■Alfie / Eivets Rednow (Gordy)
哀愁系楽器の筆頭といえば、私はハーモニカだと思います。その郷愁、琴線をダイレクトに刺激してくるような音色は、とても魅力的ですよねぇ。そして同時にダーティなファンキー味も表現出来るところから、ブルースやフォークにも使われることが多いわけですが、その世界ではリトル・ウォーターやジェームス・コットン、またロックではブライアン・ジョーンズやポール・バターフィールド、そしてジャズではトゥーツ・シールマンス、はたまたフュージョン期にはりー・オスカーという人気者も出現したほど、身近に凄い名人が大勢!
そして本日ご紹介のイーヴェッツ・レッドナウもそのひとりとして、私が最も好きなハーモニカ奏者です。
ん~、この人、だぁ~れ?
という疑問も今では有名! Eivets Rednow こそは Stevie Wonder の別名にして、業界では慣例という逆さ綴りでやってしまった、1968年の別プロジェクトによる企画盤というわけです。
事の発端は当時ヒットしていたバート・バカラック作曲による素敵なメロディ、「Alfie」をスティーヴィー・ワンダーがカバーすることになり、しかし、その何弱なメロディを歌うことに制作者側が反対したとか、あるいはスティーヴィー・ワンダー自身が他人のカバーをストレートに歌うことに難色を示したとか、諸説あるようですが、とにかく出来上がったのはスティーヴィー・ワンダーが幼少時代から得意としていたハーモニカによるインストバージョンでした。
そしてこれが、実にせつなく、胸キュンメロディの泣きバージョン♪♪~♪
まさに青春の情熱と哀しさが絶妙にミックスされた最高の仕上がりでしたから、会社側もこれをシングル盤として発売するのに吝かではなく、しかし当時は天才少年歌手からイメージチェンジを図っていたスティーヴィー・ワンダーの諸々の事情から、前述したような変名での発表となりましたが、もちろん結果は小ヒットに終わっています。
ところが、その魅力はやはり絶大というか、業界の評判も良かったところから、ついにはアルバム企画にまで発展し、そして出来上がったのが本日ご紹介の1枚というわけです。
A-1 Alfei
A-2 More Than A Dream
A-3 A House Is Not A Home
A-4 How Can You Believe
A-5 Never My Love ~ Ask The Lonly
B-1 Ruby
B-2 Which Way The Wind
B-3 Bye Bye World
B-4 Grazing In The Grass
全体の作りはスティーヴィー・ワンダー自らが演奏するハーモニカ、キーボード、そしてドラムスや打楽器をメインにしつつも、ゴージャスなオーケストラも配置された、まさにモータウンサウンドの秘密が解き明かされるような雰囲気で、実にたまりません。
そしてやっばりスティーヴィー・ワンダーのハーモニカの魅力は絶大です!
それは今日まで、数多くのヒット曲でも立派に実証されているとおり、独得の泣きメロフェイクとブレスの妙が、私の最も好むところでしたから、このアルバムの存在を知った時には本当にワクワクして即ゲット♪♪~♪ 連日連夜、聴きまくり、カセットにコピーして車の中でも鳴らしまくっていたほどです。
とにかく前述した「Alfei」の雰囲気の良さ、豪華絢爛なオーケストラをバックに、せつせつとメロディをフェイクしていくハーモニカは、まさに「スティーヴィー節」が全開です。
また続く「More Than A Dream」は、やはりメロディ展開やコード進行がモロに「スティーヴィー節」という、作者会心のオリジナル曲で、そのアップテンポの展開にシビレが止まらないほどです♪♪~♪ ボサロックのソウルジャズ的解釈が最高潮の中を、スティーヴィー・ワンダーのハーモニカが自在に歌いまくっていますよ。
さらに3曲目の「A House Is Not A Home」は哀愁どっぷり路線♪♪~♪ このメロディと雰囲気がダイレクトに、我が国の昭和40年代映画やテレビドラマの劇伴音源へ影響していたのがミエミエの素晴らしさ♪♪~♪ サイケおやじにとっては、まさに青春の一幕が蘇ってくるスローな名曲名演になっています。
あぁ、このA面ド頭からの3連発で、このアルバムの価値は絶大というわけですが、しかしこのアルバムにはハーモニカだけではなく、スティーヴィー・ワンダーのキーボードを前面に出した演奏も入っていて、その決定版が「Which Way The Wind」です。
これはもちろんスティーヴィー・ワンダーの作曲によるものですが、そのメロディ展開からアレンジの細部に至るまで、まるっきり昭和歌謡曲♪♪~♪ 完全に辺見マリが歌っても違和感が無いという素晴らしさ♪♪~♪ 本当に歌詞が付けられてパクられたに違いないと確信されるはずです。「へぇ、やめてぇ~」ってな感じ♪♪~♪
あぁ、もう書いていて泣けてくるほどです!
そういうアレンジの妙も、このアルバムでは大きな魅力になっていて、例えばソフトロックの代表選手だったアソシエィションのヒット曲「Never My Love」とモータウンのドル箱グループのフォートップのヒット曲「Ask The Lonly」を合体させたメドレーが、本当に心地良い限り♪♪~♪ もちろんスティーヴィー・ワンダーのハーモニカも歌って、泣いての名演を聞かせています。
そのインストパートには、もちろんアドリブもきちんとありますが、それがまた非常に明快というか、気持良いのです。
機会があれば聴いていただきたい、としか締め括りには書けませんが、個人的には愛聴盤♪♪~♪ 復刻CDも出ていると思います。