OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ドナルド・ダック・ダンがシビれさせてくれたビート

2012-05-15 15:30:56 | Soul

ピートにしびれて / Booler T. & MG's (Stax / 日本グラモフォン)

昨日報じられたドナルド・ダック・ダンの訃報には、流石に驚きました……。

なにしろ来日巡業中、東京のホテル内客室での事らしく、全ての公演を終えて帰国直前だったというのですから、やりきれません。死因は発表されていないようですが、今回のステージライプに接した友人からの情報では、かなり体調が苦しかったようで、椅子に腰かけながらのペースプレイだったそうです。

う~ん、故人の責任感の強さというべきなんでしょうか……。

今は衷心よりご冥福を祈るばかりなんですが、最近はサイケおやじが少年時代から好きだったミュージャン、俳優、スポーツ選手、作家等々の訃報が毎月のように報じられ、時の流れの諸行無常を痛感させられております。

で、サイケおやじがドナルド・ダック・ダンを最初に意識したのが、本日掲載したシングル盤A面曲「ピートにしびれて / Hip Hug-Her」で、演じているのはジャケ写に登場している黒人キーボード奏者のブッカーTが率いるMGs でした。

それが昭和44(1968)年頃の事で、楽曲そのものはアメリカで2年ほど前にヒットしていたそうですが、サイケおやじが初めてこれを聴いたのは、従姉に連れられて行ったボーリング場のジュークボックスでした。

あぁ~、この強烈なピート感は、なにっ、これっ!?!

ご存じのとおり、当時のジュークボックスは殊更重低音が強調された音響であった事も幸いしていたんでしょうが、ブッカーT(org)、スティーヴ・クロッパー(g)、ドナルド・ダック・ダン(b)、アル・ジャクソン(ds) という4人組がやってくれた、ずっしり重いピートのインストには、邦題どおりにシビれさせられましたですねぇ~♪ その体験は今も鮮烈な記憶です。

尤も、そういうMGs のメンバー構成を知るのは後の事ですし、またこのグループがオーティス・レディングやカーラ・トーマス等々の所謂スタックス系R&Bのバックを担当していたなんて事は、未だ知る由もありません。

ただ、この「ピートにしびれて / Hip Hug-Her」がサイケおやじを魅了した最大の要因が、ズンズンズンのペースプレイであった事は間違いありません。おそらくはファズを使っていたのかもしれませんが、こんなにヘヴィ&シンプルでありながら、所謂モダンなフィーリングをやっているなんて!?

そう感じてしまえば、追々に聴いていく南部ソウル系の楽曲の多くが、前述したスタックス制作であれば、必ずやドナルド・ダック・ダンのペースが鳴り響いている事に目覚めたのです。

ちなみに「ピートにしびれて / Hip Hug-Her」は、なにもドナルド・ダック・ダンだけが突出しているわけではなく、MGs の4人がそれぞれポリリズムで絡みあうが如き集団ソウルビート演奏を展開するところに最高の素晴らしさが生まれていると思いますし、それこそがMGs の人気と実力の秘密として、この他にも数多くのレコーディングとヒット曲を残せたのでしょう。

そして何よりも白人でありながら、これが本物のブラックミュージックという印象を作り上げた貢献度において、ドナルド・ダック・ダンは永遠に不滅だと思います。

また、それゆえにソウルフルな音楽性を求める歌手やミュージャンからの共演要望も多く、そこではベースプレイばかりか、現場での音楽監督やプロデュースもやっていたのですから、まさに縁の下の力持ち!

おそらくは自己名義のレコードは出していないと思われますが、それでも洋楽にちょっとでも興味を抱いているならば、それと意識しなくとも、ドナルド・ダック・ダンのペースを聞いたことの無い人はいないでしょう。

ということで、あまりにも突然の客死とはいえ、同じメンフィス出身の盟友たるスティーヴ・クロッパーと最後の巡業ライプを共演し終え、そこから天国へと旅立ったドナルド・ダック・ダンの生涯には、何か運命的なものを感じてしまいます。

そして、これはあまり言いたくありませんが、そこには既に到着している多くの仲間がいるわけですから、この世にあった以上のソウルグルーヴを響かせているものと思います。

ドナルド・ダック・ダン、安らかに、そして永遠なれ!

シビれさせくれたビートは決して忘れません!

コメント (2)
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