OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ニューヨークの秋はクリフォードの思い出

2009-04-14 12:45:53 | Jazz

Clifford Brown All Stars (EmArcy)


厳密に言えばクリフォード・ブラウンのリーダーセッションではありませんが、天才トランペッターの悲劇的な死後、残されていたスタジオジャムセッションから作られた、やはり人気盤のひとつだろうと思います。

録音は1954年8月11日、メンバーはクリフォード・ブラウン(tp)、ジョー・マイニ(as)、ハーブ・ゲラー(as)、ウォルター・ベントン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、カーティス・カウンス(b)、マックス・ローチ(ds) という、文字通りのオールスタアズ! ブラウン&ローチ以外の面々にしても、当時の西海岸ハードバップを支えていた熱き心の持ち主ばかりです。

A-1 Caravan
 デューク・エリントン楽団というよりも、これまで度々述べてきたように、私の世代ではエレキインストのベンチャーズが十八番のヒット曲として馴染んでいるのではないでしょうか?
 それゆえにアップテンポでその場を牽引していくマック・ローチのドラミングが、当然ながらベンチャーズではメル・テイラーが敲き出すビートと同じグルーヴを持っていることに快感を覚えてしまいます。
 それは演奏ド頭から炸裂するマックス・ローチの熱血ドラミング、それに続くテーマアンサンブルからホーン奏者各人のブレイク、そして突入していくアドリブパートの烈火の競い合いに繋がるのです。
 先発で飛び出すアルトサックスはジョー・マイニですが、チャーリー・パーカー直系のフレーズを用いながら、その鋭角的なアプローチの魅力は絶大! 続くウォルター・ペントンの些かタレ流し気味のテナーサックスも、今となってはエキサイティングでしょう。
 また次に熱演を披露するハーブ・ゲラーのアルトサックスは、猛烈なアップテンポを逆にリードするが如き勢いが素晴らしく、この人はチャーリー・パーカー以前のスタイルも薬籠中のフレーズに変換する名手として、やはり流石だと思います。
 そしてついに登場するのが、クリフォード・ブラウンというわけですが、この肩に力が入りまくった激演には溜飲が下がります。というよりも、些細なミスを恐れない突進と素晴らしい楽器コントロールには本当に熱くさせられますし、リズムへのアプローチがマックス・ローチと一心同体の潔さ! 自分の持ちパート全体の構成なんか、全くの後回し的な即興の醍醐味! これがハードバップだと痛感させられます。
 またケニー・ドリューの突進力、カーティス・カウンスの骨太ウォーキングも、まさに黒人ジャズの真髄でしょうねぇ~♪ ですから終盤でマックス・ローチが演じる、長い長いドラムソロも退屈しないで聴けるのかもしれません。つまりここまで続いてきたビートの快感が、全く損なわれていないんですねぇ。これは驚異的じゃないでしょうか。
 全体的には「その場しのぎ」の連続かもしれませんが、それだってジャズという瞬間芸の為せるワザというか、素直に楽しまないとバチがあたるような感じがしています。

B-1 Autumn In New York
 そしてこれが、クリフォード・ブラウンならではという畢生の名演♪♪~♪
 曲はお馴染み、一抹のせつなさ、そして哀感が滲むスローなスタンダード曲ですが、それにしても初っ端からテーマメロディを見事にフェイクしていくクリフォード・ブラウンのトランペットが最高すぎます! いきなりのベースとのデュオ、そして地味~に入ってくるドラムスのシブイ存在感、さらに的確な伴奏に務めるピアノの上手さ♪♪~♪
 演奏はそのまま、クリフォード・ブラウンの全てが「歌」というアドリブに繋がりますが、これを聴いてハッとさせられるのは、ベニー・ゴルソンがクリフォード・ブラウンの悲劇の死を悼んで作曲した「I Remember Clifford」の元ネタが、これかもしれないと思うことです。
 実際、この演奏が世に出たのはクリフォード・ブラウンの死後ですし、ベニー・ゴルソンが件の名曲を書いたのが何時頃の事かは判然としませんから、そんな推察は虚しいかもしれません。しかし「I Remember Clifford」の決定的なバージョンとなったリー・モーガンのブルーノート吹き込み「Vol.3」におけるアドリブフレーズの幾つかは、間違いなくこの演奏でクリフォード・ブラウンが聞かせてくれるものと共通しています。
 あぁ、本当に素晴らしいですねぇ~~~♪
 そしてスローな展開でありながらグイノリの力強いビートを提供するリズム隊がしぶとい存在感で、特にケニー・ドリューのアドリブが味わい深いです。それに触発されたサックス奏者各人も、神妙にして熱の入ったプレイですから、なかなかに感度良好でしょう。

ということで、片面1曲ずつという長時間演奏集ですが、特にB面の「Autumn In New York」は全く飽きることない名演だと思います。

あぁ、「I Remember Clifford」が聴きたくなってきました。

コメント
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