OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

何をやってもイエスはイエス

2011-05-18 15:45:01 | Rock Jazz

究極 / Yes (Atlantic)

サイケおやじの趣味志向は昭和40年代、つまり1965年からの10年間に形作られて今日に至っていますから、以降はなかなかリアルタイムで夢中になれる事象がなく、それは音楽でも同様でした。

平たく言えば、1970年代後半には自分の好みに合うレコードがそれほど出なくなったという事なんですが、しかし、なんとか追いかけていこうと決意していたバンドのひとつが、当時は既にプログレの王者に君臨していたイエスです。

ところが、流石に本日ご紹介のアルバム「究極 / Going For The One」を最初に耳にした時は驚きましたですねぇ~~~~!?!▲◎!?▼?!

 A-1 Going For The One
 A-2 Turn Of The Century
 A-3 Parallesl
 B-1 Wonderous Stories
 B-2 Awaken

発売されたのは1977年の夏で、その頃は我国でも外盤アルバムは比較的リアルタイムで安く入荷するようになっていた事もあり、サイケおやじも頻繁に輸入盤店に出入りする日々を送っていたんですが、そこで新譜として鳴らされていた冒頭の「Going For The One」を聴いた時、これは絶対にイエスの影響を受けたバカテクのポップス系ロックバンド!? と思った記憶は今も鮮明です。

なにしろリラックスしたイントロのカウントから軽快なスライドギターが唸り、アップテンポで明るい曲メロとハイトーンボイスに爽やかコーラスという展開は、それまでの良い意味で勿体ぶったイエスの音楽性を無理に歪曲したような雰囲気でしたからねぇ~~◎▼??◎

しかし、これは聴いていて実に気持良く高揚させられるツボが確かにあるという名曲名演ですから、サイケおやじは思わず店のカウンター横に飾られていたジャケットを凝視して再び仰天!

掲載した画像でも一目瞭然だと思いますが、そこにはイエス特有のロゴがあるにもかかわらず、ジャケットデザインそのものが、それまでの路線と大きく異なっていたのですから、まさに呆気にとられるとは、こういう事を言うんだなぁ~~!

と心底、痛感させられましたですよ……。

ご存じのとおり、ここまでのイエスのイメージをひとつ決定づけていたのは、1972年の大名盤「こわれもの」から前作「リレイヤー」まで続いていた幽玄神秘なイラストのアルバムジャケットでしたから、この新譜での冷たく幾何学的なデザインは???

しかも男の尻が写っているのは大減点でしょう!?!

今となっては結局、イエスというバンドの有意変転性を顕著に示した1枚という歴史的な評価も確立されているようですが、確かに当時のイエスはデビュー当時の真性アートロックから3作目で独自の個性を目指しつつ、ついに「こわれもの」と「危機」においてプログレの頂点に屹立し、以降はグループとしての超絶技巧を証明せんがためのライプ盤「イエスソングス」、あるいは大作志向の極みとなった2枚組「海洋地形学の物語」、さらには堂々のフュージョンを演じた「リレイヤー」まで意欲的に作った後の煮詰まり状態だったのでしょう。

それが証拠(?)に、メンバー各人のソロアルバムプロジェクトも同時並行的に行われていましたし、継続して人気のライプ巡業があったにしろ、バンドメンバーの出入りは相当にありました。

また当時の業界の新しい動きとしては、例のパンクの流行や所謂ニューウェイヴの台頭があって、その中では大仰な姿勢を変えようとしないイエスやピンクフロイドといったプログレの大富豪が常に標的とされていたのですから、穏やかではありません。

当然ながらプログレというジャンルそのものの衰退も……。

ですからイエスがイエスとして生き残っていくためには、大きな変化も必要だったのでしょう。そしてイエスが上手かったのは、新コンセプトのジャケットに象徴される外見的なイメージの方向転換を産業ロック的な楽曲で具象化しながら、実は安易なコピーなんか絶対に不可能な高い演奏技術と音楽性を維持していたということです。

しかも黄金期のメンバーとして人気の要になっていたリック・ウェイクマンが復帰していた嬉しい驚きも、単なる迎合作品では無いという確信をファンに与えるものだったと思います。

そこでジョン・アンダーソン(vo,per)、スティーヴ・ハウ(g,vo)、リック・ウェィクマン(key)、クリス・スクワイア(b,vo)、アラン・ホワイト(ds,per) からなる真・イエスによる演奏は、既に述べたアルバムタイトル曲「Going For The One」が象徴するように、ライトタッチの産業プログレと言ってはミもフタもありませんが、気軽に聴けてしまう中にも、ハッするほど凄まじいイエス伝来のサウンドが高密度で凝縮されていて、やはり圧巻!

実はこうした傾向のサウンドは、当時のアメリカで流行っていたプログレ系のハードロックバンドに幾つか散見されていたので、ここにイエスがあらためてやるとすれば、それは哀しきパクリの誹りを免れないわけですが、そこは本家の底力というものでしょう。

続く「Turn Of The Century」はスティーヴ・ハウの繊細なアコースティックギターを前面に出した十八番の美メロ主義が全開する、これぞっ、イエスの真骨頂ですからジョン・アンダーソンのハイトーンボイスも冴えまくりですし、幽玄のキーボードとコーラスのミックスも素敵ですよ♪♪~♪

また「Parallesl」はLP片面の流れを見事に構成して締め括るに相応しい、これまた如何にもの歌と演奏がびっしりで、大袈裟なキーボードと目眩がしそうなギター、さらに重厚なリズムとピートに決して負けないボーカル&コーラスという、イエスならではの世界が堪能出来ますよ。

まあ、このあたりをマンネリとするか、あるいは安心感と身を委ねるかによって、このアルバムの評価と存在価値は十人十色だと思いますが、もちろんサイケおやじは後者の立場ですから、B面最初の「Wonderous Stories」の爽やか世界の提供には歓喜悶絶♪♪~♪

この欧州クラシック趣味の臆面も無い利用方法があってこそ、イエスはプログレの王者という証明は、これまでの大作主義を期待通りに継承した「Awaken」でも見事に健在で、それはイントロから披露される華麗なピアノや厳かなムードが躍動的に広がっていく曲展開があってこそ成就されるものでしょう。

実際、この「Awaken」はメンバー全員の緊密なコラポレーションが超絶的なテクニックで支えられ、それでいて妙に親しみ易いという、ある意味での中途半端さが快感の秘密じゃないでしょうか。

ということで、イエス本隊としては前作「リレイヤー」から2年数か月ぶりの新作として、全く新しいものを狙ったのかもしれませんが、ファンの気持と耳は意地悪ですから、ちゃ~んとイエスの本音を分かっていたと思います。

それはジャケットコンセプトの変更も含めて、いくらスリムで現代的なスマートさを目指したとしても、既に流行遅れになっていたプログレというジャンルからは決して抜け出せない、抜けだす気持も本当は無いであろうメンバーの商売優先主義に対するクールな反応であって、所謂どっちもどっち……?

ですから当時のライプ音源を探求すると、きっちり往年の人気曲をやっているイエスの律儀な姿勢に感動すら覚えるんですよねぇ~♪

ご存じのとおり、イエスは名前だけを優先させるかのように、以降はメンパーチェンジと音楽性の進化後退を繰り返しつつ、今日まで多くの作品を残していきますが、どの時期の味わいも実は「究極」を起点に聴くことが可能という、意味深な逆説さえ成り立ってしまうような気がします。

ですから、「究極」という邦題を命名した我国の担当者の先見性は流石!?

聴く度に、そんな事を思ってしまうのでした。

コメント
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