OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

A面ド頭の罠

2007-11-21 16:33:29 | Weblog

朝から雪まじりの悪天候、横殴りの強雨が続きました。

いよいよ、冬か……。昨年は、ほとんど雪がなかったからなぁ。

ということで、本日は密かな愛聴盤を――

West Coast Blues ! / Harold Land (Jazzland)

ジャズは個人芸の集合体ですから、リーダーよりは共演者の魅力に惹きつけられて聴くことが可能な音楽です。

この作品は私にとって、特にそうした1枚で、お目当てはトランペッターのジョー・ゴードンでした。それにウェス・モンゴメリー! おまけにリズム隊がキャノンボール・アダレイのバンドレギュラーときては、ワクワクするしかありません♪

ジョー・ゴードンについては、ホレス・シルバーの「シルバーズ・ブルー(Epic)」を聴いて忽ち好きになり、リズム隊の素晴らしさは言わずもがなでしょう。

肝心のリーダー、ハロルド・ランドはブラウン&ローチのクインテットでレギュラーを務めた黒人テナーサックス奏者とはいえ、このセッションメンバーの中では、ちょいと地味な存在……。

と不遜な事を思っていたら、これがとんでもない思い違いでした! 初めて聴いた瞬間から、全く自分の若気の至りが狂おしいまでに恥ずかしく……。

録音は1960年5月17&18日、メンバーをあらためて記せば、ジョー・ゴードン(tp)、ハロルド・ランド(ts)、ウェス・モンゴメリー(g)、バリー・ハリス(p)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という、たまらない個性派ばかりです――

A-1 Ursula (1960年5月18日録音)
 ハロルド・ランドのオリジナル曲で、ちょっとミステリアスな煮え切らないテーマメロディが、???です……。う~ん、失礼ながらこんな曲をド頭に持ってくるなんて、と先が思いやられた記憶が今も鮮明です。
 実際、アドリブも全然、面白くないんですねぇ……。ただ、そこにあるスペースを埋めていくだけという雰囲気が濃厚です。こう思ってしまうのは、私だけなんでしょうかねぇ? リズム隊は一応、グイノリなんですが……。

A-2 Klactoveedsedstene (1960年5月18日録音)
 ところが一転して、痛快至極なハードバップが始ります。
 曲はチャーリー・パーカー(as) のエキセントリックなオリジナルですが、ソウルフルで強いビートを出してくるリズム隊の存在ゆえに、烈しいアップテンポのアドリブ合戦が楽しめます。
 まずハロルド・ランドが豪快にブッ飛ばせば、ジョー・ゴードンはビバップ魂を発揮したツッコミで応えます。そしてウェス・モンゴメリーが登場すると、その場は完全にハードバップの修羅場と化すのですから、たまりません。燃えるシングルトーンの早弾きはピッキングも力強く、とても親指だけとは思えません!
 また繰り返しますが、リズム隊が素晴らしく、ブンブンブリブリのサム・ジョーンズ、ビシバシにキメまくりのルイス・ヘイズに煽られて、バリー・ハリスが会心のビバップ節を炸裂させるのです!
 さらにクライマックスのドラムス対ホーンの対決は、どこまでも熱く燃え上がるのですが、あぁ、こうなってみると、前曲の煮え切らなさが計算ずくのプログラムだったのかっ!? と勘ぐってしまうのでした。

A-3 Don't Explain (1960年5月18日録音)
 ビリー・ホリディ(vo) が十八番にしていたブルーなムードのバラード曲ですから、ハロルド・ランドも気合が入っているようです。強いビートのリズム隊を従えて変奏していくテーマメロディの味わい深さ♪ それはジョー・ゴードンのミュートによって、一層、煮詰められていきます。
 もちろんアドリブパートにおけるハロルド・ランドの歌いっぷりは男気に満ちています。というか、ちょっと歌心が欠如しているようにも聞こえますが、ハードボイルドということで……。

B-1 West Coast Blues (1960年5月18日録音)
 ウェス・モンゴメリーが書いた有名なワルツ曲を、ここでは朴訥な真っ向勝負で演じる潔さ! アドリブ先発はもちろんウェス・モンゴメリーが、素晴らしい「お手本」を示します。
 するとハロルド・ランドがハードバップの王道を行くテナーサックを聞かせてくれますし、ジョー・ゴードンは個性的な節回しとノリのコントラストを披露するのです。
 バリー・ハリスとサム・ジョーンズも落ち着いた好演ですし、バンドが一丸となった快適なグルーヴは、何度聴いても飽きません。

B-2 Terrain (1960年5月17日録音)
 ちょっと変わった、セロニアス・モンク調の曲ですが、実はハロルド・ランドのオリジナル! 微妙なファンキー風味が魅力です。
 そしてアドリブパートでは、ジョン・コルトレーンからの影響を滲ませるフレーズを聞かせるハロルド・ランドが新機軸! これも時代ということでしょうか……。
 しかしバリー・ハリスは「我が道を行く」快演で、こんな曲にも歌心を発揮するのですから、本当に素晴らしいと思います。それに影響されたかのようなジョー・ゴードンのアドリブも流石の輝きながら、途中で有名曲のメロディを引用する茶目っ気も♪
 またウェス・モンゴメリーが、当然、凄いです。リズム隊のテンションの高さを逆手に取ったようなブレイクとか、流れるようなフレーズ展開には、グッときます。
 サム・ジョーンズの短いベースソロが終わってみると、その場は完全にファンキーと化しているのでした。

B-3 Compulsion (1960年5月17日録音)
 オーラスは、これもハロルド・ランドのオリジナル曲ですが、ウェス・モンゴメリーが最高のイントロをつけたアップテンポのハードバップ! 屈折気味のテーマには微妙に新しい感覚が入っているのですが、憎めません。
 そしてアドリブパートでは、まずハロルド・ランドがゴリゴリに吹きまくり、ウェス・モンゴメリーとジョー・ゴードンが凄い快演で続きます。ガンガン迫ってくるバリー・ハリスも、良いですねぇ~~♪
 最後まで揺るぎ無いリズム隊の勢いも痛快の一言です。

ということで、聞き終わってみれば、ド頭の煮え切らなさは何だったんだぁ~~~!? という気分ですが、個人的には相等な愛聴盤になっています。

特にA面、1~2曲目の落差が聞きたくて、というのが本音かもしれません、ふっふっふっ♪ 結局、罠に落ちたということでしょうねぇ。

コメント
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