今日は本当にポカポカと、雪国とは思えない穏やかな晴天でした。たぶん、これが最後の「晴れ」になるのでしょうか。けっこう朝夕は冷えてきて、雨になれば霙に変わる気がしています。
ということで、本日は――
■Time Waits / The Amazing Bud Powell Vol.4 (Blue Note)
1950年代後半に残されたバド・パウエルの演奏は、特に好不調の波が大きく、中には聞いていて辛い作品もあるのですが、それでもブルーノートから発売された3枚のアルバムは人気盤になっています。
それはプロデュースの上手さというか、3枚それぞれが個性的な仕上がりになっているからでしょう。
例えば、このアルバムは共演者にサム・ジョーンズ(b) とフィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、当時バリバリの売れっ子が起用されています。
録音は1958年5月24 or 28日、つまり時期的にはモダンジャズの黄金期であり、もしかしたらビバップ総本家のバド・パウエルにハードバップをやらせようとした企画かもしれません――
A-1 Buster Rides Again
A-2 Sub City
A-3 Time Waits
A-4 Marmalade
B-1 Monopoly
B-2 John's Abbey
B-3 Dry Soul
B-4 Sub City (Alternate Master)
――という演目は全てがバド・パウエルのオリジナルというのも、意気込みを感じます。
そして特に期待されるのが、フィリー・ジョー・ジョーンズが特有のクッションを活かしたハードバップのドラミングなんですが、しかし結論は、冴えていません!
というか、フィリー・ジョーがほとんど本領を発揮出来なかったと、私には聴こえました。煽る前にバド・パウエルが先にノリを決め、どんどんイってしまうんですねぇ……。フィリー・ジョーはもちろん、サム・ジョーンズさえも、ついていくのが、やっと……、という有様じゃないでしょうか……?
それは決して全盛期のような超アップテンポやウルトラスローの幻想世界ではありません。しかし……。まあ、このあたりの唯我独尊が、まさに天才の証明なのでしょうか……?
例えば、以降に十八番となる「John's Abbey」では、唸り声をあげて疾走するバド・パウエルにグイノリのサム・ジョーンズ、そこにブラシで斬り込んでいくフィリー・ジョー! しかし、あくまでもバド・パウエルが優先のノリなんですねぇ~♪
またラテンビートを入れた「Buster Rides Again」では、フィリー・ジョーもスティックで懸命のリズムを敲き出しているのですが、バド・パウエルの強烈な自己顕示に押され気味……。エキセントリックなさざ波のようなフレーズや不協和音ギリギリの展開が、この時期のバド・パウエルを良く表しているようです。
う~ん、フィリー・ジョー、どうしたんだぁ~~。
しかし「Marmalade」では、ようやく本領発揮というか、どうにか面目を保ったところでしょうか。もちろんバド・パウエルが凄すぎるのですがねぇ~♪ かなりアブナイ飛躍が、最高のスリルに繋がっていますし、サム・ジョーンズのベースソロとバックでビシバシとキメまくるフィリー・ジョーのブラシが、ハードバップしています。後半で展開される3者の絡みも良いですねぇ♪
そしてタイトル曲の「Time Waits」が、この時期ならではの哀切の……。鬱々とした曲想と自分を納得させようとするピアノタッチは、バド・パウエルだけに許されるものでしょう。聴いているうちに、どんよりと気分が落ち込んでいくのですが、それが心地良く感じられる私は……。
それはスロ~ブルースの「Dry Soul」も同質かもしれません。フィリー・ジョーがスティックで煽ろうとするのですが、バド・パウエルは納得せずに自己の世界に耽溺していきます。そして如何にもブルースというフレーズを大サービスし、不協和音を入れながら、ファンキーは拒否するという徹底ぶりが潔い! 流石だと思います。
ということで、もしアルフレッド・ライオンがハードバップのアルバムを作ろうとしたのならば、それは失敗……。というか、かえってバド・パウエルが唯一無二の世界を知らしめた成功作だと思います。
決して人気盤ではありませんが、やっぱりねぇ~♪