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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

マーシュ対チェンバース

2007-12-21 15:26:12 | Weblog

今年もあとわずかになりましたですね。フッと今頃、実感しています。というか、全然、年末という雰囲気に浸れないことが、もうずぅ~っ前から続いているのですが……。

ということで、本日は――

Warne Marsh (Atlantic)

ウォーン・マーシュは唯一無二の個性派テナーサックス奏者だと思います。

ご存知のようにレニー・トリスターノ(p) の門下生として、リー・コニッツ(as) と並び称されるクール派ですから、そのスタイルは時としてエキセントリックで難解ではありますが、一端、その虜になると、最後まで抜け出せない魅力があります。

それは白人らしく流麗なフレーズ展開とスカスカの音色が持ち味ながら、その元祖たるレスター・ヤングの影響が、あまり感じられません。全く独特の浮遊感に満ちたアドリブが、歌心というよりは異次元の閃き♪ そういうところはスタイルこそ違いますが、ウェイン・ショーターと一脈通じるのではないでしょうか。

さて、このアルバムは師匠のレニー・トリスターノが監修したワンホーン盤で、当時最先端の黒人ジャズ=ハードバップの人気ベース奏者だったポール・チェンバースを全面的に起用した傑作盤!

バンド編成は2つに分かれており、ウォーン・マーシュ(ts) 以下、まず1957年12月12日のセッションにはロニー・ボール(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) が参加♪ また1958年1月16日にはポール・チェンバース(b) とポール・モチアン(ds) がサポートしています――

A-1 Too Close For Comfort (1957年12月12日録音)
 寛いだ曲調のスタンダードですから、白人系モダンジャズにはもってこいの素材ですが、ここではポール・チェンバースとフィリー・ジョーのグルーヴィなリズムコンビが本領発揮!
 まずグワァ~ンというイントロからポール・チェンバースがテーマメロディを巧みに変奏する熱演となり、続けてウォーン・マーシュが絡みながらアドリブに入れば、バックではフィリー・ジョーが独特のクッションを活かしたドラミングを聞かせてくれます。ポール・チェンバースの4ビートウォーキングも最高♪
 そしてウォーン・マーシュは何を吹いているか、ちょっと理解不能なところもありますが、これは原曲メロディを知っていれば、その異次元飛翔が痛快に思えるはずです。
 ところが残念ながら、盛り上がったところでフェードアウトが勿体無い!

A-2 Yardbird Suite (1958年1月16日録音)
 チャーリー・パーカーが書いたにしてはリラックスしたテーマが楽しいビバップの名曲で、ウォーン・マーシュ独自のアドリブ感覚が存分に楽しめます。
 ここではドラマーがポール・モチアンに交代していますが、ポール・チェンバースの強靭なウォーキングがリズムとビートをリードしていますから、演奏は早いテンポでもグルーヴィなジャズ本来の魅力に満ちています。
 いゃぁ~、本筋を離れて浮遊していくウォーン・マーシュ! 最高ですねぇ♪

A-3 It's All Right With Me (1957年12月12日録音)
 コール・ポーターが書いた、これも楽しいジャズの見本という名曲ですから、フィリー・ジョーの素晴らしいシンバルワークとスネアのコンビネーションに煽られてフワフワと吹きまくるウォーン・マーシュに歓喜悶絶させられます。
 全く芯が無いような音色とアドリブ展開は、本当に異端だと思いますが、決してモダンジャズの本質から離れていないと思います。むしろ自由な発想と頑固な思い込みがあってこその輝きというか、一瞬の煌きがフラッシュバックしていくようなフレーズの積み重ねは、確実に中毒症状♪ 文字通り「私は満足」です。
 そしてもちろんフィリー・ジョーが魂の快演で、十八番の釘打ちリムショットや独自のタイミングで炸裂させるバスドラとスネアのコンビネーションが、たまりません。ポール・チェンバースのアルコソロの背後で暴れる4ビートやクライマックスでのウォーン・マーシュとの対決も、スリル満点なのでした。

B-1 My Melancholy Baby (1958年1月16日録音)
 これも和み系スタンダード曲を素材にしたウォーン・マーシュだけの名演だと思います。それは自在に飛翔するフレーズの面白さ、変幻自在のリズム感と音色のコントロールが、凄いんですねぇ。
 尤もそれが破綻していないのは、ポール・チェンバースの強烈な存在があってこそで、力強いベースソロも聞き逃せないところでしょう。本当に最高のピチカットソロです♪
 終盤ではポール・モチアンも含めて、トリオによる暗黙の了解という演奏が見事だと思います。

B-2 Just Squeeze Me (1958年1月16日録音)
 デューク・エリントンが書いた有名曲ですから、ウォーン・マーシュもリスナーがオリジナルメロディを知っているという前提で吹奏しているのでしょうか……?
 そういう、ちょっと突き放した演奏姿勢が、所謂トリスターノ派の長短所だと思うのですが、それがここでは良い方向に作用していると感じます。
 なにしろポール・チェンバースのウォーキングが基本に忠実ながらも奥深く、やや卑小に暴れるポール・モチアンまでもがスジを通したドラミングに聞こえるほどですから、ウォーン・マーシュも忌憚の無いところを披露しているのでしょうねぇ~♪
 聴くほどに地獄へ引き込まれるような恐い演奏ですが、スバリ快感!
 
B-3 Excerpt (1958年1月16日録音)
 これだけがウォーン・マーシュのオリジナル曲で、多分、原曲は「四月の思い出」でしょう。それをトリスターノ派だけのスリルとスピードでアドリブしていくという、全くの「お約束」がたまりません。
 もちろんウォーン・マーシュは意味不明のフレーズを自在に飛翔させ、独自の美学で積み重ねていきますが、実はポール・チェンバースのウォーキングベースにばかり耳を奪われる私です。
 するとますますウォーン・マーシュのテナーサックスが気持ち良く聞こえてくるんですねぇ~~~♪ ところが、この曲もまたブツ切れというか、盛り上がったところで突如終了……。あぁ、完全版が聴きたいと願っているのでした。

ということで、このアルバムの魅力の一端は、明らかにポール・チェンバースの活躍でしょう。

ところがアトランティック特有のプレス&盤質の悪さから、アナログ盤ではイマイチ、音質に満足出来ません。ちなみに私有盤はモノラル仕様のアメリカプレスながら、盤質というか、素材の塩ビの悪さがモロに影響したようなシュワシュワな音……。

しかし近年のCDはステレオバージョンですが、それが解消されており、各楽器の分離と定位は右と左に泣き別れながらも、クッキリとしたリマスターですから、演奏そのものの凄さに素直に感銘出来るはずです。

特にポール・チェンバースのベースワークは最高! モノラルミックスのCD化を熱望しております。

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ホレス・パーラン謎の快演

2007-12-20 16:40:16 | Weblog

年金はデタラメ、薬害被害者は救えない、さらにガソリン&物価がガンガン上がっても、何の手も打たない我国政府&全政治家に対し、これで暴動を起こさない国民は神様じゃないか!?

いや、ぬるいだけなのか!?

憤りはあるはずで、と言って、自分だけが殴りこんでも笑い者です。

全く煮え切らない、最近の気分ですよ……。

ということで、本日は――

Happy Frame Of Mind / Horace Parlan (Blue Note)
  

名門ブルーノートには、カタログ番号やジャケットデザインまでも決まっていながら、発売されなかったアルバムが幾つかあって、本日の1枚もそのひとつです。

最初に世に出たのは、1970年代中頃に発売されたブッカー・アーヴィンの2枚組未発表曲集「バック・フロム・ザ・ギグ(画像右)」の中のA&B面でした。

尤も当時の私は、そういう経緯は知らなくて、件のブッカー・アーヴィン盤を聴いて、忽ち虜になったわけですが、それにしてもこんな良い演奏がオクラ入りしていた裏事情にも興味深々でしたねぇ。なにしろホレス・パーランは、このアルバムセッションから後、1973年頃まで公式のレコーディングが途絶えているのですから!!! なにか人間関係とかビジネスのトラブルでもあったのでしょうか……?

そしてこのアルバムが単体としてオリジナルに近い形で発売されたのは、1980年代に入ってからだと思います。

録音は1963年2月15日、メンバーはジョニー・コールズ(tp)、ブッカー・アーヴィン(ts)、ホレス・パーラン(p)、グラント・グリーン(g)、ブッチ・ウォーレン(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、聴く前からワクワクしてくる面々です。

 ちなみにコールズ、アーヴィン、そしてパーランの3人はチャールズ・ミンガスのバンドレギュラーとしてブルーノートに乗り込んだ感じでしょうか。それを迎え撃つのがグリーン、ウォーレンにビリー・ヒギンズという、この時期ならではのブルーノートお抱えリズム隊という、味わいの深さです――

A-1 Home Is Africa
 重厚なリズムパターンでブッチ・ウォーレンのベースが蠢くイントロの恐さ! そしてアフリカ色のモード節というテーマ演奏が、熱い予感に溢れています。
 ただし曲は一応ブルースなので、全員の心意気はクールなエモーションで統一され、ジョニー・コールズがマイルス・デイビス系の好演を聞かせれば、ブッカー・アーヴィンはちょいと下品な持ち味を存分に発揮しています。
 粘っこいビートを強調するリズム隊では、ビリー・ヒギンズのドラミングが歯切れ良く跳ねまくり♪ グラント・グリーンのオズオズとしたアドリブソロも、十八番の針飛びフレーズを使って憎めません。
 そしてホレス・パーランが黒いファンキー節! 粘っこい音の使い方とホーン陣のリフが絡み合い、その場はグリグリに熱くなっていくのでした。

A-2 A Tune For Richard
 これまたビリー・ヒギンズの弾けたドラミングが痛快なハードバップ♪ スピード感満点のテーマ合奏からジョニー・コールズが絶好調のアドリブに雪崩込んでいくあたりも、最高です。
 さらにブッカー・アーヴィンが、これでもかという豪快なテナーサックスの乱れ打ち! 下品ギリギリのフレーズと音色が、確実にジャズ者の心を掴んでいきます。続くグラント・グリーンも本音を吐露した熱演で、本当にグッときますねぇ♪
 そしてホレス・パーランが十八番の変態ゴスペル節を炸裂させるのです。ビシバシにキメまくるビリー・ヒギンズのドラミングにもゾクゾクします♪ この2人のコンビネーションを裏から支えるブッチ・ウォーレンの地道な活躍も聞き逃せません。
 あぁ、何度聴いても、痛快です!

A-3 Back From The Gig
 穏やかなメロディとビリー・ヒギンズのブラシが冴えたテーマ合奏が、実に良い雰囲気です。作曲は意外にもホレス・パーランなのも、ちょっと吃驚ですが、作者自身のアドリブは何時に無く軽快な雰囲気で、ハービー・ハンコックのような♪ 厚みのあるハーモニーを聞かせるブロックコード弾きが最高です。
 さらにグラント・グリーンの歌心満点のギターソロ、ブッカー・アーヴィンの気楽なブローが味わい深く、ブッチ・ウォーレンのベースソロさえも、ビリー・ヒギンズのブラシがありますから、楽しさに満ちているのでした。
 こういうライトタッチのホレス・パーランも、捨てがたい魅力がありますねぇ♪

B-1 Dexi
 短いテーマ合奏からジョニー・コールズの擬似マイルス・デイビスというアドリブがスタート! しかしリズム隊の刺激的な働きがありますから、単なるモード地獄に陥っていません。シャープでスピード感に満ちた演奏には、まさに当時リアルタイムの空気が感じられます。
 それはブッカー・アーヴィンの熱に浮かされて彷徨うテナーサックス、執拗に粘っこいホレス・パーランの情念弾き、そしてグラント・グリーンのテキパキとしたギターに伝染して、名演を作り出していくのでした。

B-2 Kucheza Blues
 ワルツタイムというか、6/8 ビートのブルースですから、ここでもリズム隊の弾ける快演がたまりません。特にアドリブ先発でガンガンに行くホレス・パーランが最高です! 手と指のハンデを逆に活かした情念のブロックコード弾きが、実に個性的で魅力ありますねぇ♪
 するとブッカー・アーヴィンも負けじと豪快なブロー! ジョニー・コールズもクールで熱いアドリブで応戦しています。ビリー・ヒギンズも最高のドラミングで、もはやジャズロックもロック・ジャズも関係無い楽しさが横溢していくのでした。

B-3 Happy Frame Of Mind
 スマートな感覚の中にもファンキーなブルース♪ まず快適なビートと調子が良いテンポを作り出すリズム隊に乾杯です。
 そしてアドリブ先発で飛び出すグラント・グリーンが大名演♪ 続くホレス・パーランも気負わずにスイングした感があり、同時に脂っこさもあって、たまりません。
 またブッカー・アーヴィンが、またまた熱っぽい快演! あぁ、この人の持ち味とはいえ、こういうアクの強さが嫌味になっていないのは、ブルーノートの特質なんでしょうか?
 さらにジョニー・コールズがビリー・ヒギンズと一騎打ちを聞かせるクライマックスは、何時しかビリー・ヒギンズの一人舞台になるという演出も、本当に素敵です。

ということで、ちょっと何時ものホレス・パーランに比べると軽い演奏に聞こえるかもしれませんが、得意のドロドロした情念から一歩踏み出したような潔い意気込みがあって、私は最初に聴いた瞬間から愛聴盤にしています。

ジョニー・コールズとビリー・ヒギンズの好演も特筆もの!

もちろん最初は、前述したブッカー・アーヴィンの2枚組アルバムで聴いていたわけですが、如何にもというジャケットデザインの単品アルバムも入手♪ それはCDなんですが、車の中でも聴ける幸せに浸っています。

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サド・ジョーンズの鳩

2007-12-19 17:14:15 | Weblog

昨日は就職関連のイベントに出張し、百人ほどの美女がヒナ壇に勢揃いする現場に参加するという幸運がありました。

しかし彼女達の髪型が???で、全然、髪の毛のカットが揃っていなくて、ボサボサと……。もちろん流行だってのは分かっていますが、ひとりならともかく百人近くも集っていると、う~ん、なんだかなぁ……。

ということで、本日は――

The Magnificent Thad Jones (Blue Note)

サド・ジョーンズはカウント・ベイシー楽団で名を売ったトランペッターで、後年は自分でもオーケストラを持つので、どうしてもビッグバンドの人と思われがちですが、小編成のバンドでも味わい深い演奏を聞かせてくれます。

そのスタイルはハードバップというよりはソフトバップで、丁寧に和みのフレーズを綴る温か味が魅力でしょうか。ただしカウント・ベイシー楽団では、時としてトンパチなアドリブをやったり、作編曲にも秀でていたところから、考えすぎた演奏に陥る時もあるようです。つまり、それは天才の証なのかもしれません。

さて、このアルバムは前述したようにカウント・ベイシー楽団での活躍で注目されはじめた時期のリーダー盤で、ブルーノートと契約しての2枚目となります。

録音は1956年7月14日、メンバーはサド・ジョーンズ(tp)、ビリー・ミッチェル(ts)、バリー・ハリス(p)、パーシー・ヒース(b)、マックス・ローチ(ds) という素晴らしすぎる人選です――

A-1 April In Paris / パリの4月
 これぞ、カウント・ベイシー楽団でサド・ジョーンズが人気を集めるきっかけとなった曲のコンポバージョンというべき演奏です。
 グッと重心の低いリズム隊のビートは黒っぽく、よりテンポを落とした演奏は、サド・ジョーンズの丁寧なテーマメロディの吹奏で、こちらも大変に魅力的♪ しかもサド・ジョーンズのアドリブは、カウント・ベイシー楽団で当りをとった、あのフレーズと同じく始るのですから、たまりません♪ 全体としては、やや不安定なんですが、この一撃で許してしまいます。
 さらにマックス・ローチのヘヴィなブラシとか、リズム隊の凄さにも、聴くほどに感銘するのでした。

A-2 Billie-Doo
 サド・ジョーンズのオリジナルで、朴訥として粘っこいハードバップのブルースで、ここでもリズム隊が実に良い雰囲気です。
 そしてサド・ジョーンズの柔らかいブルースフィーリングが、少しずつ熱くなっていく伝統的な展開が、快感! 微熱があるような音色のトランペットが、たまりませんねぇ~♪
 またビリー・ミッチェルもソフトな黒っぽさで迫ってきます。たっぷりとしたファンキー感覚やタフテナー系のキメが最高! ちなみにサド・ジョーンズとビリー・ミッチェルは駆け出し時代から一緒にバンドを組んでいたらしく、カウント・ベイシー楽団でも1950年代末頃から共に在団していた時期もありました。

A-3 If I Love Again
 クリフォード・ブラウン&マックス・ローチのバンドでは十八番でしたから、これは勇気ある挑戦! そして見事に結果を出しています。
 まず快適な4ビートを敲き出すマックス・ローチの押えたドラミング、歌心の真髄を聴かせるバリー・ハリスの超快演が素晴らしく、それだけでシビれます♪
 ちなみに当時のバリー・ハリスは、デトロイトで活躍していたところをサド・ジョーンズに誘われ、特にニューヨークへ出て来てのセッションだったとか!! 隠れ名手の本領発揮ですねぇ♪
 そしてビリー・ミッチェルがソフトな音色でファンキーを演じた後、いよいよサド・ジョーンズが登場し、気負う事なく絶妙の味わいを聞かせてくれます。フレーズを重ねる度に熱くなっていくサド・ジョーンズ、それに合わせて白熱化するマックス・ローチのドラミング! 気の利いたアレンジも良いですねぇ~。
 ちなみにクリフォード・ブラウンが夭逝したのは、このセッションの3週間前でしたから、マックス・ローチ以下、バンドメンバーも胸に去来する様々な想いがあったのかもしれません。

B-1 If Someone Had Told Me
 あまり有名ではない歌物スタンダードですが、サド・ジョーンズは朴訥として朗々とテーマメロディを歌い上げ、バリー・ハリスが最高の伴奏をつけたスローな演奏になっています。
 あぁ、実に素晴らしいです!
 途中から入ってくるマックス・ローチのシンバル、そしてパーシー・ヒースのベースは、共に強いビートが持っていますが、嫌味になっていません。そしてサド・ジョーンズは、優しく、力強く演奏を発展させ、会心の名演を披露していくのでした。

B-2 Thedia
 オーラスはサド・ジョーンズのオリジナルで、これまた和みのハードバップですから、まずはビリー・ミッチェルが本領発揮のソフトファンキー♪ するとバリー・ハリスはマイルドな歌心で酔わせてくれます。トミー・フラナガンあたりが好きな人には、絶対のオススメですよ。
 肝心のサド・ジョーンズは中間派っぽいフレーズ展開にモダンなノリという、些かトンパチなところもありますが、総じて個性的で、元祖伝承派という楽しいアドリブを聞かせてくれます。

ということで、派手さはありませんが、ガイド本には登場する事も多い名盤です。ジャズ喫茶よりは自宅で聴いて味わい深い仕上がりかと思います。

特に私は「If Someone Had Told Me」が大好きですし、全篇でのバリー・ハリスの隠れ名演とか、聞き飽きないですねぇ♪

アルバムタイトルは「荘厳なサド・ジョーンズ」ですが、マニアの間では「鳩」と呼ばれる、愛すべき作品ですから、一度は楽しんで下さいませ。

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今日は・・

2007-12-18 15:06:19 | Weblog

早朝から急な出張で、バタついています。

申し訳なくも、本日の1枚は休載で、ご理解願います。

なんとか今日中に帰りたいのですがねぇ……。

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最初っからMJQ

2007-12-17 14:46:36 | Weblog

すっかりデタラメを露呈した国民年金は、ようやく今日からカッコつけの尻拭いが始るようですが、長い間、テキトーな仕事をやってきた社会保険庁の役人達には、処分が下るんでしょうか?

悪党面の厚生大臣が、鬼の首をとったように発言していますが、肝心の社会保険庁の当事者達に対する断罪に、全く触れていないのは、???ですね。

ということで、本日は――

Modern Jazz Quartet (Savoy / 東芝)

モダンジャズ・カルテット=MJQは、ディジー・ガレスピー楽団のリズム隊が独立して結成されたらしいのですが、その初期にはメンバーが流動的でしたし、レコーディングだって必ずしもMJQ名義ばかりではありませんでした。

このアルバムは、そんな彼等の初期の演奏を集めたオムニバス盤で、収録曲は本来、MJQ名義ではありません。

しかも一応はオリジナルとされるアメリカプレスのサボイ盤は、全12曲を独自の編集でAB面に振り分けてあるので、アナログ盤時代はセッション毎に聴きたいという欲求があると、些か厄介でした。

ところが1970年代に我国の東芝EMIから再発されたLPは、そのあたりの事情が考慮されたのか、オリジナル盤とは異なるセッション毎の編集にされていました――

1951年8月24日録音
 A-1 Milt Meets Sid
 A-2 D & E
 A-3 Yesterdays
 A-4 Between The Devil And The Deep Blue Sea

 厳密に言えばMJQではなく、ミルト・ジャクソン・カルテットとしてのセッションで、ディジー・ガレスピーのレーベルだった「Dee Gee」から発売された音源です。
 メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、レイ・ブラウン(b)、ケニー・クラーク(ds) という、本当に夢のような顔合わせ! バンドとしての纏まりも最高です。
 特に「D & E」は後々までMJQにとっては十八番となるブルース曲ですが、ここでは既にしてグルーヴィなハードバップ色が強く、ヒバップから一歩抜け出した演奏が見事です。またスローな歌物解釈を聞かせる「Yesterdays」では、バラード名人のミルト・ジャクソンが流石であり、快適なテンポの「Between The Devil And The Deep Blue Sea」は和み優先ですが、いずれもレイ・ブラウンの名人芸というベースワークが目立ちます。
 しかしジョン・ルイスが、実はしっかりと手綱を締めている感じもありますから、これはもうMJQといって過言ではないと思います。もちろんビバップ色が強い「Milt Meets Sid」ではケニー・クラークが奮闘していますし、ミルト・ジャクソンも凄いです!

1951年9月18日録音
 A-5 Autumn Breeze
 A-6 Moving Nicely
 B-1 Round About Midnight
 B-2 Bluesology

 これも「Dee Gee」に吹き込まれたセッションで、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、アル・ジョーンズ(ds) となっていますが、発売された時の名義はミルト・ジャクソン・カルテットでした。
 しかし一聴して全体の演奏は、ますますMJQに近くなっていると感じます。特にミルト・ジャクソンが書いた「Autumn Breeze」のしっとりした演奏は絶品♪ 歌心あふれるヴァイブラフォンが素晴らしく、また寄り添うジョン・ルイスのコードワークもシンプルで嫌味がありません。また「Moving Nicely」はテーマアンサンブルからしてMJQそのものです。
 ただし「Bluesology」は、あくまでもミルト・ジャクソンのブルースになっていて、途中でちらりと「Bag's Groove」のテーマメロディが出るのもご愛嬌♪ 「Round About Midnight」は、ちょいと素直すぎます。

1952年4月録音
 B-3 Softly As In A Morning Sunrise
 B-4 Love Me Pretty Baby
 B-5 Heart And Soul
 B-6 True Blues

 このセッションは、やはりマイナーレーベルの「Hi-Lo」に吹き込まれたもので、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、ケニー・クラーク(ds) という、良く知られたオリジナルのMJQになっていますが、ここでも本来の発売名義はミルト・ジャクソン・カルテットでした。
 そして何と言っても興味深いのが、後に決定的な名演が残される「Softly As In A Morning Sunrise」の初期バージョンでしょう。その1955年にプレスティッジに吹き込まれた名演バージョンは、バロックと欧州カラーに染上げられて印象的でしたが、ここでもイントロに「チゴイネルワイゼン」のようなメロディを使う凝りようです♪ 当然、ミルト・ジャクソンやジョン・ルイスのアドリブ展開は完成されていますよ。
 また「Heart And Soul」はテーマからアドリブまで美メロの宝庫♪ ミルト・ジャクソンの天才性にジョン・ルイスが彩りを添え、強靭なベースとドラムスが後押しした名演だと思います。
 さらにハードボイルドな「Love Me Pretty Baby」、軽いブルースの「True Blues」でもミルト・ジャクソンは絶好調なのでした。

ということで、元々はSPやEP向けの短い演奏ばかりなので、それなりにプログラムしたアメリカ盤のアルバムより、曲単位で楽しみたい私は、セッション毎に纏まった日本盤を買ってしまったのです。

まあ、当然ながら、アメリカ盤の方が良い音なんでしょうが、何時かはCDも欲しい名演ばかりです。

そして人工着色したようなジャケットが、如何にもサボイらしいところだと思います。

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ジョン・ウィリアムスに夢中

2007-12-16 14:59:56 | Weblog

お昼に某宴会に出かけたら、来賓として中央から役人が招かれていました。う~ん、どうしてあんなに偉そうにしていられるのか、質問したくなりましたねぇ……。

ということで、本日は口直しの1枚を――

The John Williams Trio (EmArcy / Mercury)

ジョン・ウィリアムスは1950年代前半にスタン・ゲッツ(ts) のバンドレギュラーとして活躍した白人ピアニストで、その他にもフィル・ウッズ(as) やズート・シムズ(ts) のアルバムとか、聴けばすぐにそれと分かるスタイルで活躍した隠れた人気者でしょう。

それはホレス・シルバーの如き強烈なコンピング、全く独特な和み系の歌心が絶妙な、唯一無二の個性派であって、虜になると抜け出せない魅力があります。

しかも全盛期の活動期間が1953年から1956年頃までに限られていたので、尚更に思い入れが強くなるのですねぇ。で、このアルバムはその時期に残された貴重なリーダー盤!

録音は1955年6月15&24日と10月11日に別れており、メンバーはジョン・ウィリアムス(p)、フランク・イソラ(ds)、6月のセッションでは15日にビル・アンソニー(b)、24日にチャック・アンドラス(b) が、10月のセッションではアーニー・ファーロウ(b) が参加しています――

A-1 Baubles, Bangles And Beads (1955年10月11日録音)
A-2 Shiloh (1955年6月15日録音)
A-3 Good Morning Heartache (1955年10月11日録音)
A-4 Flamingo (1955年6月15日録音)
A-5 A Sleeping Bee (1955年6月15日録音)
A-6 How Strange (1955年6月24日録音)
B-1 Manteca (1955年10月11日録音)
B-2 Someday My Prince Will Come (1955年10月11日録音)
B-3 Like Someone In Love (1955年6月15日録音)
B-4 Good Morning Blues (1955年6月15日録音)
B-5 Okeefenokee Holiday (1955年6月15日録音)
B-6 The Girl Next Door (1955年6月15日録音)

――という演目は、録音年月日やメンバーが一部が変わろうとも、基本的にはジョン・ウィリアムスの個性で統一されています。まず、一番「らしい」躍動的な演奏はB面に多く、ラテンビートを強引に4ビートに持っていく「Manteca」、意表をついた解釈で唸らせる「Someday My Prince Will Come」は痛快! フランク・イソラの叩きつけるようなドラミングも大好きです。また「The Girl Next Door」でも、あのテキパキとした独特のノリが楽しめるのです。

しかし、さらに良いのがA面収録の「Baubles, Bangles And Beads」や「A Sleeping Bee」におけるソフトで情感豊かな歌心の凝縮で、特に後者は何度聞いてもシビレます♪

またスローな演奏では「Good Morning Heartache」が素晴らしく、シミジミとして爽快なメロディの膨らませ方は絶品です。

他にも全てが捨て曲なしの名演集だと思うのですが、ちょっと1回聴いただけではピンッとこないところもあるでしょう。しかしジョン・ウィリアムスの個性に最初っから虜になっているファンならば、納得の愛聴盤になるのは間違いありません。

ちなみにジョン・ウィリアムスは1957年頃にジャズ界を去り、政治家に転身したそうです。そして近年はカムバックしたと言われておりますが……。

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キャノンボールの心機一転

2007-12-15 17:02:06 | Weblog

昨夜の忘年会のガラポン大会では、自分で出した商品を当ててしまうという大ボケを演じて、顰蹙でした。もちろん再提出したのですが……。これは幹事の失態だと、ひとりで言い訳する他はないところです。

ということで、本日は――

Portrait Of Cannonball / Julian Adderley (Riverside)

キャノンボール・アダレイがリバーサイドに移籍しての第一弾アルバム! ニューヨークに出てきてから紆余曲折、鮮烈の業界デビューから自己のバンドを率いての活動も頓挫した後だけに、心機一転の意気込みが見事な秀作だと思います。

録音は1958年7月1日、メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ブルー・ミッチェル(tp)、ビル・エバンス(p)、サム・ジョーンズ(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、迎える会社側もオールスタアを用意しての厚遇でした――

A-1 Minority
 イントロからフィリー・ジョーが激情のシンバル、ビル・エバンスが不安感を煽るようなコードワークを提示する中、キャノンボール・アダレイは我道を行くという豪快なウネリ! そしてバンドが一丸となった痛快なテーマの合奏が、まず最高です。低音域が団子状になった迫力の録音も良いですねぇ~~♪
 アドリブパートでも先発のキャノンボール・アダレイが腹の底から鋭いエモーションの爆発というような展開で、本当にたまりません。もう、どうにもとまならない!
 続くブルー・ミッチェルは、やや押された雰囲気ですが、ビル・エバンスが鋭いツッコミからアドリブに突入すれば、その場には異次元ハードバップが現出します。サム・ジョーンズ&フィリー・ジョーとのコンビネーションも決してミスマッチでは無く、実際、翌年にはこの3人がトリオとして「Everybody Digs (Riverside)」という名盤を作り出し、そこでもこの曲を演じているのですからっ!
 そしてクライマックスはキャノンボール対フィリー・ジョーの一騎打ちが見事に大興奮で、特にフィリー・ジョーは独特のクッションが最高!!! ビシッとキメのスネアにドッシーンと炸裂するバスドラの醍醐味は、全く痛快至極なのでした。

A-2 Straight Life
 キャノンボールが書いたシミジミ系の歌物バラードで、まずブルー・ミッチェルのトランペットとキャノンボール・アダレイのアルトサックスがそれぞれにリードするテーマ部分からして、魅せられてしまいます。特にキャノンボール・アダレイは大袈裟に近い吹奏ですが、これこそ持ち味なんでしょうねぇ。全く憎めません。
 そしてもちろん、ビル・エバンスがディープな歌心で、うっとりさせれてしまいますよ。

A-3 Blue Funk
 サム・ジョーンズが書いた文字通りのファンキー曲♪ 強靭なベースワークを聞かせるイントロから、このメンバーならではの真っ黒な演奏が始ります。グルーヴィなリズム隊では、ビル・エバンスが決してミスマッチではなく、むしろ奥深いハーモニーをつけていると感じます。
 ですからキャノンボール・アダレイも思いっきりウネッて熱いブローに撤し、ブルー・ミッチェルは楽しさ追求モードですし、フィリー・ジョーのオールドタイミーなクッションとか、これがハードバップですねぇ~~♪
 そして気になるビル・エバンスが、摩訶不思議なファンキーピアノで、実に爽快♪ この時期は既にマイルス・デイビスのバンドレギュラーだったはずで、キャノンボール・アダレイやフィリー・ジョーとも共演していたわけですから、さもありなんです。

B-1 A Little Taste
 キャノンボール・アダレイが初リーダーセッションから演じていた自慢のオリジナル曲ですから、ここでもアップテンポで痛快にブッ飛ばしています。あぁ、こんなにイキイキとしたアルトサックスは唯一無二の素晴らしさ♪ なんの屈託もない魅力に溢れています。
 さらにブルー・ミッチェルが明るく楽しいフレーズを連発したノリで本領を発揮すれば、ビル・エバンスが、これまた良い! フィリー・ジョーの暴れっぷりも本当に痛快ですし、スティックとブラシの使い分けも気が利いています。
 本当に何時までも聴いていたいですねぇ~~♪

B-2 People Will Say We'er In Love
 このアルバム中、唯一のスタンダード曲を、キャノンボール・アダレイはちょっぴり甘く吹いてくれます。そしてここでも、ビシッとしたクッションと強いビートで煽るフィリー・ジョーが実に痛快で、キャノンボール・アダレイも、ついつい熱血してしまったというアドリブが素晴らしい限り! 歌心も満点です。
 するとブルー・ミッチェルが十八番のスタンダード解釈と申しましょうか、オリジナルのメロディを独特の展開で分かり易く膨らませていくアドリブが素敵です。
 そしてもちろん、ビル・エバンスには昇天させられますよっ♪ 一瞬、何を弾いているのか迷い道になるあたりもニクイところでしょう。
 しかし何と言っても、ここではフィリー・ジョーでしょうねぇ~~♪ クライマックスのソロチェンジはもちろん、全篇で最高のドラミングをたっぶりと聞かせてくれるのでした。うん、最高っ!

B-3 Nardis
 オーラスはあまりにも有名なモード系の名曲で、これまでの流れから豪快なハードバップになっていると思いきや、全く神妙なテーマ吹奏から、煮え切らないビートのタダならない雰囲気……。
 ビル・エバンスの使うコードの深い響きとか、厳かなテーマの合奏は、キャノンボール・アダレイのアドリブにも影を落としたような感じです。う~ん、今にもマイルス・デイビスが出てきそうな……。
 しかし実際はブルー・ミッチェルが、案外にキマッたソロを聞かせてくれるますから、これで良いんでしょう。
 そしてビル・エバンスが、全く「らしい」アドリブに撤して、流石というか、当然なんでしょうねぇ。ここまでくるとフィリー・ジョーのドラミングが、完全にミスマッチのオカズを入れたして……。あぁ、煮え切らないなぁ。

ということで、オーラスの「Nardis」だけが、些か???なんですが、その他は痛快なハードバップ! 「Nardis」だって、この流れの外では秀逸な演奏でしょう。

特にフィリー・ジョーの豪快なドラミングは最高で、本当に熱くさせられます。

メンバーだけ見るとミスマッチな気がする、所謂「聴かず嫌い」盤かもしれませんが、これもまた「聴かずに死ねるか」の1枚だと思います。

ちなみにジャケ写のキャノンボール・アダレイは、頭から湯気!? 実はタバコの煙なんでしょうが、スタジオ内の熱気がそうさせた雰囲気なのでした。

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どーってこと、ないよ

2007-12-14 15:50:27 | Weblog

今日は忘年会! 若い頃はそれなりに楽しみにしていたものですが、今となっては……。決意表明として、芸はしないぞっ!

体質的に酒に酔わないので、喰うことに専念しよう!

ということで、本日は――

Yardbird Suite / Herbie Mann (Savoy)

ハービー・マンと言うと、あの祭囃子みたいな笛と太鼓! そう、思わず連想してしまう皆様も多いでしょうか? いや、それは私だけかもしれませんね。チャカポコリズムにピーヒャラはしゃいだ楽しい演奏は、それだけで充分に価値があると思います。

しかしハービー・マンの本質は優れたジャズ演奏家であり、最も知られたフルート奏者に違いありません。

このアルバムは純粋にモダンジャズに打ち込んでいた当時を伝える素晴らしい1枚で、録音は1957年5月14日、メンバーはハービー・マン(fl,ts)、フィル・ウッズ(as)、エディ・コスタ(vib,p)、ジョー・ピューマ(g)、ウエンデル・マーシャル(b)、ボビー・ドナルドソン(ds) という、些かシブイ顔ぶれです――

A-1 Yardbird Suite
 モダンジャズの神様=チャーリー・パーカーが自分の代名詞っぽく書いた名曲で、妙な親しみやすさがあるので、私は大好き♪ それをハービー・マンは力強い中にも白人らしいスマートな感覚で演奏してくれます。
 全く正統派のフルートの妙技に続いては、エディ・コスタの硬質なヴァイブラフォンが良く歌い、フィル・ウッズは見事にチャーリー・パーカーの代役を務めます。ジョー・ピューマのギターも味わい深く、快適なビートを送り出してくるドラムスとベースも存在感があって、文句なしの名演だと思うのですが……。
 何かが、足りない……。そう思うのも、また素直な気持ちかもしれません。

A-2 Here's That Mann
 エディ・コスタがハービー・マンに捧げて書いたモダンジャズ曲で、フィル・ウッズのアルトサックスとハービー・マンのテナーサックスが、絶妙のコントラストを聴かせてくれます。
 もちろんフィル・ヴッズは烈しくドライブしまくって火傷しそうなアドリブに専念しますが、ハービー・マンは如何にもというレスター派の滑らかなスタイルにハードバップ味を混ぜ込んだ、些か不器用なものを聞かせてしまいます。
 そして間に入って奮闘しているのが、エディ・コスタのヴァイブラフォンというわけでした。

A-3 One For Tubby
 ジョー・ピューマが書いたクールでスマートなオリジナル曲ですから、エディ・コスタのヴァイブラフォンが良い感じ♪ ジョー・ピューマのギターも基本に忠実なコードワークで嫌味無く、このあたりは白人系ジャズの真骨頂かもしれません。
 それゆえにフィル・ウッズがちょいと煮えきらず、ハービー・マンも存在感が薄いという???の仕上がり……。ほとんどエディ・コスタのリーダーセッションかと思うほどです。

B-1 Squire's Parlor
 これはフィル・ウッズの有名なオリジナル曲ですが、ここでは和み感覚を優先させた穏やかなテンポで、スマートに演奏されています。
 ハービー・マンのフルートは、可もなし不可もなし……。しかしエディ・コスタのヴァイブラフォンが素晴らしい快演ですし、フィル・ウッズも派手さを押えたアドリブで、味わい深いところでした.

B-2 Who Knew
 またまたハービー・マンがテナーサックスに持ち替え、フィル・ウッズと協調性の高い演奏を聞かせてくれます。ただし全体的には白人系の色合が強いので、芒洋とした雰囲気で……。まあ、それをブッ飛ばすのがフィル・ウッズの激情アルトサックスという仕掛けなんですが! う~ん、このウネリと熱き心は最高ですねぇ~♪
 またエディ・コスタがここでも快演ヴァイブラフォン! 本当にこの日は絶好調だったんですねぇ~~~♪ ジョー・ピューマのゴマカシの無いギターにも好感が持てます。

B-3 Opicana
 再びジョー・ピューマのオリジナル曲で、モロに白人系のシャープでスマートな演奏ですから、ハービー・マンもようやく本領発揮♪ 地味なフレーズで歌心を表現していくところが、かえって潔い感じです。
 そしてフィル・ウッズは何時もの調子で、ちょっと吹きすぎのようにも思いますが、結果オーライでしょうねぇ。エディ・コスタのヴァイブラフォンとジョー・ピューマのギターによる絡みも、なかなか味わい深いと思います。

ということで、完全にどーってことのないアルバムなんですが、時折、猛烈に聴きたくなるんですねぇ~、私は! なんでだろう? と自問自答しても、答えは出ないのですが……。

「サボイ」特有の、妙にキッチュなジャケットデザインも憎めません。

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やっぱり素敵だ、マイルスのライブ箱

2007-12-13 14:23:00 | Weblog

今年の一字は「偽」と決まったのは、情け無いかぎりでした。いっそ、こんななら行事は止めて欲しいと思ったのは、私だけでしょうか?

ということで、本日は昨日に引き続き、マイルス・デイビスのライブ箱から、「Disc 4」をご紹介致します――

The Complete Live Recordings 1956 - 1957:Disc 4 / Miles Davis (united archives)
 

1957年12月8日、アムステルダムでの放送録音
 01 Bag's Groove
 02 Woody'n You
 03 What's New
 04 But Not For Me
 05 A Night In Tunisia
 06 Four / The Theme
 07 Walkin'
 08 Well, You Needn't
 09 Round About Midnight
 10 Lady Bird / The Theme

 当時のマイルス音源では、比較的有名なブート物の再録で、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、Barey Wilen、Rene Urterger(p)、Pierre Michelot(b)、ケニー・クラーク(ds) ですから、痛快なハードバップは、お約束♪ 演目も全てがちょっと古い十八番ばっかりということは、時期的にマイルス・デイビスが最後の純粋ハードバップに興じた瞬間かもしれません。
 とにかく全曲がクールで熱いマイルス節の連続ですし、バルネ・ウィランが、これまた熱血の名演を披露しています。詳しくはここをご一読下さい。
 気になる音質は、もちろん古めかしいものですが、これまで出たブツよりも明らかにメリハリの効いたリマスターが秀逸です。曲順が一部変わっているところからして、今までよりもジェネレーションの高いテープを使ったのかもしれません。ハードバップの愛好者には充分納得出来ると思います。

1957年12月18日、放送音源
 11 Yesterdays
 12 Walkin'
 13 Round About Midnight

 放送用の特別編成によるマイルス・デイビスの一人舞台! 共演者は Horst Jankowski(p)、Peter Whtte(b)、Herman Nuchtler(ds)、それに Erwin Lehn Orchestra となっています。
 演奏は全て短いものですが、マイルス・デイビスのアドリブは、もはや即興とは言えないほどに「お約束」のフレーズばかりで、つまり自分自身の「良いとこどり」に撤していますから、グッときます。
 特に「Walkin'」はカッコイイ! オーケストラのアレンジもバッチリですから、フェードアウトが勿体無いかぎりですねぇ~。
 また「Round About Midnight」は、そのあたりが究極というか、マイルス・デイビスのアドリブは書き譜のような完成度ですし、それは「Yesterdays」でも同様なので、意想外の本質が楽しめるのでした。
 音質も良好なので、わかっちゃいるけど止められない感じです。

ということで、「Disc 4」は安定感のある演奏ばかりですから、マイルス・デイビスの最も「らしい」部分が楽しめます。特に前半のクインテットでのライブは、良いですねぇ~~~♪

ボックスそのものの値段も安いほうですから、この際、一気にマイルス・デイビスをっ! と目論んで入手するのもOK♪ これだけ同時期の演奏を通して聴けるだけで、幸せを感じます。

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今日も凄いよ、マイルスのライブ箱

2007-12-12 17:03:57 | Weblog

今日は昼飯食ったら、急に頭痛かしてきて……。なんか毒入れられたのか? なんて思ったほどでした。まあ、1時間ほどで治りましたが、なんだかなぁ。

ということで、本日も昨日に引き続き、マイルス・デイビスのライブ箱から、「Disc 3」をご紹介致します――

The Complete Live Recordings 1956 - 1957:Disc 3 / Miles Davis (united archives)
 

1957年7月20日、ニューヨークからの放送録音
 01 Dear Old Stockholm
 02 Bag's Groove
 「Disc 2」からの続きというか、「カフェ・ボヘミア」における翌週の演奏で、メンバーは同じくマイルス・デイビス(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という超強力なクインテット!
 もちろんエアチェックですから、音質はそれなりですが、演奏はハードバップ全盛期の勢いで、まず「Dear Old Stockholm」はマイルス・デイビスが十八番のミュートで素晴らしい歌心♪ ポール・チェンバースのブンブンベースによるアドリブソロ、リズム隊の完璧なサポートもテンションが高く、ソニー・ロリンズは調子が出ていないように思いますが、やはり自在に飛翔するフレーズ展開には唖然とします。
 また「Bag's Groove」はミディアムテンポにおけるバンドのグルーヴが物凄く、マイルス・デイビスの何時もながらのクールなアドリブには、ゾクゾクしてきます。残念ながらソニー・ロリンズが登場したところでフェードアウトしてしまうのですが、なかなか味わい深い演奏だと思います。

1957年7月27日、ニューヨークからの放送録音
 03 Bye Bye Blackbird
 04 Tune Up

 これも「カフェ・ボへミア」から1週間後の演奏で、もちろん素晴らしいクインテットによる快演が聴かれます。音質も前セッションより少し良い感じですし、なによりもマイルス・デイビスが「Bye Bye Blackbird」で絶品のアドリブ♪ ソニー・ロリンズも豪快に歌いつつ、強烈なウネリと悠々自適のノリでその場を圧倒的します。もちろんリズム隊も完璧ですから、こんなクインテットを聴けた当時のファンが羨ましいですねぇ~~。まあ、それをこうして聴ける我々も幸せなわけですが♪ 演奏は残念ながら8分半ほどでフェードアウトですが、レッド・ガーランドのリラックスした好演も含めて、必聴だと思います。
 そして「Tune Up」が、これまた凄く、ソニー・ロリンズの強烈極まりないアドリブから始まり、3分弱でフェードアウトなんですが、リズム隊のキメも豪快な演奏で、貴重な記録でしょう。

1957年10月17日、ニューヨークからの放送録音
 05 All Of Me
 06 Four
 こちらは「バードランド」からの演奏で、メンバーはマイルス・デイビス(tp) 以下、ボビー・ジャスパー(ts)、トミー・フラナガン(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、なかなか興味深い編成です。
 特筆すべきはリズム隊の動きが自由自在というか、ちょっと新しい雰囲気で、それに煽られたマイルス・デイビスが「All Of Me」では、かなりツッコミの烈しいアドリブを聴かせてくれます。
 気になるトミー・フラナガンは、やっぱり素晴らしく、ボビー・ジャスパーはズート・シムズとハンク・モブレーの中間という良い味出しまくり♪ 音質も普通に聴けるレベルですから、実にノセられてしまいます。
 そして「Four」はフィリー・ジョーの激烈ドラミングが冴える名演なんですが、録音状態がイマイチゆえに勿体ない……。アップテンポでワルノリ気味とはいえ、熱いマイルス・デイビスが楽しめます。う~ん、フェードアウトが……。

1957年11月30日、フランスでの放送録音
 07 Bag's Groove
 08 Tune Up
 09 Four
 10 Walkin'
 11 No More
 前年に続いて訪れた欧州巡業には現地調達のリズム隊が好サポート♪ これが純粋ハードバップで素晴らしいです。
 メンバーはマイルス・デイビス(tp)、Barey Wilen、Rene Urterger(p)、Pierre Michelot(b)、ケニー・クラーク(ds) ですから、これは劇伴を担当した「死刑台のエレベーター」からの美しき流れなんですぇ~♪
 まず「Bag's Groove」ではマイルス・デイビスが十八番のクールなブルースリックを大放出すれば、リズム隊も実にグルーヴに付き合っています。
 全体には、ちょいと古いビバップっぽい選曲なんですが、演奏のキモは明らかにハードバップの黒さとクールな味わいが横溢しています。もちろん Barey Wilen も好演で、時折、露骨なソニー・ロリンズの物真似に走ったりしますが、憎めません。
 気になる音質は如何にもエアチェックという感じで、チューニングがズレたれりもしますが、総じて良好なマスタリングになっていますから、当時のジャズに理解があれば楽しめるはずです。

ということで、ここも全て既発音源ばかりですが、最近では入手困難になっていた部分もありますので、こうして纏めて聴けるのはありがたいところでしょう。

なによりも1957年中頃のマイルス・デイビスが、営業用とはいえ、凄いバンドを率いていた実態が楽しめるのでした。

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