OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

アイズリー・ブラザーズ生涯の1枚

2011-05-19 16:40:10 | Soul

■Live It Up / The Isley Brothers (T-Neck / CBS)

アイズリー・ブラザーズが1974年に出した傑作人気アルバムで、それは「ジ・アイズリーズ・ライプ」と「3+3」によって目覚めたサイケおやじにとっては、初めてのリアルタイム盤だったんですが、案の定、我国ではヒットしていません。

というか、当時はアイズリー・ブラザーズのようなニューソウルでもハードロックでもない中途半端な存在は、レコード会社や洋楽マスコミでも扱いにくかったようで、特に目立ったプロモーションは無かったと思います。

しかし内容は、自意識過剰とも受け取られかねない頑固さと流行に対する敏感な反応が上手くミックスされた、実に美味しい歌と演奏がテンコ盛り♪♪~♪

 A-1 Live It Up (part 1 & 2)
 A-2 Brown Eyed Girl
 A-3 Need A Little Taste Of Love
 A-4 Lover's Eve
 B-1 Midnight Sky
(part 1 & 2)
 B-2 Hollo It's Me
 B-3 Ain't I Been Good To You
(part 1 & 2)

まず冒頭、強いビートでうねりまくるクラヴィネットのコンビネーションは、完全にスティーヴィー・ワンダーの「迷信」から強い影響を受けている事は否定出来ないわけですが、これが最高の気持良さ♪♪~♪

と言うか、シンプルなファンクビートと粘っこいボーカル&コーラスが黒い熱気を醸し出し、さらにはジミヘン直系のブラックロックなギターが泣きまくるという展開は、これでシビれなければバチアタリでしょう。

こうした歌と演奏は前作「3+3」で確立されたオケーリー、ルドルフ、ロナルドの年長組ボーカル隊とアーニー(g,ds)、マービン(b) の弟2人に従兄弟のクリス・ジャスパー(key) を加えたインスト組の6人が一体となって作られたもので、特にアーニー・アイズリーはド派手なギターばかりでなく、潔いまでにファンキー&シンプルなドラムスを担当していることが、結果オーライだと思います。

つまり、こうしたファンク物は単調なビートの繰り返しの中に様々なアクセントやイントネーションを表現していく事で生成されていくスリルとサスペンスが面白いわけですから、あまり変則的なオカズ過多はお呼びじゃない!?

このあたりをつまらないと言い張るのがジャズ愛好者だろうと思いますが、それじゃ電化期のマイルス・デイビスやジェームス・ブラウンは、どうなんですかぁ~~?

まあ、そんな生意気な質問には答える義務や義理も感じなくて当然ではありますが、基本的にファンクビート中毒者のサイケおやじは、もう、この一発でイチコロでしたねぇ~♪

しかも執拗なファンク攻撃が延々と続いた直後に潔く入っていくメロウソウルの「Brown Eyed Girl」が、最高にたまらない世界ですよ♪♪~♪

このあたりは硬軟自在にソウルフルな歌いっぷりを完全披露するロナルド・アイズリーの真骨頂ですし、意外と生音主体の演奏パートも侮れず、こうしたコントラスの妙がアルバムの流れと雰囲気を作っていく十八番の目論見が、早くもここで成功したというわけです。

そして再びギターが暴れ、クラヴィネットがリードする「Need A Little Taste Of Love」から甘いフュージョンソウルな「Lover's Eve」へと続く展開は、結論から言えばB面への露払いでしょうが、ドゥービー・ブラザース調の前者に美メロが心に染みわたる後者という構成は、後に白人ミュージシャンがブルーアイドソウルの発展形として表現するAORへの最短距離かもしれません。

ですから、このアルバムの真価を収めたB面の素晴らしさは、何度聴いてもアイズリー・ブラザーズのファンで良かったと思う他はありません。

それはファンキーフュージョン&ソウルの決定版「Midnight Sky」で早くも実感され、前半のソフト&メローな展開が後半では強烈なゴスペルファンクに変貌するという物凄さっ! 正直言って、同じ曲とは思えないほどですよっ!

もちろん、その中では強烈なギターバトルをひとり数役で演じてしまうアーニー・アイズリーの大奮闘が眩いばかりですし、年長組の熱血ボーカルも最高の極みでしょう。

ちなみにここでのイカシたリズムギターのカッティングはサイケおやじが最も好むところで、当然ながらレコードに合わせて練習を重ねた日々が確かにありましたが、当時はこんな事をやっていると周囲からは奇異の目で見られていましたですねぇ……。

しかし、この強烈な盛り上がりが自然終息した次の瞬間、スパっと繋がるのがご存じ、トッド・ラングレンが畢生の美メロ曲「Hollo It's Me」のソウルフル極まりないカパーなんですから、身も心も血の滾りからトロトロに溶かされてしまう、これは素晴らしき落差♪♪~♪

もう、この流れだけで歓喜悶絶は必至なんですが、さらに劇ヤバなのが「Ain't I Been Good To You」のドラマチックな構成展開で、前半の甘くてヘヴィなロッキンファンクが一端終了した後に再スタートする後半の超スローなゴスペルソウルの世界には、泣きじゃくるギターとソウルフルなオルガンも効果的で、ほとんど中毒症状に陥りますよっ!

いゃ~~~、何度聴いても涙がボロボロの傑作アルバム!

こう言って、絶対に後悔しませんっ!

もちろん、ご存じのとおり、このアルバムにしても以降の全盛期からすれば、物足りない部分はあるでしょうし、助っ人参加したジョージ・モーランド(ds) やカール・ポター(per) 等々の存在、さらには前作同様にスティーヴィー・ワンダーのブレーンだったロバート・マーゴレフとマルコム・セシルの暗躍が気になるポイントだと思います。

しかし既に自らの手でプロデュースも演奏の大部分も自在にやれるようになったアイズリー・ブラザーズ唯一無二の個性は、充分に確立されていると思います。

なによりも当時、一般的に流行の兆しがあったファンクやAORといったR&Bとロックの融合志向を素早く具象化し、実践していた点は無視出来ないはずです。

そして、そんな理屈よりも、まずは聴いていて最高に楽しくて気持良い音楽が、ここにあるのです。

ということで、山下達郎の元ネタとして楽しむのもOKでしょうし、トッド・ラングレンがお好きな皆様にもオススメ出来る1枚として、実に嬉しいアルバムなのでした。

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