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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジャケットの稚気と中身の名演

2007-12-28 16:36:38 | Weblog

本日で何とか業務は終了出来たものの、今夜は忘年会とか宴会に顔も出さねばならないし、年末いっぱいは、仕事の延長と決まりました……。

あぁ、ゆっくり休みたいですねぇ。

ということで、本日は――

Hank Mobley Quintet featuring Sonny Clark (Blue Note / 東芝)
  

1980年代からの新伝承派プーム、4ビートリバイバルによる新人類ジャズメンの活躍は、必ずしも好きな事ばかりではありませんでしたが、それをきっかけに過去の遺産が発掘されたのは、嬉しい出来事でした。

特に名門ブルーノートの本格的な復活に伴い、それまでジワジワと進められていた未発表曲集の発売が、ディープに加速したのは最高で、本日のアルバムもそのひとつです。

ところが、まず日本優先で発売された時のジャケットが、なんとハンク・モブレーが1957年4月に吹き込んだ傑作盤「Hank(画像右)」のパロディになっていたのは、憎めない誤算というか、私なんか店頭で現物を見た瞬間、前述したアルバムの再発かと思い込んでしまったほどです。

ところが、しばらくしてジャズ喫茶でこれを聴かされた瞬間、思わず絶句! あまりの素晴らしさに完全KOされ、慌ててレコード屋へ走ったというわけです。

ちなみに発売されたのは1984年でしたが、録音は1957年8月18日、メンバーはケニー・ドーハム(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ソニー・クラーク(p)、ジミー・ロウサー(b)、アート・テイラー(ds) というハードバップのお手本のようなバンドです――

A-1 Don't Get Too Hip
 ミディアムテンポでグルーヴィなブルースなんですが、まずイントロから雰囲気満点というソニー・クラークのピアノが最高! テンションの高いテーマ合奏の背後から執拗に絡みついてくるソニー・クラーク! もうこの瞬間だけで、このアルバムは間違い無いと確信してしまいます。
 もちろんアドリブパートでのソニー・クラークもファンキー&グルーヴィンで筆舌に尽くし難く、粘っこくて琴線に触れまくるフレーズの連発が、当にハードバップの魅力全開♪
 またケニー・ドーハムが落ち着いた出だしから、例のイブシ銀の音色とフレーズを出し惜しみせず、アート・テイラーのビシッとキメるシブイ煽りと共犯関係の好演を聞かせてくれます。
 そしてハンク・モブレーが唯一無二のタメとモタレの芸術で、じっくりとアドリブを醸成させていく名人芸です。決して派手さは無いのですが、一度、この魅力にとりつかれると、たまらない瞬間の連続となるのでした。
 あぁ、こんな凄い演奏がオクラ入りしていたリアルタイムの充実度には、感銘するしかありませんねっ!

A-2 Curtain Call
 如何にもハンク・モブレーというアップテンポのオリジナル曲で、テーマメロディもアドリブも、些か手癖と言われればそれまでなんですが、モブレーマニアにとっては至福の連続です♪ ソフトな音色でパワフルに歌いまくるハンク・モブレーは最高!
 またケニー・ドーハムも大ハッスルで、止まらないフレーズの連続技を聞かせてくれますし、アート・テイラーのドラミングも豪快ですねぇ~~♪
 そしてお目当てのソニー・クラークが小気味良い快演、と書きたいところなんですが、実は正直、ちょいと物足りない雰囲気もあります。しかし、これで良しと思わせられるのは、ブルーノートの魔法でしょうか。 

A-3 Deep In A Dream
 ケニー・ドーハムが抜け、ハンク・モブレーが中心となった歌物バラードの演奏で、ソフトな情感が素晴らしいと思います。ただし、やや緊張感が足りない雰囲気も……。
 まあ、このあたりがハンク・モブレーの持ち味かもしれませんが、バックのリズム隊もソツが無く、ソニー・クラークも地味な歌心に撤しているようです。

B-1 The Mobe
 ちょっと軽めの演奏ですが、ハンク・モブレーが書いたテーマは凝ったアレンジもあって、なかなかの佳曲だと思います。
 なによりもアドリブに入って十八番のフレーズを吹きまくるハンク・モブレーが最高で、このあたりは自作の強みを完全に活かしている感じです。バックで煽るリズム隊も好調ですねぇ♪
 もちろんケニー・ドーハムも素晴らしく、かすれ気味の音色が大いに魅力ですし、ピタッとキマるフレーズの妙とか独自の安定感が楽しめます。
 そしてソニー・クラークが随所にファンキーなキメを入れまくった名演で、快適なテンポの中でも決して流されない個性が見事だと思います。
 クライマックスで繰り広げられるモブレー&ドーハムの掛け合いも、本当に息が合ったところ♪ スルリとラストテーマに入っていくのですから、流石です。

B-2 My Reverie
 ドビッシーの名曲をジャズに焼き直したハードバップの快作になっていますが、ここでの主役は完全にケニー・ドーハムでしょう。温か味のあるテーマの吹奏から和みのアドリブ、ほどよい黒っぽさと緊張感、さらにモダンジャズのスリルを徹頭徹尾、演じているのです。
 ケニー・クラークとハンク・モブレーも自己を見失わない好演ですが、ここはケニー・ドーパムの一人舞台♪ ラストテーマの吹奏も素直で素晴らしいと思います。
 
B-3 On The Bright Side
 オーラスは溌剌として哀愁も漂うバードバップで、作曲はもちろんハンク・モブレーですから、お約束の名演が続出します。
 まずケニー・ドーハムのイブシ銀が、これでもかと楽しめますし、流麗なフレーズ展開に酔わされた後に登場するソニー・クラークのテンションの高さも特筆物でしょう。小粋なピアノタッチと黒いスイング感、仄かにマイナーなフレーズの妙は、全くソニー・クラークだけの魅力として、いつまでも輝くのです。
 そしてハンク・モブレーの歌心の素晴らしさ♪ マイルドなノリを刺激しまくるアート・テイラーのドラミングも強烈で、本当にハードバップ最良の瞬間が楽しめるのでした。

ということで、とにかくド頭の「Don't Get Too Hip」が極みの名演! 特にソニー・クラークが素晴らしすぎます。アルバム裏ジャケットのタイトルに、わざわざ「featuring Sonny Clark」と特記したのも、ムベなるかな! もうこの曲だけで、このアルバムの価値があると断じてしまいます。後の「クール・ストラッティン」に確かに通じる味わいが深いんですねぇ~~♪

またケニー・ドーハムの溌剌としてシブイ雰囲気、十八番に撤するハンク・モブレーの潔さも最高で、これがハードバップの楽しさという魅力満点のアルバムです。

コメント (2)
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