■Polk Salad Annie / Tony Joe White (Monument / テイチク)
もしもエルヴィス・プレスリーが、この曲をやってくれなかったら、サイケおやじは本家トニー・ジョー・ホワイトに出会うことも無かったでしょう。
それほどエルヴィス・プレスリーがライプ映画「エルヴィス・オン・ステージ」で演じた「Polk Salad Annie」は強烈な印象を与えてくれたわけですが、そうして聴いたトニー・ジョー・ホワイトの、これまた激ヤバなフィーリングも侮れませんでした。
なにしろ基本はエレキギターの弾き語りでありながら、まず刻まれるビートのエグ味が絶対的ですし、しぶといリズムギターに鋭いオカズを絡ませる遣り口は、実は後に黒人ブルース演奏の常套手段のひとつと知る事になるのですが、未だそれに接した事の無かった純情少年のサイケおやじにとっては、何かCCRのジョン・フォガティーが十八番のギターワークに近いものを感じていました。
つまり、たまらなくスワンプなロック!?
さらにトニー・ジョー・ホワイトの歌いっぷりが、ボソボソの呟き系であり、そうした節回しはエルヴィス・プレスリーのバージョンで馴染んでいたとはいえ、そこまでのディープな声質ではないトニー・ジョー・ホワイトにとっては、それもまた自作自演の強みというところでしょうか……。
明らかにエルヴィス・プレスリーが作者本人の味わいを大切していた事が知れるのです!?
あぁ~、トニー・ジョー・ホワイト! 恐るべしっ!
そして以降、サイケおやじの気になる存在となったトニー・ジョー・ホワイトは、アメリカ南部のルイジアナ州出身で、またまたこれも後に知ったわけですが、そこで幼少時から親しんでいた音楽こそがルーツとなれば、前述したギターの弾き語りにおける要点が黒人ブルースマンからの影響というか、コピーであった事も当然が必然だったと思われます。
ということは、これまた前述したジョン・フォガティーが実は南部には一度も行った事が無いのに、歌やギターワークが極めて深南部化したのも、レコード等々で接したであろう同系黒人ブルースマンからの影響と憧れであって、つまりはトニー・ジョー・ホワイトが更にリアルなフィーリングを出せたのも当たり前だったのでしょう。
う~ん、例によって回りくどい屁理屈を積み重ねているサイケおやじの稚拙な文章力では、このあたりを上手く説明出来ません。
しかし些か確信犯となりますが、とにかく聴いていただければ、この「Polk Salad Annie」のスワンプロック&ブルースフォークな味わいは、極めて黒っぽい世界を狙いながらも、実質的には白人ロッカーでなければ表現不可とも思える洒落た感覚が滲んでいるように思います。
そうしたスマートなフィーリングがあればこそ、本質的にはドロドロに泥臭い歌と演奏が後年大ブームとなるスワンプロックの先駆けと評価される事も無いでしょう。
ちなみにアメリカでヒットしたのは1969年の夏であり、掲載シングル盤の日本発売が1972年ですから、その間にエルヴィス・プレスリーのライプ映画「エルヴィス・オン・ステージ」が我国で封切公開があったというわけです。
それと当時の我国は歌謡フォークブームの真っ只中であり、勢いに乗じて所謂アングラ系のフォークシンガーも表舞台に登場していた事から、彼等が十八番のスタイルであったギターを弾き、首からホルダーで吊るしたハーモニカーを吹きつつ歌うというパフォーマンスはお馴染みになったんですが、このトニー・ジョー・ホワイトもそれは同じでありながら、エレキを持っていたところがサイケおやじにも共感が大!
しかも呟き系のボーカルなぁ~んて書きましたが、実はトニー・ジョー・ホワイトの声質は意外にもドスを効かせた男っぽい世界が一方にあり、またギターにはワウワウやファズ等々を微妙に使った裏ワザがニクイばかりに用いられている点も要注意かと思います。
ということで、決して派手な人気のないトニー・ジョー・ホワイトではありますが、虜になったら抜け出せないミュージシャンのひとりでしょう。
シンガーソングライターとしての認識よりは、むしろ業界では有能な作曲家としての評価が一般的と言われているようですし、その反面、ライプの現場での固定的なファン層の存在も無視出来ないという、なかなかの幸せ者なのかもしれませんねぇ、この人は。
そのあたりはついては、何れまた書きたいと思います。