OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

3DNが教えてくれた

2009-06-13 13:01:00 | Rock

Mama Told Me / Three Dog Night (Dunhill / 東芝)

1970年代前半、カーペンターズと並んで洋楽ヒットを連発していたバンドに、スリー・ドッグ・ナイト=3DNがあります。

彼等は3人のリードシンガーと4人のバックバンドからなる7人組の大所帯でしたが、それゆえに当時の流行だったハードロックからニューソウル、そしてソフトロックやファンキーポップス等々を包括した、実に幅広い音楽性を基本にしつつ、しかもオリジナルよりは専業作家の曲を歌って当たりをとるという、今日的な視点でも最高のプロフェッショナルだったのです。

特に素晴らしいのが、その選曲のセンスであり、しかもリアルタイムでは無名に近いソングライターを注目させた功績は無視出来ません。

例えば本日ご紹介のシングル曲は今日でも局地的評価しか得ていないランディ・ニューマンの手によるものですが、実は作者本人のバージョンは、この3DNの大ヒットに接した後では、正直言って面白くありません。

つまり3DNは選曲のセンスと同時に、アレンジも含めて、最高の歌と演奏能力を兼ね備えたバンドだったのです。

メンバーはダニー・ハットン(vo)、コリー・ウェルズ(vo)、チャック・ネグロン(vo)、マイケル・アルサップ(g)、ジミー・グリーンスプーン(key)、ジョー・ジェルミー(b)、フロイド・スニード(ds) ですが、いずれも3DNを結成する以前、既に様々なグループやソロシンガーとしてレコーディングのキャリアがあった者ばかりです。

まずボーカルの3人はポピュラー系フォーク歌手のジュディ・コリンズを担当していたプロデューサーのデイヴィッド・アンダーソンに見出された後、最初はソロ活動をやっていたのですが、成り行きから意気投合し、ボーカルグループを組むことになります。

そして、この3人組をスカウトしたのが、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンだったのですから、やはりタダ者ではなかったのですねぇ~。これが1967年頃の話で、3人組はレッドウッドというグループ名で、しかもブライアン・ウィルソン直々のプロデュースによってデビューする予定だったのですが、諸事情から実現せず……。

しかし、この繋がりから敏腕プロデューサーのヴァン・ダイク・パークスとガブリエル・メクラーが後を引き継ぎ、ライブ活動も同時進行させるべく、バックバンドの4人が選ばれて、ここに7人編成の3DNが正式に誕生するのです。

ここで大切なのは、演奏パートを実際に担当するレギュラーグループとしての形体が優先されたことでしょう。3DNは当時の西海岸では一番の勢いがあったダンヒルレコードと契約するのですが、ご存じのように、このレーベルはフォーク&サイケロック等々の、どちらかと言えばアングラ系の音楽を、如何にもハリウッド的な音楽産業システムでメジャーに仕立てるのが十八番であり、つまりはスタジオで作りだされた架空の部分も含んでいたのですから、決してライブステージが魅力というミュージシャンは少ないのです。

しかし時代の流れから、ロックやソウルと言えども、ジャズのようにライブでの長い演奏は必須であり、またPAシステムの充実から、従来のパッケージショウのような短いステージは過去の遺物になりかかっていましたから、実力派ボーカルグループがブレイクするにはレギュラーのバンド形態が必須だったと思われます。

実際、3DNは1968年春頃に正式デビューするのですが、やはりライブの素晴らしさが先に評判となってからシングルヒットが出るようになり、初期の人気を決定的にしたのは、3作目のアルバムにして最高に熱いライブ盤「白熱のライブ! / Captured Live At The Forum」でした。

実はサイケおやじは中学生だった昭和45(1970)年、それを先輩から聴かせてもらい、3DNの凄さを知ったのです。そこにはビートルズやオーティス・レディング、ローラ・ニーロのバージョンで既に知っていた有名曲をメインに、実にロックでソウルな歌と演奏がぎっしり! 告白すれば、サイケおやじは3DNの魅力は選曲センス、なんて書いてきましたが、しかし最初にシビレたの、バンドとしての歌と演奏の凄さにだったのです。特にハードな黒っぽさは良かったですねぇ~♪

そして追い撃ちとなったのが、同年夏に発売され、忽ちの大ヒットとなった、本日ご紹介の「Mama Told Me」です。

ミステリアスな雰囲気と黒っぽさが強く滲むエレピにギター、強いビートを刻むベースとドラムス、そしてトーキングスタイルのリードボーカルと一緒に歌える覚えやすいサビのハーモニーコーラス♪ グングンと熱気を高めていくリードボーカルのキメのシャウトも痛快至極ですし、サイケなエレキギターもウルトラにご機嫌です。

まさに当時の私が求めていた曲でしたねぇ~♪ 速攻でシングル盤を買ったのは言わずもがな、3DNのそれまでのレコードを聴き漁った日々が確かにありました。

皆様ご存じのように3DNは以降、ますます破竹の勢いで「喜びの世界 / Joy To The World」や「An Old Fashioned Love Song」「Black & White」等々の大ヒットを連発し、いよいよ選曲センスの良さを発揮していきますから、サイケおやじにしても、それらのオリジナルバージョンが気になり始めたというわけです。そしてもちろん、多くの素晴らしい作曲家や無名でも優れたミュージシャンに邂逅出来た喜びがありました。

つまり私には、3DNに教えられたものが、非常に沢山あるのです。

結論として3DNには、知るほどにアメリカ音楽産業の実態や秘密、方法論が確認出来ると思います。それは後の「産業ロック」なんていう、実に忌まわしい言葉のルーツかもしれませんが、3DNが多くのファンを掴んだのは、ライブの現場の真摯な姿勢もあってこそだったと、今は思っています。

その意味で、彼等のライブ盤は前述の「白熱のライブ!」、そして来日公演の録音も含んでいる「Around The World」が残されているのは素晴らしいことです。

しかし、そんな3DNにも弱点がありました。

それはラジオから流れてくる彼等のヒット曲が、いったい3人のボーカリストの誰がリード歌っているのか!? 顔と名前と実態が個人的には、なかなか一致しなかったことでした。なんというか、3人とも実力が有りすぎて、いろんなスタイルを余裕で表現出来たことが、裏目だったような……。

そのあたりはバンドとして聴けば、全く問題は無いのでしょうねぇ……。

ちなみに、この「Mama Told Me」はコリー・ウェルズがリードシンガーとされていますし、掲載ジャケットでは左がチャック・ネグロン、真ん中がコリー・ウェルズ、そして右側がダニー・ハットンという並びです。

ということで、3DNは前述のライブ盤「Around The World」を出した1974年頃から急速に人気が低下し、契約レコード会社も移籍するのですが、ついに1977年頃には活動停止……。その背景には、彼等が得意技としていた無名ソングライターの作る優れた楽曲が、そうした作家達が所謂シンガーソングライターとして自作自演でデビューしていくブームがあり、おそらくは著作権料の値上がり等々があったものと推察しております。

しかし近年はノスタルジックサーキットながらも、活動を再開しているようですし、個人的には新作を聴いてみたいバンドのひとつです。そして願わくば、全盛期の未発表ライブ音源や纏まった映像作品を望んでいるのでした。

コメント
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