OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

難しくも新鮮

2007-11-13 16:48:06 | Weblog

実はクリスマス頃のイベントに、おやじバンドして出演することになり、練習に勤しんでいます。

と言っても、バンドメンバーは私も含めて多忙のため、なかなか勢揃いが出来ませんが……。

そんなわけで、本サイト「サイケおやじ館」の更新も滞っている事も、この場を借りて、お詫び申し上げます。

ということで、本日は――

Lush Life / John Coltrane (Prestige)

ジョン・コルトレーンが残した数多いアルバムの中でも、あまり注目されてない作品かもしれません。しかし聴くほどに深い味わいが確かにあります。

内容は3種類のセッションから構成され、まず1957年5月31日の録音はジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アルバート・ヒース(ds) という、ワンホーンカルテット(グループA)です。

続くグループBはジョン・コルトレーン(ts)、アール・メイ(b)、そしてアート・テイラー(ds) という珍しいトリオ編成! 録音は1957年8月17日とされています。

そしてグループCがドナルド・バード(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、ルイス・ヘイズ(ds) というバリバリに凄いメンバーが勢揃い! 録音は1958年1月10日です。

ちなみにこれらのセッションが行われた頃のジョン・コルトレーンは、マイルス・デイビスのバンドをクビになってセロニアス・モンクのバンドに拾われながら、連日のクラブギグで伝説的な成長を遂げた時期と重なっていますから、興味深々――

A-1 Like Someone In Love (1957年8月17日録音 / グループB)
 親しみ易いメロディが魅力のスタンダードですから、モダンジャズでも人気曲♪ それをジョン・コルトレーンがピアノレスのトリオで、どのように演じているのか!? 実際、ワクワクしてきます。
 さらに、もうひとつの楽しみとして、実はこの年の3月にはソニー・ロリンズ(ts) がレイ・ブラウン(b)&シェリー・マン(ds) という名手と組んで「ウエイ・アウト・ウェスト(Contemporary)」という物凄い傑作アルバムを吹き込んでいますから、その影響は?
 しかし結論から言うと、このセッションは最初からトリオ編成を目論んでいたのではなく、予定されていたピアニストがスタジオに現れなかった事によるものだとか……。
 まあ、それはそれとして、ここでのジョン・コルトレーンは無伴奏のイントロからテーマ、そしてアドリブパートからラストのカデンツァまで、クールで熱い素晴らしい演奏を聞かせてくれます。
 落ち着いたベースワークのアール・メイも存在感が強く、さらに的確なサポートに撤するアート・テイラーとのコンビネーションも完璧だと思います。
 ジョン・コルトレーンは激烈な演奏ばかりでなく、歌物バラードにも大いなる魅力を発揮しますが、個人的には特にブレスティッジ時代の朴訥なフィーリングが好きなので、これも気に入っています。けっこうヒネリを入れたりしているんですが、憎めません。

A-2 I Love You (1957年8月17日録音 / グループB)
 ラテンビートを取り入れたイントロ部分から、相等に浮遊感が強いジョン・コルトレーンですが、続いてテーマメロディをしっかりと吹いてくれますから、グッと惹きつけられます。
 もちろんアドリブパートでは十八番の音符過多なフレーズの大洪水! 最初から最後まで、一気に吹きまくるスタイルは後年のアトランティック時代と同様の手法になっていますので、アート・テイラーの存在が、既にして「ジャイアント・ステップス」になっているのでした。Oh! モォ~レッツ!

A-3 Trane's Solw Blues (1957年8月17日録音 / グループB)
 曲そのものは、これまでにも度々演じられてきたジョン・コルトレーンのオリジナルですが、その密度は一層、濃いものになっています。
 まずアール・メイのウォーキングベースとアート・テイラーのシンバルによる落ち着いた4ビートからジョン・コルトレーンが登場すれば、あたりは完全にハードバップです。
 しかもピアノレスによる自由度の高い空間とトリオ3者の緊張感の兼ね合いが絶妙! 烈しいダブルタイムで突進するジョン・コルトレーンにも全く動じないアール・メイは、アドリブに入ってもマイペースですし、アート・テイラーは、そんな手の内は百も承知でビシバシとキメまくりです。
 最終クライマックスでストップタイムが使われるあたりのスリルも、ちょっとしたものだと思います。

B-1 I Hear A Rhapsody (1957年5月31日録音 / グループA)
 快適なテンポで演じられるスタンダード曲のハードバップ的解釈が爽快です。なによりもジョン・コルトレーンの軽い吹奏が、イイ感じ♪ 十八番のフレーズでギクシャクウネウネとアドリブしていく背後では、馴染みのリズム隊が絶妙の合の手を入れてきます。
 あぁ、こういう分かりきったスピード感とか、聞き易さこそが、モダンジャズの魅力のひとつでしょうねぇ。もちろん適度なスリルや刺激は、忘れられていません。
 う~ん、レッド・ガーランドも、良いなぁ~♪ アルバート・ヒースの軽いドラミングも最高です。

B-2 Lush Life (1958年1月10日録音 / グループC)
 ビリー・ストレイホーンが書いた畢生の名曲を、じっくりと演奏していくバンドの練熟した味わいが素晴らしいと思います。
 まず曲のヴァースからメインテーマのメロディをジンワリと丁寧に吹奏していくジョン・コルトレーンの素直な感性! 実は後年、歌手のジョニー・ハートマンの伴奏として同じ曲を演じているのですが、私的にはそこに、やや鼻につくものを感じているので、ここでの直向な姿勢には共感を覚えます。
 それは完成度の高い原曲をフェイクする難しさ、またコードバリエーションの複雑さに対する懸命の頑張りなのかもしれません。
 レッド・ガーランドにしても、スタンダード曲を自己流に解釈していく何時もの手慣れた感じがありません。それでも全体にゴージャスな雰囲気を醸し出していくところは流石でしょうか。
 そしてドナルド・バードの些かノーテンキな雰囲気が、これまた憎めません♪ 朗々と意味不明なフレーズを滑らかに吹奏していく潔さ! 実は全篇に漂う難しい雰囲気が、これで緩和されていると思うのでした。

ということで、正直なところ、完全に取っ付き難いアルバムです。人気が無いのムベなるかな……。しかし、ある日突然、急に聴きたくなるのも、また事実なんですねぇ、私だけかもしれませんが……。

そして聴く度に、なんとなく新鮮な気分にさせられるというわけです。

コメント
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