だったと言われているほど、イギリスでは人気が出なかったんですねぇ……。

このあたりの状況は、ちょっと不思議に思えるほどなんですが、B面収録の「ダディは百万長者」はプレ・ニューウェイヴという勢いさえ好ましい、実に痛快なロックナンバー! 我が国のカーナービーツかジャガーズあたりが日本語バージョンを出したとしても、全然OKでしょうね♪♪~♪

こうして中途半端なデビューを飾ったアイビーズは結局、1970年に入るとパッドフィンガーと改名し、ポール・マッカートニーが直々に書いた名曲「Come And Get It」で再デビュー! もちろんブレイクを果たし、ここからが小型ビートルズとしての本領発揮になると思われますが、それ以前のアイビーズ時代も決して侮れません。

日本優先で発売され、幻化したデビューアルバムも現在はCD化されているようですし、パッドフィンガーとなってからの作品群も同様に聴くことが出来るのは幸いだと思います。

その後の様々な事情から、一部では「悲劇のバンド」なんて呼ばれることもある彼等も、このデビュー曲を出した頃の新鮮な気分は、永遠に不滅じゃないでしょうか。

たぶん、明日になれば……、と歌うアイビーズが、せつなくも好きです。

コメント
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