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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

また出たっ! ブラウニーの発掘音源

2009-06-10 11:43:57 | Jazz

The Complete Quebec Jam Session / Clifford Brown (RLR = CD)

本日も「ブートもどき」のご紹介となりますが、それがクリフォード・ブラウンとあっては、ご容赦願えるものと思います。

内容はクリフォード・ブラウン自らが録音したとされるプライベートなリハーサル音源をメインに、おまけとしてエアチェックされたブラウン&ローチのバンド演奏が収められていますが、「All Tracks Previously Unissued!!」とジャケットに記載されているのは、その真偽は別としても、やはり嬉しいものがあります。実際、先日発見して、迷わずにゲットさせられましたよ♪♪~♪

☆1955年7月28日、カナダのケベックで録音
 01 All The Things You Are
 02 Lady Be Good / Hackensack
 03 Strike Up The Band
 04 Ow!
 05 Sippin' At Bells
 06 Brownie Talks

 メンバーはクリフォード・ブラウン以下、Rob McConnell(tb)、そして多分、ハロルド・ランドと推測されるテナーサックスに正体不明のピアニストが加わった練習セッションですが、もちろんクリフォード・ブラウンは真摯に吹きまくりですし、その場の和んだ雰囲気もたまりません。
 まず冒頭、日常的な音出しチューニングから、お馴染みのスタンダード曲「All The Things You Are」へと入っていく流れが、如何にもです♪♪~♪ ドラムスやベースが入っていませんから、当然ながらビシバシのビート感は楽しめませんが、クリフォード・ブラウンのハートウォームなトランペットは流石の歌心で、思わずグッと惹きつけられますよ。
 気になる音質は、あくまでもプライベートな録音ですから、それなりですが、最新のリマスター技術によりノイズは極力抑えてありますし、音のメリハリも自然です。このあたりは入門者にはキツイかもしれませんが、ある程度ジャズに親しんだ皆様ならば、納得してお楽しみいただけると思います。
 それは後の演奏にも同じく言えることですが、その合間の会話等も興味深く、当時二十歳になったばかりだったというトロンボーン奏者の Rob McConnell も大健闘! またピアニストはパド・パウエル直系のスタイルで好感が持てます。
 ちなみに「Brownie Talks」では、録音年月日を吹き込むクリフォード・ブラウンのリアルな肉声が、なんとも貴重だと思います。

☆1955年11月、シカゴでの放送録音
 07 A Night In Tunisia
 08 Billei's Bounce
 09 A Night In Tunisia
(source 2)
 10 Billei's Bounce (source 2)
 11 Fine And Dandy
 続くパートはシカゴのクラブ「Bee- Hive」からのラジオ放送をエアチェックした音源で、メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、ニッキー・ヒル(ts)、ビリー・ウォレス(p)、Leo Blevins(g)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) ということで、時期的なものも勘案すると、アナログ盤時代に「ロウ・ジニアス Vol.1 & 2」という日本盤オリジナルで発掘発売され、後に「Clifford Brown Live At The Bee Hive (Lonehill Jazz)」としてCD化された音源の頃の演奏でしょうが、このブツに収められた上記演目は、そこには入っていませんでしたから、これも嬉しい♪♪~♪
 まず「A Night In Tunisia」はクリフォード・ブラウンのトランペットが実に丁寧な、そして歌心いっぱいのアドリブで、もう最高です! 続くテナーサックスは多分、ニッキー・ヒルでしょうが、その古いタイプのスタイルが逆に良い感じですし、Leo Blevins のギターの音色にしても、その真空管の響きがたまりません。
 ちなみに音質は、これもそれなりですが、ちょうど歴史的名盤に選定されている、あの「ミントンズ」のジャムセッションと似たような味わいです。ただしバランスがエレキということもあるでしょうが、少しギターが大きめなんでねぇ。このあたりは賛否両論かもしれません。
 そして「Billei's Bounce」でのクリフォード・ブラウンが、これまた凄すぎます! 極めて自然体でありながら、全てが「歌」のアドリブフレーズが溢れて止まりませんよっ! あぁ、これを聴いたら、久しくジャズモードには疎遠となっていたサイケおやじも、見事にカムバックさせられましたですよ♪♪~♪
 そのあたりがさらに強調されているのが、トラック「09」と「10」で、これは「source 2」としてあるように、演奏そのものは同じみたいですが、クリフォード・ブラウンのソロパートをメインに短く編集され、また音質も軽めになっていますが、メリハリのある明るいものに変えられていますから、結果オーライでしょう。正直、こっちのほうが楽しめるかもしれません。
 また、「Fine And Dandy」は終盤のクライマックスのみの録音で、ドラムスとフロント陣のソロチェイス! 短いのが本当に残念ですが、ふっと気がつくと、このパートの音源にはソニー・ロリンズが入っているのか? これは疑問です。

☆1955年春、ボストンでの放送録音
 12 Gerkin' For Perkin'
 13 It Might As Well Be Spring

 これもエアチェック音源で、ボストンの有名店「Storyville Club」での演奏です。
 メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ハロルド・ランド(ts)、リッチー・パウエル(p)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) という当時のレギュラーバンドですから、名演は必定!
 まず「Gerkin' For Perkin'」は、テーマアンサンブルの荒っぽさがハードバップのど真ん中で、もちろんクリフォード・ブラウンのアドリブは素晴らしい限り♪♪~♪ 続くハロルド・ランドも熱演ですし、リズム隊の熱気はリアルタイムの勢いに満ちていると思います。
 そして「It Might As Well Be Spring」は説明不要、クリフォード・ブラウンの十八番ですから、その安らぎに満ちたトランペットの節回しと歌心が満喫出来ますよ♪♪~♪
 気になる音質は、もっさりしたオリジナルソースを最新の技術で聴き易くしてありますし、これだけの演奏に接する喜びからすれば、文句を言うのはバチあたりでしょう。サイケおやじは本当に、そう思います。

☆1956年初頭、ロスでのテレビ放送音源
 14 Lady Be Good
 15 Meomries Of You

 これはネットでも流れているクリフォード・ブラウンのテレビ出演映像から、音声だけを収録したパートです。
 一応、解説書に記載のデータによると、メンバーはリッチー・パウエル(p)、ジョージ・モロウ(b)、マックス・ローチ(ds) というリズム隊をバックにしたクリフォード・ブラウンのワンホーン演奏ですが、流石の完成度は圧巻!
 まず「Lady Be Good」での、流れるようなメロディフェイクとアドリブの歌心は素晴らしいとしか言えませんし、それが終わって、間髪を入れずに始まる「Meomries Of You」が、これまた絶品♪♪~♪ 2曲合わせても4分ほどの演奏時間ですが、最後には短いインタビューも聞けますし、これも世界遺産でしょうねぇ。
 願わくば、映像の完全復刻も実現しますようにっ!

ということで、音質やソースの出どころがどうであれ、やっぱりクリフォード・ブラウンは凄くて、しかもハートウォームな魅力がいっぱい♪♪~♪

決して万人向けではありませんが、やはり聴かずに死ねるかのブツだと思います。

そしてサイケおやじが、どうにかジャズモードへと気持ちが戻りつつあるのも、この天才のおかげなのでした。

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ロックの日にはストーンズを

2009-06-09 12:08:16 | Rolling Stones

Blind Date / The New Barbarians & The Rolling Stones (KTS = CDR)


本日6月9日は「ロックの日」、だそうですねっ!?

そんなん、誰が決めたんだぁ~~! 別に「シックスナイン」の日でも、いいじゃねぇ~かっ! と本性剥き出しのサイケおやじが確かにいますが、しかし、やはり敬意を表して、本日もロックといえばストーンズ!

もうご推察のように、結局はストーンズネタに持って行きたい言い訳、ご容赦願います。

で、ご紹介は例によってブートですが、これぞロックという楽しみが満喫出来ますよ。

内容は1979年4月22日にカナダで行われたロン・ウッド&キース・リチャーズのニュー・バーバリアンズ、そしてストーンズのライブが収められていますが、もちろんこれには、それなりの経緯がありました。

それは1977年2月27日、キース・リチャーズとアニタ・パレンバーグがカナダのホテルで逮捕! もちろん悪いクスリと乱交パーティのあげくの出来事とされていますが、その場には多くの地元政財界人も関係していたことから、大スキャンダルに発展しています。

その所為でしょうか、キース・リチャーズの療養という名目があったにせよ、裁判は引き伸ばされ、ようやく1978年10月23日に判決が言い渡されますが、この間にはストーンズの解散騒動が報じられる等々のゴタゴタもありました。

そしてキース・リチャーズには執行猶予刑と半年以内のチャリティコンサートが命じられ、それがカナダ盲人協会の支援を目的とした、このライブだったのです。

当日は昼夜2回のステージが敢行され、前半はロン・ウッドのバンドだったバーバリアンズにキース・リチャーズが客演したニュー・バーバリアンズ、中間にミック&キースのデュオがあり、後半がストーンズという構成でしたが、このブツには夜の部が収められています。

☆Disc 1 / New Barbarians
 01 Introduction
 02 Sweet Little Rock'n Roller
 03 F.U.C. Her
 04 Breathe On Me
 05 Infekshun
 06 I Can Feel The Fire
 07 Am I Grooveing You
 08 Seven Days
 09 Before They Make Me Run

このバンドはロン・ウッドが自らの新作アルバム「Gimme Some Neck (CBS)」のプロモツアーの為に組んだという側面もありますが、そこへキース・リチャーズが客演する形で実現したニュー・バーバリアンズは、ロン・ウッド(g,vo)、キース・リチャーズ(g,vo)、イアン・マクレガン(p,key,vo)、スタンリー・クラーク(b)、ジョセフ・モデリステ(ds,per)、ボビー・キーズ(ts) という豪華な面々でした。特にスタンリー・クラークの名前には仰天でしょう♪♪~♪

と言っても、主役はあくまでもロン・ウッドですから、フェイシズから連綿として受け継いできた酔いどれロックンロールは美しき「お約束」です。適度なファンキーさに加え、やはりロン&キースのギターアンサンブルは、間違いなくストーンズファンを狂喜乱舞させてしまうはずです。

それはラフというよりメチャメチャにテキトーな「Sweet Little Rock'n Roller」から始まり、ど~でもいいような歌を徹底的にロックさせていく「F.U.C. Her」、哀愁が尚更に滲み出た隠れ名曲「Breathe On Me」のラフな感触が実に心地良いというド頭からの三連発で、いきなりノセられてしまいます。

まあ、このあたりは、そのあまりにもファジーな感覚に賛否両論が本当のところなんですが、ロン・ウッドにしても久々のソロ活動ということで気合いが入っているのも確かですから、この時点の新曲という「Infekshun」や「Seven Days」での熱気は本物でしょうねぇ~♪ でも、相当に荒っぽいですよっ!

そしてロン・ウッドの名盤「I've Got My Own Album To Do (Warner Bros.)」に収録されながら、実はミック・ジャガーがメインで歌っていたという人気曲「I Can Feel The Fire」の和んだ楽しさは、やはり捨て難いものがあります。

また同じく「Am I Grooveing You」のヘヴィなグルーヴはスタジオ盤以上で、これはスタンリー・クラークの地味ながら重心の低いビート感とロン・ウッドが隠し持っているファンキー嗜好が結果オーライ♪♪~♪ 何回も書いているように、このライブはメチャラフなんですが、このあたりまで聴き進んでくると、それが最高に心地良いものに変化しているのですから、音楽って本当に奥が深いと思います。

こうして迎える大団円は、お待たせしました、今に至るもキース・リチャーズの持ちネタのひとつである「Before They Make Me Run」が、ニュー・バーバリアンズで演じられるという嬉しいプレゼント♪♪~♪ と言っても、キース・リチャーズのことですから、ヨレヨレのフラフラはご愛敬ながら、実はそれこそがロックの本質かもしれないなんて、妙な言い訳が虚しくなるほどです。

なんていうか、一期一会の享楽主義とは簡単にかたずけられないものが……。

ちなみに音質は微妙なステレオ感も含んだモノラルっぽい雰囲気で、おそらくは客席からの隠密録音でしょうが、昔からAランクと定評があったものです。それが今回のリマスターではピッチの修正とノイズの除去も丁寧に行われていますから、個人的には高得点!

それゆえにツッコミどころも満載なんですが、ある意味でのピュアなロック魂が、確かに楽しめます。

☆Disc 2 / The Rolling Stones
 01 Prodical Son
 02 Let It Rock
 03 Respectable
 04 Star Star
 05 Beast Of Burden
 06 Just My Imageination
 07 When The Whip Comes Down
 08 Shattered
 09 Miss You
 10 Jumping Jack Flash

いよいよ登場のストーンズは、前年夏のアメリカ巡業以来のステージということで、結論から言えば、メッタメタです。特に「Star Star」なんて、ミック・ジャガーが歌の出だしを間違えたのか、唄い出せずに最初のコーラスが終わってしまい、再びキース・リチャーズがイントロを弾いてから、ようやく……。あぁ、これがライブというか、ブートの面白さですよねぇ~~♪

他にも「Jumping Jack Flash」ではキース・リチャーズのギターのチューニングが狂いまくって、初っ端からヘロヘロになっています。

つまり、こちらも相当にラフ&ルーズな味わいが全開なんですが、不思議なことに、それが実にロックしています。素人バンドが下手をやっているのとは、違うんですねぇ。これぞ下積み時代からステージの修羅場を潜り抜けてきた貫禄というか、演奏が進むにつれ、ガチッと纏まって聞かされてしまうのですから、流石だと思います。

気になる特別な趣向としては、スタンリー・クラークが参加した「Miss You」でのベンベンビートが微笑ましいところ♪♪~♪ 明らかにミスマッチなんですが、してみるとビル・ワイマンの幾分もっさりしたビート感こそが、ストーンズサウンドのキモだと痛感してしまいました。

ということで、こんなロックも「あり」というのが、本日の結論でした。

正直言えば、これよりも上手い素人バンドだって数多あるでしょう。しかし、これはプロにしか表現することが出来ない上質の演奏だと思います。所謂ロック魂と言ってしまえば簡潔なんですが、一筋縄ではいかないのもまた、プロの凄味!

ちなみに本日ご紹介のブートは、この音源に関しての最新のブツで、残念ながらプレス盤ではなくCDRなんですが、音質や編集の具合もきちんとしていますし、こういうラフな演奏にはジャストミートの荒っぽい音感が、これもロックの味わいを強めているのでした。

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私のヴァレリー・カーター

2009-06-08 10:29:58 | Pops

Just A Stones's Throw Away / Valerie Carter (Columbia)

1970年代も半ば頃になると、我が国でも輸入盤専門的が増え、そこでは日本盤よりも安くLPが販売されましたから、以前よりも手軽にアルバムを買えるようになったのは嬉しいことでした。そして必然的に、全く知らないミュージシャンや歌手の作品にも手を出せる状況になったのです。

本日ご紹介のヴァレリー・カーターも、そうして知り得た女性ボーカリストで、素直な歌声の中に健気でキュートな魅力が潜んでいるという、素敵な歌手です。

とはいえ、結論から言えば、ヴァレリー・カーターにはヒット曲なんて出せませんでした。

しかし1970年代には、知る人ぞ知る活躍をしていて、それは主にコーラス要員として、ジャクソン・ブラウンやジェームス・テイラーといった所謂ウエストコーストロック、そしてシンガーソングライター達の諸作やライブの現場で重宝されたひとりだったのです。

そうした顔の広さゆえでしょうか、1977年に出されたこのアルバム裏ジャケットに記載された協力ミュージシャンの豪華さには吃驚仰天! ローウェル・ジョージ(g)、ビル・ペイン(key)、サム・クレイントン(ds,per) というリトルフィート勢、チャック・レイニー(b)、ジェフ・ポーカロ(ds)、マイク・ユニティ(key)、アニー・ワッツ(ts) あたりの超一流スタジオミュージシャン、ハーブ・ペターセン(g,vo)、ジャクソン・ブラウン(vo)、ジョン・ホール(g,vo)、トム・ヤンス(vo)、ジョン・セバスチャン(hca)、リンダ・ロンシュタット(vo) といった既にリーダー盤を出している人気者、さらにモーリス・ホワイト(vo,per)、バーダイン・ホワイト(b)、ラリー・ダン(key)、アル・マッケイ等々のアース・ウインド&ファイアーの面々までもがっ! もちろん、他にも書ききれない有名人が大挙参加しているのです。

しかも収録曲毎にローウェル・ジョージやモーリス・ホワイトがプロデュースやアレンジを担当しているのですから、実に贅沢なアルバムだと思いますね。

それが実現したのは、ヴァレリー・カーターが当時契約していたプロダクションの社長だったボブ・キャヴァロの仕掛けによるもので、前述した参加メンバーの大半は、この人がマネージメントしていたと言われていますし、アルバム全体の統括プロデュースも当然でした。

さらに、これは後で知り得たことですが、ヴァレリー・カーターのキャリアには、ハウディムーンというフォーク系のバンドがあって、ボブ・キャヴァロがマネージメントしていたという因縁もあるのです。

しかし、そういう経緯を知らなくとも、このアルバムの魅力は不思議なほどです。

 A-1 Ooh Child
 A-2 Ringing Doorbells In The Rain
 A-3 Heartache
 A-4 Face Of Appalachia
 A-5 So, So Happy
 B-1 A Stone's Throw Away
 B-2 Cowboy Angel
 B-3 City Lights
 B-4 Back To Blue Some More

まず、A面ド頭の「Ooh Child」には完全KOされますよっ! 曲はスピナーズも歌っている所謂甘茶、つまりスウィートソウルの素敵なメロディなんですが、とにかくヴァレリー・カーターのピュアな歌声、キュートな節回しとせつない情熱が実に素晴らしいです。正統派ポップスと甘茶の理想的な融合♪♪~♪ その成功例が、ここにあるのです。サウンドプロダクトもヴァレリー・カーターの伸びやかな声質を活かしきった多重録音のコーラス、落ち着いた深みがあり、また同時にきらびやかな演奏パートの充実度も絶品だと思います。

告白すれば、サイケおやじは輸入盤屋の店頭で、この曲だけ聴いて、アルバムをゲットしてきたのです。

しかしそこに収められていたのは、このタイプの歌と演奏ばかりではありませんでした。

アース・ウインド&ファイアーの味わいがモロ出しとなったファンキーポップな「City Lights」、同じくそれをニューミュージック調に歌謡曲化したような「So, So Happy」の楽しさ♪♪~♪

そうです、言うまでもなく、このアルバムは当時の我が国では一番の流行だったニューミュージックや歌謡曲に大きな影響を及ぼしたのですねぇ~♪ 実際、今になって聴いていると、そうした元ネタがどっさり楽しめますよ。

そのあたりはフォークロックをラテンフュージョン化した感じの「Ringing Doorbells In The Rain」、シンミリ系のメロディをじっくりと歌いあげていく「Heartache」や「Face Of Appalachia」、ゴスペルロックなアルバムタイトル曲「A Stone's Throw Away」、さらに哀しい恋の情熱がたまらない「Cowboy Angel」でも、尚更に顕著です。

そしてアルバムの締め括りに置かれた「Back To Blue Some More」では、スティーリー・ダンも真っ青なジャズフュージョンの極みつき! 起伏の少ない曲メロを膨らませていくヴァレリー・カーターのボーカルの力量が素晴らしく、また隙間だらけのようで、実は濃密な演奏パートではアーニー・ワッツのサックスが大きな役割を担っているようです。そしてミステリアスなコーラスと思わせぶりなアドリブパートがそのまんま、フェードアウトしていくのですから、ヴァレリー・カーターのボーカルを、もっと聴きたい……! という実に上手い構成になっています。う~ん、これはジョニ・ミッチェルを可愛らしく解釈したんでしょうかねぇ。そんな感想が浮かんでしまうほど、ジャジーなんですよ。

ということで、実に様々なタイプの曲が入ったアルバムですから、本音を言えば、とっちらかった仕上がりだと思います。しかし、そのどれもがヴァレリー・カーターの「歌の力」によって、最高に上手く纏まっていると思います。

それゆえにアルバムを通して聴けば、納得しながらも、実に勿体無い!

個人的にはトップに置かれた「Ooh Child」の色合いで統一されていたら、極上のポップスアルバムになったと確信するほどです。しかし……。

思えば時代はリアルタイムでウエストコーストロックがAORへと移り変わっていく頃でした。些か穿った考察をすれば、このアルバムは、そこへ至る様々なサンプルが収められているようにも感じますし、実際、我が国のニューミュージックとか、アメリカ産のAORには、このアルバムのサウンドが使い回されていると思います。

ヴァレリー・カーターは既に述べたように、クセの無い素直な声質と歌い回しの上手さが際立つボーカリストです。それゆえに業界内での評価も高かったと思いますが、同時にコーラス要員とかの便利屋的な使い方をされていたのは、どうだったのでしょう……。

ちなみに彼女は、この後に2枚目のソロアルバムを出していますが、それは時代に迎合したようなフュージョン系AORにどっぷりと浸りきったような仕上がりでしたから、サイケおやじは完全に期待を裏切られています。

そして案の定というか、彼女は1980年代に入ると、何時しかフェードアウトしていますが、一説によれば健康を害して引退したと言われています。

その意味で、この作品こそが、いや、極限すれば「Ooh Child」だけが、私のヴァレリー・カーターです。

我が国では以前にCD化もされているそうですから、機会があれば、皆様にはぜひとも聴いていただきたい女性歌手のひとりです。ジャケットに写る彼女の強い眼の輝きも、なかなか印象的じゃないでしょうか。

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ノーブラ姿がうつろな愛

2009-06-07 09:30:24 | Singer Song Writer

うつろな愛 / Carly Simon (Elektra / ビクター音楽産業)


今では落ち着いてしまった感もあるカーリー・サイモンですが、この自作自演の大ヒットを飛ばした1973年当時は、快活で行動力のある女性シンガーソングライターというイメージでした。

実際、このジャケ写の乳首完全浮き出しというノーブラ姿は、まさにウーマンリブなんていう、今では懐かしい言葉が思い出されます。

また風貌からして女ミック・ジャガーなんていう人もいましたけれど、しかし決してそういうタイプの歌手ではなく、しぶとくて力強いものと合わせて表現される女性ならではのキュートな魅力が本質だったように思います。

さて、本日ご紹介のシングル曲は既に述べたように、カーリー・サイモンが大ブレイクを果たしたチャートトップの大ヒット♪♪~♪ 彼女自身のアルバムとしては3作目となる「No Secrets」のセッションと同時にロンドンで録音されていますから、参加メンバーは豪華絢爛! ジェームス・テイラー(g)、ニッキー・ホプキンス(p)、クラウス・ヴァマン(b)、ジム・ゴードン(ds)、ドリス・トロイ(vo) 等々に加えてミック・ジャガーまでもがコーラスで!

イントロのブルブルブルブルブンっというエレキベースの思わせぶりから、ちょっと言ってはならないカーリー・サイモンの囁きも絶妙ですが、重層的なアコースティックのリズムギター、些かヘヴィなピアノ、そしてキャロル・キングとエルトン・ジョンの折衷スタイルがモロに顕著な曲メロのキャッチーな魅力♪♪~♪ もちろん、そこが彼女だけの個性だと思いますし、自身のボーカルも、ほどよいエグミが印象的です。また、サビへ向かうところを盛り上げていくジム・ゴードンのドラミングも畢生でしょう。

そして実はノンクレジットだったんですが、聴けば一発、これぞミック・ジャガーというコーラスが入るサビの痛快感!

まさにヒット曲の要素がテンコ盛りですねぇ~~♪

当然、この曲は前述したアルバム「No Secrets」にも収められています。しかし何で私がこのシングル盤に拘るかといえば、ご推察のとおり、アルバムバージョンとはミックスが異なっていて、一応はステレオミックスのようですが、実際は団子状に歌と演奏が迫ってくるという、極めてモノラルに近いミックスになっています。

しかもミック・ジャガーのコーラスが、微妙に強調してあるように感じますが、いかがなもんでしょう?

このあたりはプロデュースを担当していたリチャード・ペリーの思惑なのか、あるいはレコード会社の独断なのか、ちょいと分かりませんが、とにかく私はシングルバージョンを愛聴しています。

肝心のカーリー・サイモンはご存じ、この頃にジェームス・テイラーと結婚した所為か、なんとなく以降の活動が落ち着いた雰囲気になりましたですね。もう、こんなノーブラ姿は見られないのかと思うと、ちょっと残念な気持ちに……。

ちなみに、このシングル盤のデザインはアルバム「No Secrets」からの流用ですから、その12インチLPのカバーでは、さらにしっかりと彼女のお姿が拝めますし、その前に出された2枚目のアルバム「Anticipation」では、スケスケのロングスカートで彼女のフェロモン系美脚が楽しめたわけですが、それは音楽的にも「No Secrets」に決して劣らない名盤だと思います。

あと、実際の彼女は予想以上に大柄な人なんですよねぇ~。ジェームス・テイラーと一緒に来日した時は、ちょっと吃驚させられましたですよ。

その彼女のキャリアでは、少女時代からサイモンシスターズなんていうファミリーグループをやっていたそうですし、マネージメントの意向で女版ボブ・ディランに仕立てあげられそうになっていた時期もあったそうです。

しかしその頃に盛り上がったシンガーソングライターのブーム、またジェームス・テイラーとの邂逅があって、ようやく彼女も本領を発揮出来たと言われていますが、人妻となって以降の活動がAORやスタンダード系のボーカルアルバムという、些かアクの薄いものになったのは、サイケおやじ的には残念でした。

一応、1982年頃にジェームス・テイラーとの破局もありましたから、もう少し、熟女っぽいエロキューションな歌唱を聞かせてくれると願ったのですが、それも……。

うつろな愛は叶わぬ願いとなるのでしょうか。You're So Vain ~♪

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雨の歌は、まず、これっ!

2009-06-06 12:00:34 | Pops

悲しき雨音 / The Cascades (Valiant / 東芝)

梅雨時の定番洋楽として、今も欠かせないのが本日ご紹介のシングル曲でしょう。

原題「Rhythm Of The Rain」を我が国洋楽業界が十八番の「悲しき」という言葉で括った曲名は如何にもですが、実際、胸キュンのメロディとセンスの良いボーカル&コーラス、そして失恋をほどよい感傷で綴った歌詞の内容がジャストミート♪♪~♪ しかも演奏パートの緻密な素晴らしさも特筆物で、まさにアメリカンポップスの職人技的な上手さまでもが堪能出来るという、実に奥深い名曲だと思います。

主役のカスケーズは西海岸はサン・ディエゴ出身のコーラスグループで、メンバーはジョン・ガモウ、エディ・スナイダー、デイヴ・スティーヴンス、デイヴ・ウィルソン、デイヴ・セイボーが全盛期の構成とされていますが、スタジオ系ボーカリストも含めて、メンバーの入れ替わりが度々あったと言われていますし、1970年前後には4人組としてテレビに出ていたと記憶しています。

もちろんマイナーレーベルを転々として様々なレコーディングを残しているのは言わずもがなでしょう。しかも小ヒットながら、決して侮れない隠れ名曲・名唱が相当にあるのですから、ポップスやオールディズのマニアからも人気が高いのです。

しかし、きちんとしたアルバムは1~2枚程度しか出していないと思われますから、必然的にシングル盤中心のグループなんですぇ。しかも良質♪♪~♪

その中でも、やはり本日ご紹介の「悲しき雨音」は特別で、アメリカでは1963年にチャートの上位にランクされていますし、我が国でも当時から毎年のようにリバイバルヒットしていますが、特に昭和43(1968)年頃には大ヒットでした。そして驚くなかれ、「悲しき雨音'69」なんてリメイクバージョンまでもが発売されたんですよっ!

そういう部分を支えていたのが、前述したようにアメリカ音楽産業の裏方達で、このシングル盤のセンターレーベルには堂々と、「Arranged by Perry Botkin Jr.」なんて記載されているほどですが、このペリー・ポトキンJr. という人は、ソフトロックの重鎮! 詳しくは別の機会に譲るとして、とにかく素晴らしいアレンジャーです。

ということで、これからの時期、また今年も何処かで耳にする名曲に違いありません。ちなみにカスケーズには、「悲しき北風」なんていう名曲もありましたですね。う~ん、原題を思いだせないのが、もどかしい……。

そして今朝は、実に自然体で音楽が聴けましたですね。さっきまで、いろんなシングル盤を出して、ターンテーブルに乗せ換えては、楽しんでいました。これが趣味に生きる私の本道かもしれません。

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本日はメラニーに癒される

2009-06-05 11:11:09 | Singer Song Writer

傷ついた小鳥 / Melanie (Buddah / 日本コロムビア)

今ではすっかり忘れられたようなメラニーは、本名をメラニー・サフカというアメリカのフォーク系シンガーソングライターです。その全盛期は恐らく、1970年代前半だったでしょう。アメリカでは「心の扉を開けよう」とか「レイダウン」というメガヒットを飛ばしています。

そして何よりも凄いのは、当時、メラニーのオリジナル曲のカバーバージョンが巷に溢れていたことです。本日ご紹介のシングル盤A面曲もそのひとつ♪♪~♪ ジャケットには「オリジナル盤登場」と、わざわざ明記されている事にご注目下さい。

原題「What Have They Done To My Song Ma」という長ったらしいものを潔く纏めた邦題は、当然ながらカバーバージョンの方が先でしたが、その最初は誰だったのでしょうか? これは未だに解決していない謎です。

しかし、流石はオリジナルバージョンの素晴らしさ!

和みのメロディが幾分地味に歌われる出だしの雰囲気、そして少しずつ盛り上げていくメラニーの歌い方は、中高音域になると艶やかな伸びのある声となり、リスナーを魅了するのです。そして十八番のハミングコーラスも♪♪~♪

いゃ~、全く癒されますねぇ~~~♪

とにかく一度聞いたら忘れられないメロディですから、きっと皆様も心に残る思い出になっているかと推察致しますし、何時か何処かで懐かしい友に再会した気分のような、実にハートウォームな名曲だと思います。

そのメラニーは1968年頃にデビュー、そして1970年代半ば頃からはイマイチ活動が注目されることもなく、ナチュラルフェードアウト……。

ところが数年前にアメリカに行った友人からの話では、なんとファミリーバンドとして、今でも歌っているらしいですよ。う~ん、懐メロ番組にでも出てくれないかなぁ~。

ちなみに、この日本盤は昭和45(1970)年末に出たものですが、それにしてもジャケットに写るメラニーは最悪! 本人はもっと美しく、可憐ですよ。

それとB面は、もちろんストーンズの、あの名曲カバーが愛おしい♪♪~♪

と、ここまで書いて、本日もやっと、この曲だけ聴けました……、

いったい、ど~なっているのか、自分でも混乱するほどの音楽拒否症状が怖いです。

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今朝は17才の頃

2009-06-04 10:53:01 | Singer Song Writer

17才の頃 / Janis Ian (Columbia / CBSソニー)

正直、ジャズを聴くのは、こんなにエネルギーが必要なのかっ!?

というのが、最近のサイケおやじの偽りの無い心境です。もうLP片面どころか、1曲を聴くのも、つらい……、重症ですねぇ、これは……。

そこで連日、自分史的なロックやポップスに逃避しているわけですが、本日は、それもつらくなっています。

しかし、こんな時こそ、シングル盤で癒しの女性ボーカル!

ということで、今朝はジャニス・イアンの大ヒット曲を聴きました。ボサロック風のメロディ優先主義が、本当に素敵ですねぇ~♪

さて、このジャニス・イアンという人は、十代の頃からニューヨークのフォーク界では天才少女として注目され、ギターは上手いし、ボーカルは癒し系、しかし自作の歌は辛辣に社会や人間関係の本音と建前を活写したものだったそうです。

実際、デビュー期にヒットした「Society's Child (Verve)」は、なんと白人娘と黒人男の恋愛を歌ったという、1966年のアメリカでは決定的なタブー曲! もちろんリアルタイムでは発売レコード会社を探す苦労と同時に暗黙の了解での放送禁止というのが現実でした。

ところがクラシックの巨匠にして幅広い音楽の天才だったレナード・バーンスタインが、これを激賞し、自分が持っていたテレビ番組で歌わせた直後に怒涛のブレイク! 1967年にはチャートの上位にランクされるほどでした。

しかし、サイケおやじは例によって、リアルタイムではそんな事を知る由もありませんでした。実際、ジャニス・イアンの名前を強く意識したのは昭和50(1975)年の事で、当時のラジオからは彼女が歌う「パーティが終わったら」とか、この曲が頻繁に流れていたのです。

さらに翌年になって出された「愛は盲目」に至っては、我が国の某テレビドラマの主題歌になるという決定打! もちろん日本の洋楽チャートではトップを独走しています。

おまけに南沙織までもが、ジャニス・イアンが特別に書き下ろしたとされる「哀しい妖精」を歌って、絶対的な大ヒットにしていますし、同時期に出されたアルバムが「ジャニスへの手紙」という感涙の名盤♪♪~♪ 前述した「哀しい妖精」の英語バージョンも、実に味わい深いのですが……。

それと反比例するかのように、本国アメリカでの評価は低迷気味で、毎年のように発表されるアルバムは素晴らしい出来栄えなのに、う~ん、何故だ……?

ジャニス・イアンの魅力は、まず優しさ溢れる自作のメロディの素晴らしさ、そして微妙な「いじらしさ」が滲むボーカルの節回しだと思います。もちろん歌詞の中身は、ネクラな告白やアウトサイダー的な視点も含む、なかなかシニカルにものですし、それはキャロル・キングやローラ・ニーロとは似て非なる個性があると感じます。

このあたりは女性の皆様のほうが、尚更に感受性を刺激されるのではないでしょうか。

音楽的にも曲作りだけでなく、アレンジやプロデュースまでも自身が手掛けている部分が多く、それゆえにディスコやフュージョンといった流行り物に色目を使った作品も残されているほどですが、その所為か否か、1980年代に入ると活動を休止してしまうのです。

まあ、最近はカムバックしているようですが、その間に聞こえてくるのは、破産したとか、レズビアンのカミングアウトとか、せつないような仰天ニュースが多く……。

その意味では、時折聴きたくなる、この「17才の頃」に慰められるのも、妙な気分です。

でも、まあ、いいか……♪

ちなみにジャニス・イアンのアルバムは、その全盛期と思われる1970年代後半を中心に相当な数が出ていますし、我が国の人気を反映してか、日本盤LPは中古盤屋の特価品コーナーで、キッスやピンクレディと一緒にされていたのが懐かしくもあります。しかしその内容は、いずれも秀逸なものですから、機会があれば、ぜひとも聴いてみて下さいませ。歌詞の内容も実に素晴らしいですから、ここは訳詞付きの日本盤がオススメです。

しかし、ここまで書いても、長いLPを聴くエネルギーが湧いてこないサイケおやじ……。いったい、この先はどうなるのでせう……。

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スティーヴィー・レイ・ヴォーン! 不滅!

2009-06-03 11:54:28 | Rock

Texas Flood / Stevie Ray Vaughan (Epic)

自分のようなオールドウェイプな人間にとって、一番嬉しい音楽って多分、ブルースロックじゃないでしょうか!? まあ、これは一概には決めつけられないわけですが、少なくともサイケおやじは、この種の「音」には血が騒ぎます。

ところが悲しいかな、そういうブルースロックは1970年前後を頂点として廃るばかり……。以降は時代遅れの代名詞とさえ受け取られていたのが1980年代でした。なにしろ当時はAORやブラコン、シンセやリズムボックスで作られる無機質なデジタルビートポップスが流行っていましたからねぇ……。私がもっと人間的な味わいを求めてジャズの世界に耽溺していたのも、自然の成り行きだったと思います。

ところがそんな時代に突如として現れたのが、スティーヴィー・レイ・ヴォーンというギタリストで、やっていたのは私が大好きなブルースロック! もう、これには吃驚しましたですねぇ~~~♪

それが本日ご紹介のデビューアルバムですが、実はスティーヴィー・レイ・ヴォーンが一躍脚光を浴びたのは、デビッド・ボウイが1983年にメガヒットさせた自身の人気アルバム「レッツ・ダンス」に参加したことによるというのは、今や伝説でしょう。

しかしサイケおやじは、そんな音楽には興味が無かった所為もありますから、リアルタイムでは耳にしていたかもしれませんが、ふ~ん、そんなもんか……。という異次元の出来事だったというわけです。実際、後追いで聴いた前述のアルバムにしても、それほど感名を受けたということはありません。

しかし、やはり同年に出た、このアルバムには心底、ブッ飛ばされました!

というか、既に発売前から、これは凄いギタリストの魂のアルバムとして、各方面で期待と絶賛が渦巻いていたのですが、確か7月初旬頃に輸入盤屋の店頭で新譜として流されていた「音」を聴いた瞬間、サイケおやじは迷わずお買い上げ!

 A-1 Love Struck Baby
 A-2 Pride And Joy
 A-3 Texas Flood
 A-4 Tell Me
 A-5 Testify
 B-1 Rude Mood
 B-2 Mary Had A Little Lamb
 B-3 Dirty Pool
 B-4 I'm Cryni'
 B-5 Lenny

いゃ~、ド頭の「Love Struck Baby」から全力疾走でR&Rなブルースロックが全開の勢いには、思わず、イェェェェェェ~!!! 幾分ペラペラの懐かしいエレキギターの響き、骨太のロッキンビート、力みながらもリラックスしているボーカルの味わいは、モロに私の好きな世界です。

メンバーはスティーヴィー・レイ・ヴォーン(g,vo) とダブルトラブルと呼ばれるトミー・シャノン(b) にクリス・レイトン(ds) だけという3人編成! 当然ながらオーバーダビングは極力控えられた、とてもシンプルな作りもジャストミートの潔さです。

アルバムタイトルやジャケ写からもご推察のとおり、スティーヴィー・レイ・ヴォーンはテキサス出身の白人ですが、そのブルースを愛して追及する姿勢はロックやソウルを通過して尚更に熟成されたものでしょう。特にギタースタイルに関しては、アルバート・キングとエリック・クラプトンをゴッタ煮として、さらにジミ・ヘンドリックスのフィーリングを強く加味した、サイケおやじが最高に憧れてやまないものです。

それは黒人ブルースのカバーであるアルバムタイトル曲「Texas Flood」でのソリッドな泣きと呻き、またオリジナルのスローブルース「Dirty Pool」での執拗なギター的興奮! あぁ、これこそが、ぶる~すなロックですよっ!

また疾風怒濤のギターインスト「Testify」や「Rude Mood」には、フュージョンでは決して味わうことの出来ない原初的な興奮が蘇っていますし、やはりインストの美しいスロー曲「Lenny」では、ジミヘンっぽいメルヘン&メロウな味わいがたまりません。

このあたりは、もう文章にすることが虚しいばかりで、とにかく聴いて、そして感じていただく他はないのですが、それをあえて本日に書いてしまったのは、なんと現在、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの諸作がリマスターの紙ジャケ仕様で、しかもボーナストラック付きで再発されているからです。それを昨夜発見した私は、ここでも迷わずに全買いモードの散財地獄に堕ちたわけですが、全く後悔していますせん。

ちなみにスティーヴィー・レイ・ヴォーンは翌年には2枚目のアルバム「Couldn't Satnd The Weather」を出し、それも素晴らし過ぎる出来栄えでしたから、完全に大ブレイク! そして1985年には初来日公演も果たすのですが……。

正直、それに接した私は、些かの失望を禁じ得ませんでした。う~ん、何というか、精気の無い演奏で「お約束」をやっているだけというか、決して手抜きだったわけではないのですが……。後で知ったところによると、メジャーデビュー直後からの人気沸騰、そしてハードな巡業とレコーディングのプレッシャーから、スティーヴィー・レイ・ヴォーン以下、バンドの面々も含めての悪いクスリと酒浸りは、スタアの宿命というには、あまりにも酷過ぎました。

その結果、同年には健康を著しく害して闘病生活に入るのですが、ラッキーというか、私はその直前にドイツで行われたコンサートにも行くことが出来ました。そしてそこには、神様が降臨したような閃きに満ちた瞬間と、悪夢のようなヘタレを演じるスティーヴィー・レイ・ヴォーンという人間が、はっきりとしていたのです。物凄いギターソロを聞かせたと思えば、次の曲ではヨタヨタとしてコントロールを失ったような演奏になるという繰り返し……。後にも先にも、ある意味でこんな強烈なステージに接したことは、サイケおやじにはありません。こういう事を書くとお叱りは覚悟のうえですが、チャーリー・パーカーのライブも、こんな時があったんじゃないでしょうか。

とにかくスティーヴィー・レイ・ヴォーンといえば、サイケおやじには、この時の様子が真っ先に思い出されます。

そしてその後、療養期間を過ごしたスティーヴィー・レイ・ヴォーンは、1988年に待望の本格的な復帰を果たし、「In Step」という傑作アルバムを残すのですが、好事魔多し! 1990年8月、巡業の移動中にヘリコプターが墜落し……。

こうして全盛期に天国へと召されたスティーヴィー・レイ・ヴォーンが残してくれたピュアな音楽は、プルースロックという時代遅れの産物が奇跡的に若い世代にまで受け入れられたことで、永遠の生命を得たと思います。実際、全てのアルバムがベストセラーになっているほどです。

この手の音楽はリスナーによっては完全に拒絶されるものかもしれません。

しかしサイケおやじにとっては、死ぬほどに愛おしい!

最後になりましたが、発売中の紙ジャケCDに収録のボーナストラックは以下のとおり♪♪♪

 S.R.V. Speakes
 Tin Pan Alley
 Testify
(Live)
 Mary Had A Little Lamb (Live)
 Wham! (Live)

「S.R.V. Speakes」は、そのまんま、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの短い独白で、付属解説書には訳文も載っているのが親切丁寧です。どうやら本人は譜面が読めないらしいですよ。感じたままに弾くというのが、実に正直です。

また「Tin Pan Alley」は、このデビューアルバムからのアウトテイクですが、しぶといスローブルースの中で炸裂するスティーヴィー・レイ・ヴォーンのギターは、やっはり最高です。

そして「Testify」以下の3曲は、1983年9月のライブ音源♪♪~♪ 荒っぽい中にも纏まりがあるバンド演奏の醍醐味が楽しめますが、幾分のお疲れ気分が逆にリラックスした好演に繋がったような「Mary Had A Little Lamb」、そしてスティーヴィー・レイ・ヴォーンが敬愛する凄腕ギタリストのロニー・マックが十八番のギターインストを熱くカバーした「Wham!」が痛快至極! あぁ、こんなにギターが弾けたらなぁ~~、と叶わぬ思いが胸に溢れてきますよ。

気になるリマスターの結果は、あくまでも個人的な感想ではありますが、アナログ盤特有のぬくもりを活かしつつもメリハリの効いた、なかなか往年のロックぽい仕上がりだと思います。もちろんボーナストラックも同様ですし、ライブ音源の纏め方も良い感じ♪♪~♪

さあ、こうしてCDをゲットしたからには、当分の間、私の車の中はブルースロック大会が必至♪♪~♪ そういえばリアルタイムの1980年代、スティーヴィー・レイ・ヴォーンのアナログ盤をカセットコピーしてはカーステレオで鳴らしまくり、同乗者から顰蹙の嵐だった時代か懐かしくもなるのでした。

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ロッドはトラッドロックの王様

2009-06-02 11:55:51 | Rock

Gasoline Alley / Rod Stewart (Vertigo)

今や大衆音楽の男性歌手としては大御所となった感もあるロッド・スチュアートにも、当然ながら下積み時代がありました。

それは同時代のロックスタアの多くがそうであったように、少年時代からR&Bに親しみながら歌手としてのドサ回りを経験し、どうにかマイナーなレコード会社からシングル盤を出すという、お決まりのコースを辿っていたのですが、ついに訪れた大チャンスがジェフ・ベック・グループへの参加でした。

そして「Truth」と「Beck-Ola」というジェフ・ベックにしても、またロックの歴史上でも特に優れた2枚の名作アルバムで熱唱を聞かせた1960年代末に至り、ロッド・スチュアートの名前は一躍有名になるのですが、驚いたことに、そのバンド活動中にもアルバイト的に様々なレコード会社でシングル盤を出したり、あるいは他のミュージシャンのセッションに参加していたというのですから、ロッド・スチュアートの顔の広さというか、貪欲というか、上昇志向とばかりは決して言えない行動力は流石だと思います。

で、そんな中で盟友となったのが現在はストーズのメンバーになっているロン・ウッドでした。そして何時しか2人は解散直前のスモール・フェイシズへと合流し、新生フェイシズとしての活動をスタートさせるのですが、ロッド・スチュアート本人は既にマーキュリーというアメリカのレコード会社とソロの契約をしていたため、フェイシズとの二足の草鞋という実にバイタルな時代が始まるのです。

それはまず1970年にイギリスで発売されたロッド・スチュアート名義のソロアルバム「An Old Raicoat (Vertigo)」、次いでフェィシズとしては最初のアルバムとなった「The First Step (Warner Bros.)」が、ほぼ同時期に世に出るという異常事態!

ちなみに実際にロッド・スチュアートが所属していたのは、アメリカのマーキュリーと同系列のフィリップスがイギリスで発足させたヴァーティゴという新レーベルでしたが、そんな契約の関係もあり、アメリカでは前述のソロデビューアルバムが「Rod Stewart Album」という別名で一足早く、1969年末に出ていたようです。

というのは今となっての感慨です。

そうした経緯は全く知らぬまま、サイケおやじがロッド・スチュアートに邂逅したのは、前述したジェフ・ペックの傑作アルバム2枚でしたが、正直言えば、ロッド・スチュアートのボーカルよりもジェフ・ペックの強靭で変幻自在なギターにシビレ、バンド一丸となった破天荒なハードロックに興奮させられていたのが本筋でしたし、音楽マスコミも含めて、ロッド・スチュアートの歌唱にあえて言及していた実態は、それほど無かったと記憶しています。

ですから我が国でも昭和45(1970)年のリアルタイムで発売された前述の「An Old Raicoat」にしても、タイトルをわざわざ「ロッド・スチュアート・アルバム」というアメリカ盤仕様にしていたわけですが……。

ご推察のように、後の全盛期を鑑みれば、その2枚のアルバムの出来は決して良いとは言えません。しかし次作へと繋がる萌芽は十分に感じ取れます。もちろん、これは私が何れも後追いで聴いての感想です。つまり当時は無視されていたというのが、現実じゃなかったでしょうか。

ところが翌年になって発売された本日ご紹介のアルバムが、突然として音楽マスコミに絶賛され、それは我が国でも同じでした。いや、当時は海外からの情報が極端に不足していましたから、サイケおやじがそうした好評に接したのは昭和46年の日本洋楽マスコミによってと言うべきでしょう。

そしてラジオから流れてくるシングル曲「ガソリン・アレイ」のせつない哀愁のメロディ、幾分しわがれながらも強力に芯のあるボーカルに魅せられたのです。また同時にアルバムも期待どおり、マスコミで持ち上げられたまんまの潔い名作でした。

 A-1 Gasoline Alley
 A-2 It's All Over Now
 A-3 Only A Hobo
 A-4 My Way Of Giving
 B-1 Country Comforts
 B-2 Cut Across Shorty
 B-3 Lady Day
 B-4 Jo's Lament
 B-5 You're My Girl

演奏に参加しているメンバーはロン・ウッド(g,b,vo)、イアン・マクレガン(p,key,vo)、ロニー・レイン(b,vo)、ケニー・ジョーンズ(ds,vo) というフェィシズの仲間達に加え、下積み時代からジェフ・ベック・グループまで行動を共にしてきた盟友ミック・ウォーラー(ds)、そしてマーティン・クイッテントン(g)、ピート・シアーズ(key,b)、ディック・パウエル(key,vln) 等々、実にハートウォームな面々♪♪~♪

まずシングルカットもされたド頭「Gasoline Alley」は、既に述べたように土の香りも心地良い哀愁のメロディが魅力♪ それは後で知り得たことですが、所謂ブリティッシュトラッドの影響下にある旋律で、それをブルースやソウルのフィーリングを強く滲ませたロッド・スチュアートのしゃがれ声ボーカルで表現されれば、シビレて当然でしょう。ちなみに曲を作ったのはロッド&ロンの名コンビです。

そして続く「It's All Over Now」はストーンズでお馴染みのR&Bカバー曲ですが、ここでの下世話なロックンロールっぽい解釈はストーンズとは似て非なる楽しいグルーヴが全開♪♪~♪ もちろんフェィシズにとっても十八番のノリとして、バンドのウリとなる唯一無二の酔いどれロック味に仕上げられていますから、サイケおやじは少年時代から今に至るも大好きです。カッコイイ~! としか言えない演奏のブレイクには思わずニヤリの仕掛けがあって、これはフェィシズが後に放つ大ヒット曲「Stay With Me」にも使い回しされていますよねぇ~♪ ちなみに最近のストーンズがこの曲をライブで演じる時には、このバージョンに極めて近いアレンジを使っていますが、ロン・ウッドが関わっていればこその居直りでしょうねぇ~♪ 全く憎めないです。

またボブ・ディランのカバー曲「Only A Hobo」は、アコギやマンドリンに加えてバイオンリを使ったことにより、尚更に哀愁が強くなったという確信犯が痛快♪♪~♪ もちろんロッド・スチュアートのボーカルはシンミリ系のハードボイルドですよ。

その極みつきといって過言ではないのが、B面トップの「Country Comforts」です。これはエルトン・ジョンが自作自演のバージョンも残されていますが、このロッド・スチュアートの魂の歌唱に勝るものなど、この世に無いと確信されるほどです。田舎で育った懐かしい少年時代を回想する男の独り言を、熱き心で歌いあげるロッド・スチュアートを盛りたてるバンドのシンプルな美学も素晴らしく、これを聴いているとロッド・スチュアートというボーカリストはバラードシンガーとして最も力を発揮する人だと実感されます。

アルバムには他にも元祖アンプラグドなロックンロール「Cut Across Shorty」や、それとは正反対にハードロック王道路線の「You're My Girl」という、今日のイメージに繋がる名演も入っていますが、個人的には、よりアコースティックな「Lady Day」や「Jo's Lament」にも捨て難い魅力を感じます。

また「My Way Of Giving」はスモール・フェイシズがオリジナルというリメイク物ですが、ちょっと??? このあたりの事情は、このアルバム制作と新生フェイシズのセッションが同時進行していた事の証かもしれません。

ということで、これは私の愛聴盤のひとつですが、当然ながらリアルタイムではLPが買えず、友人から借りたレコードをコピーしたテープを聴いていましたが、その日本盤はアメリカ仕様のマンホールがデザインされたジャケットが、中身と合っていないようでイマイチでした……。

ところが、掲載したイギリス盤は、素粒子のモノクロ写真を使った味わい深いものでしたから、買えるようになった時には迷わずこちらをゲット! そういえばアメリカの黒人ブルースの某名盤に雰囲気がクリソツですよねっ♪♪~♪

そしてロッド・スチュアートは本格的にスタアへの階段を上り始め、1970年代半ば頃には世界的に大ブレイクしたわけですが、サイケおやじはそういう時代よりも以前の英国トラッドロック期が忘れられないのでした。

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あれから20年のストーンズ

2009-06-01 10:00:34 | Rolling Stones

Dress Rehaersals 1989 / The Rolling Stones (Kiss The Stone)

あぁ、昨日は先週までのストレス発散で、またまた散財してしまったですよ。もちろんネタの仕入れや映画観賞なんかですから、後悔していません! と自分に言い聞かせる月曜日……。

しかし実際、昨日は久々の大当たりが何点かありました。本日ご紹介のストーンズのブートもそのひとつです。

内容はストーンズにとっては復活ツアーというか、前回から7年ぶりのコンサート現場への復帰となった1989年の「Steel Wheels Tour」直前のリハーサル音源ですが、リハーサルとはいっても実際のステージでの音響チェックや照明テスト、そして演目の流れや段取りをチェックするという、所謂ゲネプロですから、演奏はしっかりと楽しめます。

しかも久々のライブ巡業を前にした緊張感もありますから、ストーンズの面々の気合いも充実していますよ♪♪~♪

なにしろここまでの経緯には、ストーンズの解散騒動も含んだ実質的な活動停止が続いていましたからねぇ。

それは1983年に出したアルバム「Undercover」制作時からギクシャクしていたバンド内の人間関係が、ミック・ジャガーのソロアルバム制作という事態に発展しての泥沼状態……。そして契約履行のための新作アルバム「Dirty Work」が、明らかにキース・リチャーズ主導のレコーディングだったことから、バンドはバラバラに近くなっていたのが、当時の実情でした。さらにビル・ワイマンの脱退熱望やチャーリー・ワッツの悪いクスリ疑惑までもが、深刻な噂として流れていたのです。

しかもデビュー以前から実質的なバンドメンバーのひとりして、ステージでのピアノ演奏から裏方の仕切りまでやっていたイアン・スチュアートが、1985年12月に急逝……。こうしてメンバー間の接着剤的な役割を担う大切な友人を失ったストーンズの面々は、もはや解散への道を歩み始めたかのように思われたのですが……。

1989年1月になって事態は好転!

ミック&キースの話し合いにより、3月にはバンドメンバーが集合し、そして記念すべきカムバックアルバムとなった「Steel Wheels」のレコーディングがスタートしたのです。もちろんその出来栄えは素晴らしく、今日に至るストーンズの円熟期を支えるものがたっぷりと楽しめますから、あとはライブへの現場復帰を残すのみというところで開始されたのが、本日ご紹介の音源を含む北米巡業です。

そしてここには1989年8月28日、フィラデルフィアのJFKスタジアムで行われたリハーサル演奏が、モノラルですが高音質で収められています。

☆Disc 1
 01 Intro
 02 Start Me Up
 03 Bitch
 04 Shatterde
 05 Sad Sad Sad
 06 Undercover Of The Night
 07 Harlem Shuffle
 08 Miss You
 09 Tumbling Dice
 10 Ruby Tuesday
 11 Play With Fire
 12 Dead Flowers
 13 One Hit
 14 Mixed Emotions
 15 Honky Tonk Women
 16 Rock And A Herd Place
☆Disc 2
 01 Midnight Rumbler
 02 You Can't Always Get What You Want
 03 Little Red Rooster
 04 Befort They Make Me Run
 05 Happy
 06 Paint It Black / 黒くぬれ!
 07 2000 Light Years From Home / 2000光年のかなたに
 08 Sympathy For The Devil / 悪魔を憐れむ歌
 09 Gimme Shelter
 10 It's Only Rock'n Roll
 11 Brown Sugar
 12 Satisfaction
 13 Jumping Jack Flash

上記演目は、まさにストーンズの新旧ヒットパレードとして、今では何の違和感もないプログラムですが、リアルタイムでこのライブに接した者には驚愕仰天でした。

それは「Ruby Tuesday」や「黒くぬれ!」、そして「2000光年のかなたに」という、故ブライアン・ジョーンズ抜きでは語れず、しかもステージでの演奏は不可能と思われていた曲が入っていたからです。おまけにブライアン・ジョーンズだけのスライドギターが決定的なイメージのブルース名演カバー「Little Red Rooster」までもがっ!!

実はこのライブ巡業にはマット・クリフォードという俊英キーボード奏者が加わっており、その大活躍は新作アルバム「Steel Wheels」でも顕著でしたが、実際のステージでも大切な役割を担っていたのです。

また同じくサポートメンバーとして、元オールマン・ブラザース・バンドのチャック・リヴェール(p,key)、お馴染みのボビー・キース(ts,as) が率いるホーン隊、そしてコーラスにはバーナード・ファウラー、リサ・フィッシャー、シンディ・マイゼルという3人の黒人が加わっています。

そしてそれゆえに、全体が非常に安定感のある演奏に纏まっているのです。

まあ、このあたりはストーンズらしくないとして、古くからのファンには違和感もあるのですが、今となっては結果オーライでしょう。実際、この音源を聴いていくと、従来のストーンズならではのラフ&ルーズなノリと、きちっとしたステージショウとしての纏まりを作りあげようとするサポートメンバーの職人気質が微妙にぶつかりあい、なかなかに面白く楽しめます。

結論から言えば、この巡業ツアーからは「Flashpoint」というライブ盤が作られているのですが、そこでの完成された伝統芸能としてのストーンズとは、一味ちがう演奏とムードが、ここでの最高の魅力でしょう。

ちなみに当然ながら、この音源は以前から出回っています。しかしそれは元マスターをそのまんま製品化した所為で、演奏の間に無音のパートがあったりして聴きづらく、CDにしても3枚組という、なんとも経済効率の悪いブツばかりでした。しかし今回はそれを上手く切り詰めて2枚組とし、もちろん最新リマスターで音質はさらにアップしています。惜しむらくはプレス盤ではなく、CDRなのが減点ではありますが、音源重視の皆様ならば気にする必要もないでしょう。

と、ブート屋のお兄ちゃんが言っていたことは本当でした。

さて、肝心の演奏は、既に述べたように素晴らしいです♪♪~♪

流石のストーンズにしても、久々の現場復帰でオドオドしている雰囲気が微笑ましい前半部分のチクハグなところでは、この時点の新曲だった「Sad Sad Sad」や「Mixed Emotions」、さらに「Rock And A Herd Place」での纏まりの悪さが逆に新鮮ですし、メンバーの身体に染みついている「Bitch」や「Tumbling Dice」といった全盛期の勢いが、なかなかのロック魂を感じさせてくれます。

そして、それが一気に全開となるのが「Dead Flowers」あたりからでしょうか、前述した新曲も含めてのバラバラな勢いが、まさにストーンズの魔性の魅力! 「Honky Tonk Women」でのローリングしまくったピアノの楽しさにもウキウキさせられますし、バンドメンバー間の自然体での意志の疎通はベテランの味を超越していると思います。

そして後半に入ってはグッとあっさりした「Midnight Rumbler」、爽やかさが???の「無情の世界」という、あまり「らしく」ない演奏が続きますが、こうした違和感を払拭してくれるのが「Little Red Rooster」でのブルースロック大会です。もちろんブライアン・ジョーンズが弾いていた色気のあるスライドは聞かれませんが、ピアノを全面に出したシカゴスタイルの味わいで勝負したのは潔いところでしょう。ロン・ウッドのスライドも健闘していると思います。ちなみに前述した「Flashpoint」に収録のバージョンには、特にエリック・クラプトンがゲスト参加したテイクが使われたのもムベなるかな!

さらに気になる「黒くぬれ」から「2000光年のかなたに」のパートでは、サンプリングキーボードまでも駆使したマット・クリフォードが大活躍ですが、ここではリハーサルということもあり、サポートメンバーも含めたバンドの手探りの雰囲気も良い感じ♪♪~♪ 「2000光年のかなたに」のラストから「悪魔を憐れむ歌」へ流れていくアレンジも秀逸だと思います。

こうして到達するクライマックスは、慣れた曲ばかりとあって、バンドはリラックスした中にも自分達なりの手応えを確かめているようですが、やっぱりストーンズ好きには最高の瞬間に違いありません。

女性ボーカルとの絡みを活かしたオリジナルの雰囲気が楽しめる「Gimme Shelter」、ヤケッパチなキースやロニー、そしてコーラス隊が楽しい「It's Only Rock'n Roll」や「Brown Sugar」と、いずれの演奏でもピアノがメインのアレンジになっていますから、当然ながら「Satisfaction」はモータウンがモロ出しというタネ明かし大会ですよ♪♪~♪

しかしオーラスの「Jumping Jack Flash」は流石にストーンズだけのギターサウンドが横溢し、溜飲が下がります。

ということで、既に述べたように、このツアーからのストーンズのライブ演奏には違和感を隠せない古くからのファンも、この音源を聴けば納得じゃないでしょうか?

つまり原石の輝きというか、未完成の魅力というか、本番ではカチッと纏まっていたステージショウのネイキッドな部分が楽しめるのです。

実際、サイケおやじは以前にこの音源を聴いた後から、あらためて「Flashpoint」以降のライブや新作アルバムを楽しめるようになったのです。

そして特筆すぺきは、バンドメンバーがブライアン・ジョーンズを思い出に出来たことじゃないでしょうか。それは哀しいことかもしれませんが、「時はいつの日も親切な友達」とユーミンも歌っているように、いよいよベテランの貫禄を示す時期に入ったストーンズにとっては、避けて通れない道だったと思います。それゆえにサポートメンバーを拡充してまで、ブライアン・ジョーンズ期の曲をライブで演じるのは、ストーンズの存在証明として好感が持てます。

この時代は未だビル・ワイマンが居たわけですし、ドラッグから立ち直ったチャーリー・ワッツのドラミングも寸止めではない強いビートを敲いていた最後のリアルストーンズ期でしたから、楽しまないのは勿体ない!

本当に、そう思います。

う~ん、それにしても、これって既に20年前なんですよねぇ~。今でも現役のストーンズは、おじさん世代には希望ですよ、はい。

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