OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

忘れえぬデイヴ・メイソン

2009-06-15 12:00:20 | Rock

とどかぬ愛 / Dave Mason (Columbia / CBSソニー)

世の中には、何をやっても憎めない人が必ずいますけど、デイヴ・メイソンも私にとっては、そのひとりです。

その略歴では、何といっても大衆音楽史に残る名バンドのトラフィック創成期のレギュラーであり、優れた楽曲を発表しながら、同バンドのスタアだったスティーヴ・ウインウッドとソリが合わなかったのか、グループを出たり入ったりする問題児となりました。また独立してからはイギリス人でありながら、逸早くアメリカ南部の音楽性に根ざした所謂スワンプロックに目をつけた活動をしながら、結局はエリック・クラプトンの後塵を拝したり……。

中でもツイていないというか、エリック・クラプトンのキャリアでも一際輝かしい、あのデレク&ドミノスにしても、本来はデイヴ・メイソンがエリック・クラプトンに持ちかけた企画だったという真相もあると言われています。

しかし実際、バンドを立ち上げた直後にデイヴ・メイソンは自分のリーダーアルバムのプロモーションを優先させるようにレコード会社から要請され、デレク&ドミノスから脱退……。しかも、肝心の自分のアルバム発売を巡って、レコード会社間の契約訴訟問題に巻き込まれるという不運は、身から出たサビとばかりは一概に言えないものがあります。

つまり、きっと口下手だろうし、世渡も上手い人ではなかったのでは……。

ただしデイヴ・メイソンの音楽的な才能や資質は、やはり魅力です。

決して達人とは言えないギターの腕前にしても、実直に弾くという基本姿勢が私には好ましく、十八番の三連フレーズが出ると嬉しくなりますねぇ~♪ また作曲能力の高さも、なかなかサイケおやじにはジャストミートしています。

さて、本日ご紹介のシングル曲「とどかぬ愛 / Baby...Please」は、そんなゴタゴタの末に心機一転、レコード会社も移籍して1973年末に発売された魅惑の名曲♪♪~♪

幾分重い8ビートのドラムスに蠢くエレキベースをバックにしながら、イントロでのギターのリズムカッティングがイナタイ魅力ですし、もちろんリードを弾くエレキギターは泣きまくり♪♪~♪ さらに曲メロが実にキャッチーで覚え易く、ほとんどデレク&ドミノスの「愛しのレイラ」と「恋は悲しきもの」をミックスさせたといえば、全くそのとおりと納得される皆様が大勢いらっしゃると思います。

しかも歌詞の内容が、叶わぬ恋にベイビー、お願いだ……、なんてひたすらに片思いの情けなさも、いやはやなんともM男!?! 如何にもデイヴ・メイソンらしいと言えば、贔屓の引き倒しでしょうか、それでも私は好きです。

演奏にはチャック・レイニー(b) やラス・カンケル(ds) といった実力者も参加しているらしく、実際、ここでのシャープで力強いドラムスやマシンガンのようなベースのパッキングは圧巻! さらにジャケットにはステレオ仕様と記載されながら、実は限りなくモノラルに近いミックスは、当然ながら後に出されたアルバム「忘れえぬ人 / It's Like You Never Left (Columbia)」に収録のバージョンとは異なっています。

う~ん、それにしても「官能的なギターにのせて歌う、デイヴ・メイソンの“愛の叫び”…」なんていうジャケットに記された売り文句は、本当です♪♪~♪ 今では有名になった猫ジャケットも、良い感じ♪♪~♪

そして、その裏に掲載された解説文には、サイケおやじを愕然とさせる事実がありました。なんとデイヴ・メイソンは下積み時代に、トラフィックを結成する以前にスティーヴ・ウインウッドが既にスタアの地位を確立していたスペンサー・デイビス・グループのローディをやっていたんですねぇ。

ご存じのように、デイヴ・メイソンが在籍していた初期のトラフィックは、スティーヴ・ウインウッドが歌もギターもキーボードも、時には打楽器やベースまでも一人舞台で演じていたバンドでしたから、当然、実際のステージでもデイヴ・メイソンはギターソロを弾くことも許されず、また自分の作った歌が演奏されることも少なかったと言われていますが、なるほど、確かに全ての面でスティーヴ・ウインウッドの才能がデイヴ・メイソンを上回っていたのは認めざるを得ないにしても、こういう主従関係が尾を引いていたんですねぇ……。

そして、そのあたりを上手く解消していくことが、きっとデイヴ・メイソンには苦手だったのでしょう。だとすれば、サイケおやじには、ますます共感出来る部分が多々あります。

結論から言えば、このシングル曲も、また続けて発売された前述のアルバム「忘れえぬ人 / It's Like You Never Left」も、アメリカはもちろんのこと、我が国でも全くヒットしていません。

しかしデイヴ・メイソンは、やっぱり「忘れえぬ人」なんですねぇ。どうにかこうにか、1970年代後半になって中程度のブレイクがあり、アルバムやライブ活動もそれなりの成果を上げています。

現在はCDの再発状況も芳しく無く、やはり「忘れられた人」なのかもしれませんが、この曲あたりがCMで使われたりすると、再注目は間違いないかと思います。

コメント
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