OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

動くフィリー・ジョーに感涙

2009-06-11 10:40:06 | Jazz

Bill Evans Trio 1978 & Quartet 1972 (Jazz Shots = DVD)

近年、ビル・エバンスの映像物はいろいろと出回って嬉しい状況ですが、またまた凄い発掘が、本日ご紹介のDVD♪♪~♪ ジャケットに記載されたメンツを見ただけで、サイケおやじは、うっ、と呻いてしまったですよ。

☆1978年7月19日、イタリアのウンブリア・ジャズ祭 (約28分)
 01 The Peacocks
 02 Theme From Mash
 03 Midnight Mood
 04 Nardis / Announcement By Bill Evans

 まず、このライブ、メンツに仰天!
 ビル・エバンス(p)、マーク・ジョンソン(b)、そしてフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) ですよっ!
 う~ん、動くフィリー・ジョーの映像って、極めて貴重じゃないでしょうか!?
 サイケおやじは、この偉人ドラマーの実演はもちろんのこと、ライブ映像にしても見たことがありませんでしたからねぇ~。内容はどうあれ、その事実だけで迷わずゲット! そして歓喜悶絶♪♪~♪
 と、ノッケから何時も以上に大袈裟な書き出しになりましたが、実際、画質も演奏もAランクの「お宝」でした。そして当然、カラー映像♪♪~♪ 
 まず冒頭の「The Peacocks」は、このライブ直前に完成させていた究極耽美の名盤「You Must Believe In Spring (Warner Brs.)」でも一際印象的に演じられていましたが、ここでは聴衆を前にした緊張感がアグレッシブなピアノタッチに結実したというか、よりナチュラルなジャズっぽさが実に良いです。気になるフィリー・ジョーはブラシ主体で幾分地味ですが、流石にツボを抑えた名人芸だと思いますし、マーク・ジョンソンの控え目なペースワークも良い感じ♪♪~♪
 そして続く「Theme From Mash」もまた、「You Must Believe In Spring」で演じられたメロディ優先主義のエバンス風耽美主義が、尚更に熱く再構築されていきます。フィリー・ジョーのドラミングも一転してスティックでビシバシ、やってくれますよ。
 ちなみにビル・エバンスとフィリー・ジョーのコンビネーションは、1962年頃までは鉄壁の相性で名演・名盤を残しているのは皆様ご存じのとおりですが、それが時代の流れとビル・エバンスの音楽性の深化によって、例えば1967年のライブを収めた「California Here I Come (Verve)」あたりを聴くと、如何にもミスマッチになっていました。それゆえに、ここでのコンビ復活は正直、ちょっと悪い予感もあったんですが、結論は問題無し!
 ちょうど晩年のビル・エバンスは、何かに急き立てられるような強いピアノタッチとハードなドライヴ感を前面に出すようになっていましたし、前述の名盤「You Must Believe In Spring」を制作した直後には長年のパートナーだったエディ・ゴメス(b) とも別れ、新たなメンバーでのトリオ演奏を試していたのでしょうか? 晩年のレギュラーとなるマーク・ジョンソンにしても、おそらくはビル・エバンスと共演して間もない時期の記録だと思います。
 そのあたりの勢いが如実に出たのが「Midnight Mood」で、なかなか前向きなピアノトリオ演奏として、各人の技も冴えまくり! ひたすらな自己表現に没頭するビル・エバンス、躍動的なペースワークでピアノに絡み、さらにアドリブソロでは相当にツッコミ鋭いマーク・ジョンソンは、やはりタダ者ではありません。そしてフィリー・ジョーの余裕のドラミング! 今まで写真でしか見ることの叶わなかった、あのポーズで動いている、それだけでシビレますよっ♪♪~♪
 そのクライマックスが、ビル・エバンスのライブには必須の「Nardis」ですから、たまりません。いきなり一人舞台の独演で攻撃的なピアノソロを披露するビル・エバンスには怖いものさえ感じますが、さらにドラムスとベースを呼び込んでからのテーマ演奏の荒っぽさは、如何にもジャズのライブ! そこからマーク・ジョンソンが渾身のアドリブを演じる場面のカメラワークが、完全に「1970年代」しているのも、嬉しい限りです。
 こうして、いよいよ最大の見せ場というか、お待たせしましたっ! フィリー・ジョーのドラムソロには、一瞬も目が離せません! あぁ、あのリックは、こうして敲いていたのかっ! 2連のバスタムや追加されたトップシンバルを駆使しながら、独特のアクションと如何にも黒人らしいファッション♪♪~♪
 本当に、長生きはするもんですっ!

 05 Solar (incomplete)
 このトラックは、上記と同日の演奏で、ビル・エバンスのトリオにリー・コニッツ(as) が加わっていますが、残念ながら途中で終了……。しかもビル・エバンスのピアノソロが切られているような感じですし、マーク・ジョンソンのアドリブに入ってから、すぐにフェードアウトは勿体無い!
 リー・コニッツの何時もながらの十八番という、何を吹いているか分からないのに気持ちが良いアドリブが冴えているだけに、完全版の復刻に期待を残します。

☆1972年2月12日、ドイツでのスタジオリハーサル (約26分)
 06 Waltz For Dissention
 07 Stockenhagen
 08 What Is Thing Called Love ?
 09 Sao Paulo
 10 Northem Taril

 これがまた、驚愕の映像で、メンバーはビル・エバンス(p)、エディ・ゴメス(b)、マーティ・モレル(ds) という当時のレギュラートリオに、その頃は欧州で活動していたハーブ・ゲラー(as,fl) が加わった凄いバンド! どうやら翌々日に予定されていた特別コンサートのリハーサルらしいです。
 その所為でしょうか、緊張感とリラックスしたムードが有名ジャズメンの日常をも包括した興味深さで、咥え煙草のエディ・ゴメスとか、譜面ばっかり見ているマーティ・モレルとか、ジョークかマジか意味不明の打ち合わせとか!?!
 しかしハーブ・ゲラーの本気度は高く、久々にアメリカの超一流と共演出来る喜びだけとは言えないものを感じます。特に「What Is Thing Called Love ?」のアルトサックスは良いですねぇ~♪ フルートを聞かせる「Stockenhagen」は、ちょっと大野雄二のサントラ音源みたいで、これも素敵ですよ。
 ただし演奏は、その性質上、全てが完奏されているわけではありません。しかしメンバー各々の見せ場というか、アドリブはしっかりと披露されていますし、なによりもスタジオリハーサルという、一般のファンには普段見られないところが、カラー映像で楽しめるのは高得点でしょう。画質はフィルムの劣化により「-A」程度ですが、特に問題は無いと思います。

ということで、けっこう個人的には、たまらないブツでした。

演奏場面はもちろんのこと、例えば前半のパートではビル・エバンスがマーク・ジョンソンに落ちている譜面を拾ってあげたり、ちょっと悪いクスリの影響すら感じさせる演奏中の表情、さらに当時のステージならではの照明と映像の兼ね合いが日活ニューアクションしていたり!?! また後半のスタジオリハーサルでは、ハーブ・ゲラーの生真面目なところが、ファジーなビル・エバンスのトリオと絶妙に連携していく過程が、興味深々でした。

収録時間はトータル約54分ですが、なかなか密度の高い作品だと思います。

そして動くフィリー・ジョー♪♪~♪

サイケおやじは、それだけで満足しています。

コメント (2)
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