OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ハードバップはボヘミアから

2007-11-08 17:47:39 | Weblog

今年も残りわずかになってきましたが、今年ほど大バカ者が登場した年も珍しいのではないでしょうか。

前総理大臣を筆頭に、政治家、食品関係者、建築業界、英会話学校、防衛産業&役人……。とても列記しきれないほどの呆れた状態でしたねぇ~。

これから、まだまだ出てくるのでしょうか? 

いや、これは自分の身を律する教訓とするべきなのでしょうねぇ。

ということで、本日は――

George Wallington Quintet At The Bohemia (Progressive / Prestige)

ジャズ史上有名なライブ盤ですが、オリジナルはウルトラ級の幻盤であり、そのオリジナル盤のジャケットを使って我国で再発されたプレスティッジ盤にしても、1974年頃には入手困難になっていました。

そこで私が買ったのは、掲載した米国プレスの再発盤で、もちろん擬似ステレオ仕様になっています。

しかし、これが良いんですねぇ~♪

擬似ステレオ特有のエコー感が、絶妙の残響音効果に繋がったみたいで、ライブ録音の雰囲気を高めていると感じます。しかもアメリカ盤特有のカッティングレベルの高さがありますから♪

肝心の内容は1940年代から頭角を表し、ビバップ時代には稀有の白人ピアニストとして認知されたジョージ・ウォーリントンが、ハードバップ勃興期にも大きな役割を果していたという記録です。

録音は1955年9月9日、ニューヨークのクラブ「カフェ・ボヘミア」でのライブ音源ですが、この店で録られたアルバムとしては一番有名なジャズメッセンジャーズのブルーノート盤の録音日が同年11月だったことを鑑みて、一足早いハードバップ誕生の証かもしれません。

メンバーはジョージ・ウォーリントン(p) 以下、ドナルド・バード(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という、当時バリバリの黒人若手精鋭達が集められています――

A-1 Johnny One Note
 原曲は映画音楽のスタンダードらしいのですが、それは後で知った事です。というのも、この演奏がメチャ、カッコ良い仕上がりですからねぇ~♪ 鋭角的なメロディ展開とスピードがついた緊張感が、たまりません。
 そのキモはドナルド・バードとジャッキー・マクリーンの絡みが強烈なテーマ、グリグリにドライブするベースとドラムの勢いです。
 もちろんアドリブパートも痛快で、ギスギスした音色とブツ切れフレーズが鋭いジャッキー・マクリーン、流麗なドナルド・バード、熱血なアートテイラーと快演が連続します。
 そして肝心のジョージ・ウォーリントンは落ち着いたセンスの良さを発揮して、若手の手綱を引き締め、無用な暴走はさせていませんし、自身のアドリブパートも溌剌として好感が持てます。

A-2 Sweet Blache
 滑らかなテーマメロディが印象的なジョージ・ウォーリントンのオリジナル曲で、これもスピード感のあるリズム隊が立派!
 ですからドナルド・バードがクリフォード・ブラウンのアドリブフレーズを大胆に使いまわして奮闘すれば、ジャッキー・マクリーンはアグレッシブなツッコミとタイミングの良いボケの独演が見事です。
 またジョージ・ウォーリントンの如何にも白人らしいフィーリングは物足りなくもありますが、ビンビンブリブリにウォーキングするポール・チェンバースが、見事にそれを補っているんですねぇ~♪ もちろん続けて入るアドリブも凄いと思います。

A-3 Minor March
 ジャッキー・マクリーンのオリジナル曲で、既にマイルス・デイビスとのセッションでも録音されていますが、それと比べても遜色が無いどころか、一層、若さ溢れる荒っぽい演奏になっていて、最高です。
 特に突っ込んだテーマの提示からアドリブに飛び込んでいくジャッキー・マクリーンが激烈! かなりエキセントリックなフレーズ展開を聞かせてくれます。続くドナルド・バードも必死の追走で素晴らしいですねぇ♪ ノリが弛みそうになると、すかさず強烈なアクセントを入れてくるアート・テイラーも流石です。
 そしてジョージ・ウォーリントンが珍しいほどの弾きまくり! リズム隊全体での勢いもありますから、ポール・チェンバースのアルコ弾きによるアドリブも結果オーライだと思います。
 ドラムスとの対決からラストテーマへの流れも、実に良い雰囲気で、観客からは大きな拍手喝采♪

B-1 Snakes
 ジャッキー・マクリーンが書いたとはいえ、元曲が「Get Happy」だと直ぐに分かってしまいます。しかし猛烈なスピードでの躍動感が、実に素晴らしい!
 まずジャッキー・マクリーンの豪快なツッコミが最高です。ギスギスした音色と破天荒寸前のビバップフレーズに正面から直撃されるんですねぇ~~~♪ まさにハードバップの真髄です。
 また気力充実のドナルド・バードが、これまた大熱演です。スピードがついたフレーズの連発を強烈に煽るリズム隊との相性も素晴らしいかぎり!
 さらにジョージ・ウォーリントンが、かなりエキセントリックなスタイルを披露しています。これはもちろんバド・パウエルの雰囲気に近いわけですが、リズム隊に物凄いドライブ感があるのですから、たまりません。そのまんま、アート・テイラーの激烈ドラムソロに雪崩込んでいくのでした。

B-2 Jay Mac's Crib
 一応はドナルド・バードの作曲となっておりますが、これはスタンダードとしてモダンジャズでも御馴染みの「朝日のごとくさわやかに」というのは、有名伝説♪
 ですから各人のアドリブパートも手慣れた雰囲気になるのですが、ポール・チェンバースのウォーキングベースが凄いと思います。また、ここでは問題児となったドナルド・バードが、汚名返上の味わい深いアドリブを聞かせてくれますよ♪
 
B-3 Bohemia After Dark
 オーラスは、この店のテーマとも言うべき、モダンジャズの傑作曲ですから、ここでも演奏に熱が入っています。あぁ、このグルーヴィな雰囲気は、あきらかにハードバップ特有のものでしょうねぇ。
 そしてアドリブパートでは、最初の部分で特徴的に展開されるトランペットとアルトサックスの単音フレーズによる掛け合いが、なかなか良いです。もちろん続く個人技の部分も歌心と緊張感が両立されています♪
 あぁ、それにしてもポール・チェンバースとアート・テイラーのコンビは、素晴らしい! まさに黒人でなければ出せないビートとネバリのリズム! 刺激的なアクセントの妙がありますから、ジョージ・ウォーリントンの些か淡白なピアノが、グッと引き立っていると感じます。
 演奏はこの後、ポール・チェンバースのグイノリのベースソロからラストテーマとなり、さらに「The Peak」という短いバンドテーマに移りますが、この雰囲気の良さ、ノリの強引さ、最後の唐突さが、全く名盤の条件ではないでしょうか。

ということで、勢いが素晴らしい演奏ばかりです。もちろん荒っぽさと強引さも同時にありますが、それがまた、気に入っています。

ちなみに1970年代後半には、我国のテイチクレコードから別テイク集のアルバムも発売されましたが、中身はそれほど違う印象ではありませんでした。

またオリジナル盤は、とても手が出ない異次元のブツなので、かなり後になって中古で日本プレスのモノラル盤を入手したのですが、なんとなくピンッときませんでした。音にキレがないというか……。

そして今日では、どうやらテイチクから出た別テイクまでも纏めたCDが出ているようです。買ってみたいなぁ~~。

コメント
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