OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

キャラバン4作目の絶妙な位置

2011-05-01 16:00:34 | Rock Jazz

Water Lily / Caravan (Deram)

様々なイメージの中で、最も「らしい」事を演じてくれれば、それはそれでファンが喜ぶというのが芸能界のひとつの仕来たりでしょう。

それはロックの世界でも例外ではなく、例えば今日では「カンタベリー」なんていう特殊なジャンルに押し込められているキャラバンというグループにしても、その基本姿勢はプログレというよりもロックジャズ!

それがサイケおやじの認識ですから、結果的にコアなファンからはイマイチと評価されたとしても、個人的には完全にOKなのが本日ご紹介のアルバムです。

発売されたのは1973年春らしく、あの傑作「In The Land Of Grey And Pink」に続く通算4枚目のLPではありますが、当然ながらサイケおやじはリアルタイムではなく、後追い鑑賞でシビレたというのが真相です。

 A-1 Water Lily
 A-2 Nothing At All
     - It's Coming
      - Nothing At All
(reprise)
 A-3 Song & Sings
 B-1 Aristocracy
 B-2 The Love In Your Eye
      - To Catch Me Brother
      - Subsultus
      - Debouchement
      - Tilbury Keeks
 B-3 The World Is Yours

上記演目からもご承知いただけると思いますが、やはり組曲形式のメドレートラックではアレンジの妙と如何にも1970年代前半っぽいロックジャズなアドリブが混然一体の魅力となっています。

しかし今回のセッションではバンドに前作「In The Land Of Grey And Pink」以降のメンパーチェンジがあり、パイ・ヘイスティングス(vo,g)、リャード・シンクレア(vo,b,g)、リチャード・コフラン(ds) に新参加のスティーヴ・ミラー(key) の4人が、ここではキャラバンを名乗っています。

つまりサイケおやじをキャラバンに導いたデヴィッド・シンクレア(key) が抜けたという、個人的にはちょいと悪い予感に満たされた作品だったんですが、ところが新メンバーのスティーヴ・ミラーが全く正統派のロックジャズに拘ったキーボードを聴かせてくれたんですから、たまりません♪♪~♪

さらにその所為でしょうか、これまであまり前面に出ていなかったパイ・ヘイスティングスのギターパートも大幅に増え、リャード・シンクレアの弾力性に満ちたべースワークも縦横無尽に楽しめるという結果オーライが眩しいほどです。

また肝心の楽曲も当時のプログラムピクチャーに使われても違和感の無いグルーヴィな部分、時には元祖AORといって過言ではないフィール・ソー・グッドな雰囲気の良さ、そして躍動的なフュージョン系の演奏まで包括的にやってしまった音楽性の幅広さは、今に至るも「隠れ名盤」の称号が相応しいばかり!

そうです、これは所謂「名盤」ではなく、「隠れ」という一言がその前に冠されて初めて評価される1枚だと思いますねぇ。

何故ならば既に述べたように、この前作には真の名盤「In The Land Of Grey And Pink」があり、そしてご存じのとおり次作が今日に至るキャラバンの評価を決定づけた「Fat Girl Who Grow Plump In The Night」とあっては、如何にも立場があやふやでしょう。

しかし所謂過渡期らしい模索が当時流行の元祖フュージョンとも言うべきクロスオーバーへの接近に繋がったようでもあり、結果的に普通に近いロックジャズへ傾斜した事で、とても聴き易い仕上がりになっているのです。

そのあたりが頑固なキャラバンファンにはイマイチ、面白くないところかもしれません。それはキャラバンという秘宝的なグループは自分達だけのものにしておきたいという、マイナー保護主義の独占欲なのでしょうか。

しかし、それはそれとして、実際にこのアルバムを聴いてみれば、まず全篇でしなやかに躍動するリャード・シンクレアのペースに腰の強さを感じるはずです。もう、個人的にはそれだけ聴いていれば、この作品の存在価値があると思うほどなんですが、加えて
スティーヴ・ミラーのピアノやエレピ、そしてオルガンやシンセがモロにジャズっぽいんですから、たまりません♪♪~♪

もちろん楽曲そのものの魅力も絶大で、例えばB面2曲目の「The Love In Your Eye」は生半可なAORはお呼びじゃないというほど心地良く、しかも組曲形式で進行する流れは予めアレンジされた部分とアドリブパートのバランスも上手く出来上がっていますよ。

また如何にも英国産ロックジャズらしいアンサンブルとアドリブが炸裂する「Water Lily」、映画サントラ音源としても利用価値がありそうな「Nothing At All」はウェザー・リポートさえ連想させられるクロスオーバーなモダンジャズですし、ヒネリの効いたブリティッシュポップスの裏街道的な「Song & Sings」は、これぞっ、キャラバンの真骨頂かもしれません。

その意味で躍動的ながら、どこかしら醒めている「Aristocracy」で堪能出来るリャード・シンクレアを核とするリズムとビートの出し方は要注意でしょうねぇ~♪ このファンキーでロックっぽい方向性は、我国でもティンパンアレー系のバンドに流用されたグルーヴの源泉ですからっ!? 当然ながらアメリカで既に実践されていたニューソウルやファンキーロックの影響下にある事は否定出来るものではありませんが、それを「カンタベリー」というドメスティックな感覚でやってしまった事が、結果オーライの素晴らしき偶然というところでしょうか。

ですからオーラスの「The World Is Yours」が妙に歌謡フォークしている感じが面映ゆいんですよねぇ~。まあ、そんな事を書いてしまうと激怒の皆様が大勢いらっしゃる事は百も承知の暴言、ご容赦下お願い致します。

それと最後になりましたが、このアルバムにはサックスやフルート等々の管楽器、そしてストリングアレンジ等々で優秀な助っ人が数名参加しており、ロイ・コクスヒル(ss) やジミー・ヘイスティングス(fl,sax) の熱演がキャラバンのサウンドには欠かせない真実を確認出来ると思います。

ということで、これもサイケおやじの日常的な愛聴盤のひとつで、極言すればキャラバンの諸作中、一番にターンテーブルに乗せられた回数が多いかもしれません。

そして繰り返しになりますが、「In The Land Of Grey And Pink」と「Fat Girl Who Grow Plump In The Night」という二大傑作盤に挟まれた位置ゆえに、そのどちらへも進むことが可能という存在価値が天の邪鬼なサイケおやじを夢中にさせるのでしょう。

もしかしたら、このアルバムがキャラバン入門用にはジャストミート!?

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする