OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

漲る力のゴスペルジャズ

2007-02-07 18:35:37 | Weblog

やっぱり、歳でしょうか……。

最近、疲れが抜けきらないというか、自分の中でカァ~ッと燃えるものが少なくなった気がしています。

これじゃ、イカンなぁ……。ということで、本日はこれを――

Blues & Roots / Charles Mingus (Atlantic)

コワモテが多いジャズ界において、その最右翼がチャールス・ミンガスだと、私は思います。

まず、やっている音楽が脂っこく、また濃密で油断なりません。ハードバップとかエリトン直系とか、いろいろと指摘されたって、残されている音源からはフリーもあればブルースロックも出てくるという、ゴッタ煮状態! しかし一発でミンガス・ミュージックと気がつく色合があるのです。

そして自己の担当楽器であるベースが、物凄い存在感を誇示する、その演奏姿勢! また同時に、演奏中の掛声とかハッパが強烈です!

おまけにバンドメンバーに演目の譜面を渡さず、耳でハーモニーとかメロディを覚えさせるリハーサルが常に行われ、追いてこれない奴は容赦なく殴るとか!

それと黒人意識と誇りや連帯を大切にした政治的姿勢も、演奏に付随するという姿勢まで、打ち出していたとか!?

つまり、どのアルバム、どの作品を聴いていも、和みよりは疲れが出てくる仕上がりだと、私は感じています。ですから体調が良くないと、聴いていられないのが本音です。

本日の1枚は、その中でも特に黒~い魂を表現しようと目論んだ演奏集で、タイトルどおりブルースやゴスペル、R&Bに根ざした強烈な仕上がり!

録音は1959年2月4日、メンバーはジミー・ネッパー(tb)、ウイリー・デニス(tb)、ジャッキー・マクリーン(as)、ジョン・ハンディ(as)、ブッカー・アーヴィン(ts)、ペッパー・アダムス(bs)、ホレス・パーラン(p)、マル・ウォルドロン(p)、チャールス・ミンガス(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という、当時のミンガス一家が勢揃いしています――

A-1 Widnesday Night Prayer Meeting
 「水曜日の夜の祈りの集会」という、当にゴスペルなタイトルが付けられた、強烈なヘヴィハードバップです。
 まずチャールズ・ミンガスのベースが暗く蠢き、ピアノや管楽器、そしてドラムスが逐次、絡んでくるや、いきなりリーダーの激が飛んできますから、一斉にテーマを重苦しく演奏するという、怯えと激怒の雰囲気が強烈です。
 そして混濁の中、テンポがグッと上がり、ジョン・ハンディのアルトサックスが泣きを強要され、ウイリー・デニスのトロンボーンが爆裂! さらにホレス・パーランのピアノが執念深く、ブッカー・アーヴィンは激走していきます。
 もちろん背後では他のホーン奏者が叫び、手拍子足拍子、さらにミンガスおやじの唸り声と叱咤激励がドロドロした情念と激情の誘発を誘うのですから、たまりません。クライマックスでは全員入り乱れの大殺陣から、ダニー・リッチモンドのドラムスを頼りに、ラストテーマへと演奏が立ち直っていくあたりが、スリル満点なのでした♪

A-2 Cryin' Blues
 これも重苦しいブルースでありながら、チャールス・ミンガスのベースが先陣をきって蠢きますから、バンドメンバーも油断がなりません。
 ホレス・パーランは上手く乗り切っていきますが、ジャッキー・マクリーンは我侭な体質が押えきれず、思いっきり泣きじゃくってしまいます。しかし、それを見越したかのようなバックの面々が分厚いアンサンブルでフォローして、見事です。ペッパー・アダムスが縁の下の力持ち♪
 う~ん、それにしてもチャールス・ミンガスの呻き歌は、物凄いですねぇ……。

A-3 Moanin'
 ジャズメッセンジャーズのヒット曲とは同名異曲ですが、チャーリー・ミンガスは俺のオリジナルで云々と、理不尽なイチャモンを付けたという逸話が残されています。
 で、ここでの演奏は火傷しそうに熱くて、烈しい! 当にゴスペルジャズです。
 重低音から厚みのあるアンサンブル、弾みまくるビート、そしてその中からグリグリっと飛び出すジャッキー・マクリーンが痛快です!
 もちろんそこにはペッパー・アダムスやホレス・パーランの合の手、ダニー・リッチモンドの激煽りが加わって、演奏は怖ろしい様相を呈していくのです。あぁ、中でもストップタイムで自己主張を許されたブッカー・アーヴィンは、千変万化で独壇場です。ガンガン変化していく演奏スピードやアンサンブルのスリル&サスペンスも最高ですねぇ♪
 ミンガスおやじの怒りの叫びは、もう、どうでもいいほどに、メンバー全員が燃えています。

B-1 Tensions
 これもチャールス・ミンガスがベースソロで場の雰囲気を設定しますが、バンドメンバーが簡単なモチーフをキメ、自然発生的なアドリブが展開されていく不思議な演奏になっています。
 あぁ、それにしてもチャールス・ミンガスのベースソロは、烈しいですねぇ。こんな早いテンポで一瞬の隙も無い、欲求不満の解消を目論んだような感じです。
 しかしジャッキー・マクリーンやブッカー・アーヴィンはマイペースですし、ペッパー・アダムスやホレス・パーランは、それなりに気を使っているようですが……。まあ、一番、親分に忠誠を誓っているのは、ダニー・リッチモンドでしょうか。

B-2 My Jelly Roll Soul
 ジャズ創成期に活躍したジェリー・ロール・モートンをモチーフにした、ホノボノ系の楽しい演奏ですが、一筋縄でいかないのは、ご推察のとおりです。
 一応、和んでいるように見せかけながら、メンバーの心中は穏やかではないでしょう。なにせチャーリー・ミンガスのベースが、ブリブリと唸っていますから……。
 ジミー・ネッパーのトロンボーンはオトボケ気味ながら緊張感がありますし、ホレス・パーランのビアノは楽しさに怯え、ジャッキー・マクリーンは疑心暗鬼の激情節で迫っていますが、これが良いですねぇ~♪

B-3 E's Flat Ah's Flat Too
 これまたゴッタ煮風のテーマアンサンブルが恐い雰囲気のハードバップです。
 テーマからグリグリにブッ飛ばすペッパー・アダムスのバリトンサックスが、まず最高ですが、混濁の中でも我侭を押し通すジャッキー・マクリーンも強烈です。
 そして、ここでのビアノはマル・ウォルドロンに交代しており、中盤では十八番になっている情念のイタコ弾き! 負けじと痙攣気味に吹きまくりるジョン・ハンディも凄いですし、ダニー・リッチモンドの頑固なドラムスも熱いのでした。

ということで、全曲がチャールス・ミンガスのオリジナルであり、その体臭と情念が見事に黒く炸裂した演奏になっています。

ですから、今となっては、よほど体調が良くないと聴けないアルバムになってしまいましたが、若い頃は、これがジャズ喫茶で鳴り出すと、グゥ~ンと体に力が漲ってくるような感覚に襲われたものです。

で、本日、久々に昼メシ時に鳴らしてみたところ、おぉ、得体の知れないスタミナドリンクよりも、よっぽど効くぜっ! まだ私も枯れるわけにはいきませんからねぇ♪

ちなみに現在、最良のリマスターを施されたCDが紙ジャケット仕様で復刻中です。もちろん私も、今日はそれを聴いたというわけです。

コメント
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