OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

カッコイイ、チャーリー・マリアーノ

2009-04-03 12:32:53 | Jazz

Charlie Mariano Plays (Bethlehem)

ジャズメンにはカッコイイ人が大勢いますが、ルックス&プレイが共にスマートでキマッているひとりが、チャーリー・マリアーノでしょう。一時は秋吉敏子と結婚していたことでも有名ですね。

もちろん白人ということで、ウエストコーストジャズの重要なアルトサックス奏者という位置付けも間違いではありませんが、チャーリー・マリアーノはボストン出身という、本来は東海岸派のプレイヤーですから、チャーリー・パーカーからの影響が隠しようもない、元祖ハードバップの人でもありますし、1960年代にはモードやサイケロック風味の新進気鋭も演じていましたですね。

つまり何時の時代も先端の演奏を心がけていた前向きな姿勢が、素晴らしい演奏を残してくれた原動力として、私は感謝するばかりです。そして本日ご紹介のアルバムは、ウエストコーストジャズ全盛期の記録して、実に秀逸な1枚ですが、結論から言えば、本来は10インチ盤として世に出ていた「Charlie Mariano Sextet (Bethlehem BCP1022)」を拡大12インチLPとして再発する時に、新録の演奏を加えているところから、2種類のバンドの個性が楽しめるというわけです。

その内訳は、まず前述の10インチ盤セッションの録音が1953年12月21日、メンバーはチャーリー・マリアーノ(as)、スチュ・ウィリアムソ(tp)、フランク・ロソリーノ(tb)、クロード・ウィリアムソン(p)、マックス・ベネット(b)、スタン・リーヴィー(ds) という素晴らしい6人組!

一方、追加されたセッションの録音は1955年7月11日、メンバーはチャーリー・マリアーノ(as,ts)、ジョン・ウィリアムス(p)、マックス・ベネット(b)、メル・ルイス(ds) という、こちらはワンホーンでのハードバップ的な魅力が楽しめます。

A-1 Chloe (1953年12月21日録音)
 シブイ歌物の隠れ名曲として、ボーカルバージョンが数多残されていますが、インストならば、これが名演! 
 ちょっと陰鬱な3管のアンサンブルから一転、溌剌としたメロディ展開には開放感がいっぱいという魔法がニクイところ♪♪~♪ もちろんアドリブ先発のチャーリー・マリアーノはスマートな歌心に直観的なドライブ感が冴えまくりですよ。フレーズの語尾を端折り気味にするところは好き嫌いがあるかもしれませんが、それが逆に鋭角的というか、如何にもカッコイイ白人ならではの感性だと思います。
 またハートウォームなスチュ・ウィリアムソン、爽快なフランク・ロソリーノ、スイングして止まらないクロード・ウィリアムソンという共演者達の熱演にも、短いながらスカッとさせられます。

A-2 You Go To My Head (1953年12月21日録音)
 これはいきなりアルバムのウリとなった、チャーリー・マリアーノがワンホーンの決定的な名演です。初っ端から良く知られたスタンダード曲のメロディを自在にフェイクし、それでいて原曲の味わいを一際輝かせるという、まさに歌心の匠の技♪♪~♪
 じっくり聴けば、そのフレーズは相当に幾何学的な細かい技の集合体だと思いますが、それを歌心に上手く変換したというか、このあたりがチャーリー・マリアーノの優れた個性じゃないでしょうか。
 スローなテンポをグイノリのビートで演じるリズム隊も、地味ながら見事です。

A-3 S' Nice (1953年12月21日録音)
 如何にもウエストコースジャズがど真ん中の颯爽とした快演! アップテンポで繰り広げられる華麗なるバンドアンサンブル、躍動的なリズム隊のグルーヴも意外ほどに太く、もちろん各人のアドリブは素晴らしい限りです。
 特にチャーリー・マリアーノのアルトサックスが、まさにチャーリー・パーカー直系のフレーズとノリ! そのストレートなジャズ魂は尊いとしか言えません。またモゴモゴしているようで実はスピード感がたまらないフランク・ロソリーノが、良い味だと思います。

A-4 Manteca (1955年7月11日録音)
 これは新たに加えられたカルテットの演奏で、曲はディジー・ガレスピーが書いたラテンジャズの聖典♪♪~♪ それをチャーリー・マリアーノがテナーサックスで図太く吹きまくっています。
 それはウエストコーストという先入観からすれば違和感もあるのですが、時代は既にハードバップが主流でしたから、これも「あり」だった思います。
 個人的には大好きなジョン・ウィリアムスのピアノも、力強いタッチでシャープなフレーズを弾いてくれますし、ドラムスとベースがビシバシで、なかなか痛快!

A-5 It's You Or No One (1955年7月11日録音)
 そしてこれまたスタンダード曲を素材にした大名演!
 チャーリー・マリアーノは、ここでもテナーサックスを吹いていますが、お馴染みのメロディを最初はベースとのデュオでフワフワと演じ、次いで快適なドラムスとベースを呼び込んでからは、もう素朴なフェイクと美メロのアドリブが桃源郷♪♪~♪
 如何にも白人らしいグルーヴが演奏全体に横溢し、弾むようなリズム隊の楽しい快演もありますから、このアルバムの中では一際素敵な仕上がりになっています。
 数多ある同曲のジャズバージョンでは十指に入るほどの出来だと思うのですが、いかがなもんでしょうか。ジョン・ウィリアムスのアドリブも出来すぎですよ♪♪~♪

B-1 Three Little Words (1953年12月21日録音)
 これも有名スタンダード曲のウエストコースト的な展開が、如何にもの快演になっています。とにかくアップテンポで一糸乱れぬバンドアンサンブル、爽やかにして痛快なアドリブの連発、さらに気持ち良すぎるリズム隊の飛び跳ねビート♪♪~♪
 ここではフランク・ロソリーノの高速スライドワークが冴えたトロンボーンが強烈ですよ。

B-2 Green Walls (1953年12月21日録音)
 チャーリー・マリアーノが書いた、ちょっと新主流派っぽい進歩的なオリジナル曲です。3管のアンサンブルやヘヴィなビートを叩き出すリズム隊を聴いていると、本当に1960年代のブルーノートを想起させられるんじゃないでしょうか。
 それはアドリブパートの雰囲気にも継続され、浮遊感が全面に出たチャーリー・マリアーノのアルトサックスが実に新しく、ちょいと迷い道の他のメンバーとは一線を隔した感じですねぇ。
 曲調としてはウェイン・ショーターとかグラチャン・モンカーあたりが出てきそうな……。

B-3 Give A Little Whistle (1955年7月11日録音)
 一転して、これは明るく楽しい演奏で、バンドメンバーの掛け声とか弾んだ4ビートが痛快ですから、溜飲が下がります。
 チャーリー・マリアーノはテナーサックスで真っ向勝負ながら、幾分ぎごちないところが結果オーライでしょうか。素直な歌心は、相当に良い感じだと思います、
 またジョン・ウィリアムスがホレス・シルバー調のシンコペーションをモロ出しにした伴奏とアドリブで、本当にたまりませんよ♪♪~♪ ドラムスとベースの楽しげなところも高得点だと思います。

B-4 I Should Care (1955年7月11日録音)
 チャーリー・マリアーノのアルトサックスが、せつせつと歌いあげるテーマ演奏だけで完全降伏です。素材はもちろんお馴染みのスタンダード曲とはいえ、テーマよりも素敵な美メロのフェイクが出たりします。
 あぁ、演奏時間の短さが、なんとも勿体ないかぎりです。

B-5 My Melancholy Baby (1953年12月21日録音)
 オーラスも胸キュン系スタンダードの楽しい演奏で、ここではフランク・ロソリーノが参加していない所為か、かなりストレートな仕上がりです。
 つまりチャーリー・マリアーノの快調なアドリブが全面的に冴えまくり! 無理を承知で比較すれば、アート・ペッパーのような「愁い」よりは、もっと「素直な泣き」というか、しかし決して「嘘泣き」ではない心情吐露が良い感じなんですねぇ~♪
 スチュ・ウィリアムソンのトランペットも同様に素直な歌心を追求していますし、リズム隊もストレートな4ビートに徹していますから、一足早いハードバップという雰囲気です。

ということで、異なるセッションを強引に抱き合わせたわりには、違和感の無い名演集だと思います。

ちなみに同時期のレコーディングとしては、ベツレヘムにもうひとつ残された名盤「Charlie Mariano」がワンホーンの決定的な名演ですから、どちらが好きかは十人十色ながら、個人的はこちらを聴くことが多いサイケおやじです。

シンプルな歌心が楽しい「It's You Or No One」が、本当に好きなんです♪♪~♪

ハードなイメージのジャケットも、チャーリー・マリアーノのカッコ良さにはジャストミートだと思います。

コメント
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