OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

あの頃のジャズ喫茶モード

2007-11-26 18:03:24 | Weblog

昨日の大相撲も締まらない結末でしたが、本日の仕事も朝からブッ弛んだミスが多く……。

そこで昼飯時には仕事場でありながら、久々に大音量で、こんなアルバムを鳴らしてしまいました――

Out Front / Booker Little (Candid)

ブッカー・リトルは天才肌のトランペッターですが、けっこう好き嫌いが分かれるんじゃないでしょうか?

それはマイナー、というよりもネクラな節回しによるところが大きいと思われます。しかし、そういうところが1970年代までのジャズ喫茶では、大いにもてはやされた魅力でした。

残念ながら、ブッカー・リトルは1961年に23歳で夭逝していますが、そんな悲壮感もあって、残されたアルバムは全てがジャズ喫茶の人気盤になっています。

さて、このアルバムは人生最後の年に吹き込まれた意欲的な作品で、録音は1961年3&4月、メンバーはブッカー・リトル(tp)、ジュリアン・プリースター(tb)、エリック・ドルフィ(as,fl,bcl)、ドン・フリードマン(p)、マックス・ローチ(ds,per,vib)、そして3月のセッションではアート・デイビス(b)、4月のセッションではロン・カーター(b) が参加しています。しかも全曲がブッカー・リトルのオリジナル――

A-1 We Speak (1961年3月17日録音)
 悪い予感に満たされつつも、勢いと熱気が漂う素晴らしいテーマ、そしてテンションの高いアドリブで貫かれた名演です。途中でスローにテンポを落とした後、グイノリでアドリブに突入するという仕掛けも憎めません。
 ブッカー・リトル十八番のネクラ節を盛り立てるリズム隊では、ティンパニーまでも駆使するマックス・ローチが流石の存在感ですし、盟友のエリック・ドルフィが「馬の嘶き」で鮮やかに飛翔しています。

A-2 Strength And Sanity (1961年 4月4日録音)
 ドン・フリードマンの意味深なイントロから不安感に満ちたテーマメロディが流れてきた瞬間、どんよりと心が温もってしまいます。う~ん、このあたりは如何にも1970年代前半のジャズ喫茶モードなんですねぇ。
 演奏はアレンジされた部分が多く、バンド全体のアンサンブルの中で、ブッカー・リトルが何となくアドリブっぽい事をやるという展開ですが、ここでもマックス・ローチが絶妙のサポート♪
 ちなみにブッカー・リトルはマックス・ローチのバンドに雇われて注目された経緯がありますし、マックス・ローチにしてみれば、可愛い弟子のセッションに華を添える以上の働きも当然かと思います。

A-3 Quiet, Please (1961年3月17日録音)
 ゆったりしたテンポから少しずつビートが強くなり、グイノリの演奏に発展して行く強烈さが、たまりません。
 つまりはテンポのアップ&ダウンによる緊張感を狙ったのでしょうが、ここまで見事だと一概に「あざとい」とは言えません。ブッカー・リトルのネクラな情熱やマイナーな感性が、マックス・ローチ以下の恐いリズム隊に触発されて激してしまうあたりのジャズっぽさが、実に良いと思います。
 またドン・ブリードマンは、ご存知、エバンス派のピアニストですが、本家よりも「らしい」演奏を披露♪ またジュリアン・プリースターのモゴモゴしたトロンボーンも味わい深いところです。
 そしてクライマックスで飛び出すエリック・ドルフィーのエキセントリックなアルトサックスが、ジャズ喫茶全盛期の思い出を呼び覚ますのでした。

B-1 Moods In Free Time (1961年4月4日録音)
 複雑怪奇なテーマメロディは、ワルツや変形ロックビートが入り混じったリズムゆえに、全く和めません。あぁ、この不安感! マックス・ローチのドラミングは怪談の効果音のような……。
 しかし、そんな中でもブッカー・リトルは、せつない音色でネクラなフレーズを積み重ね、聴いているうちに心がしめつけられるような……。そしてエリック・ドルフィさえも、擬似フリーというか、お化け屋敷の泣き虫小僧のような……。
 背後で蠢くバンドのハーモニーも??? なんですが、全体で強引に押し切っていくパワーが凄いのでしょうか……。

B-2 Man Of Words (1961年 4月4日録音)
 これまたスローで陰鬱、哀しいメロディが印象的! 正直、これなんかマイルス・デイビスの世界と通じるものがあると思うのですが、派手なフレーズを吹いても、どこか沈殿していくブッカー・リトルの個性は唯一無二と痛感させられるのでした。

B-3 Hazy Hues (1961年4月4日録音)
 エリック・ドルフィのフルートが絶妙のスパイスとなったテーマメロディはゆったりと始まり、途中からビシバシとキメが入ったグイノリ演奏へと変化が楽しいところ!
 否、「楽しい」というよりも、気分が良いという感じです。
 その要はマックス・ローチの変幻自在というドラミングでしょうし、ブッカー・リトルのアドリブは、かなり考え抜かれている感じでしょうか。
 ですからエリック・ドルフィの破天荒なアルトサックスさえも、どこかバンドアンサンブルを意識し過ぎたような……。

B-4 A New Day (1961年3月17日録音)
 これもエリック・ドルフィのフルートが効いたテーマの演奏が気持ち良く響きます。そしてネクラ節に撤するブッカー・リトルの潔さ! ポリリズムで強いビートを付けるマックス・ローチは、長めのドラムソロも披露していますが、聞いていて飽きないんですねぇ~♪
 それと幻想的なピアノソロを聴かせるドン・フリードマンが、やっぱり良いです。

ということで、決して自宅で聴いて楽しい作品ではありません。しかしジャズ喫茶で聴くと、これほどジャストミートするアルバムも無いほどです。

このあたりは昭和のジャズ喫茶の雰囲気を知っていないと、イマイチ馴染めないかもしれませんですね。それゆえに時たま、自宅でも大音量で鳴らしてしまうのですが……。

ちなみにブッカー・リトルとエリック・ドルフィーは、このセッションの後に正式にバンドを組んで、あの「5スポット」での名演ライブを残すのでした。

コメント
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