今日は赴任地に戻るまで、霊柩車に4度、出会いました。
う~ん、こういう日もあるんですねぇ~。それで縁起が悪いとは思い込みませんが、なんだかなぁ……。
ということで、本日は暗いムードが素敵なこれを――
■Tommy Turrentien Plus Max Roach Quintet (Time)
芸能界には兄弟で活動している人が少なくありませんし、ジャズ界だけでもパウエル兄弟、アダレー兄弟、日野兄弟……等々、挙げればキリがありません。
本日の主役、トミー・タレンタインもスタンリー・タレンタインの兄として、共に活動していた時期があり、正直、弟に比べて人気も実力もかなり差がつけられている雰囲気ではありますが、忘れがたいトランペッターです。
その経歴は良く知らないのですが、1960年代前半にはブルーノートやベツレヘムあたりの有名ジャズレーベルにセッションを残していますし、マックス・ローチのバンドレギュラーだったこともあるという、陽のあたる時期に吹き込まれたのが、この初リーダー盤です。
録音は1960年1月19日、メンバーはトミー・タレンタイン(tp)、ジュリアン・プリースター(tb)、スタンリー・タレンタイン(ts)、ホレス・パーラン(p)、ボプ・ボスウェル(b)、マックス・ローチ(ds) というタフな面々で、タイトルどおり、当時のマックス・ローチのバンドがそのまんま参加しているようです――
A-1 Gunga Din
とてもグルーヴィな雰囲気に満ちたハードバップのテーマが、まず、たまりません♪ そしてベースとドラムスのコンビネーションによる重いビート、アドリブ先発のスタンリー・タレンタインのスモーキーなテナーサックスソロが、完全に全体のペースを設定してしまいます。
またホレス・パーランのピアノが仄かに暗い雰囲気で好演していますから、肝心のリーダーであるトミー・タレンタインが一番目立たない結果になっているんですが、作曲が本人ということで、ご理解願います。
実際、ハードバップの隠れた名曲だと思います。
A-2 Webb City
バド・パウエル作曲によるビバップ聖典曲のひとつですから、生半可の演奏では許されるはずも無く、ここではマックス・ローチが渾身の煽りでバンド全員を盛り立てていきます。
スタンリー・タレンタインは気合が空回り気味ですが、ジュリアン・プリースターは迷い道ながらも大健闘、そしてトミー・タレンタインは相当に熱くなったソロを聞かせてくれます。ホレス・パーランも良いですねぇ~。
そしてクライマックスがマックス・ローチとホーン陣のソロチェンジ! 結局、ドラマーが一番目立ってしまったというオチがついています。
A-3 Times Up
トミー・タレンタインのオリジナル曲で、テーマ部分のアンサンブルが見事な演奏になっていますが、この人の書く曲は独特の暗さが魅力ですねぇ♪ まさにモダンジャズっていう感じです。
アドリブパートでは先発のジュリアン・プリースターが新しい感覚も交えて熱演ですし、スタンリー・タレンタインはタフ&ジェントルなハードボイルド節! トミー・タレンタインも「泣き」を存分に入れた好演だと思います。
またリズム隊のグルーヴィな雰囲気も最高で、ポリリズムでありながらビートの芯がぶれないマックス・ローチは、真の天才としか言えません!
A-4 Long As You're Living
トミー・タレンタインとジュリアン・プリースターの共作オリジナルで、これもモダンジャズの隠れ名曲だと思います。単純なメロディなんですが、たたみかけるような無機質なノリが、なんとも言えません。
アドリブパートでも、各々がクールにキメて本音を隠している雰囲気がハードボイルドで、そこだけ聴いていると、日活アクション映画のサントラ音源のようでもあります。
そしてクライマックスは、マックス・ローチが至芸のシンバルソロ!
B-1 Too Clean
ハードバップ100%のテーマは、これもトミー・タレンタインのオリジナルですが、それにしても良い曲ばっかり書きますねぇ~♪ またまた名曲!
ですからアドリブパートも充実の極みで、スタンリー・タレンタインが豪快にブローすれば、トミー・タレンタインは余裕の歌心で素晴らしいソロを展開していますし、ジュリアン・プリースターも新感覚で爆裂しています。
もちろんリズム隊はグルーヴィな快演で、ホレス・パーランが真っ黒ならば、マックス・ローチは鬼神の凄さ! 容赦無いバッキングが強烈です。
B-2 Two, Three, One, Oh !
これまたテーマが最高です♪ もちろんトミー・タレンタインのオリジナル曲で、ソフトバップ系なんですが、哀愁たっぷりでノリの良い演奏は、ウケないはずが無いという♪
しかし残念ながら、全員のアドリブがイマイチ、煮えきっていません。
う~ん、これは、どうしたことでしょう……? なんか難しいコード進行とか曲構成なんでしょうかねぇ……。
B-3 Blues For J.P.
しかしオーラスはグルーヴィな大ブルース大会!
作曲はホレス・パーランなんですが、またまた曲が良すぎて困ったもんですよ♪
アドリブ先発のジュリアン・プリースターは曲そのものが自分に捧げられたと思い込んだのか、あるいは実際にそうなのか、とにかく粘っこく熱いフレーズで迫ってきます。
そしてホレス・パーランが、作者の強み活かしての本領発揮で、これまた良いんです。押えた感情表現というか、そう簡単には熱くならないぞっ! という決意表明のようなクールさがあります。あぁ、逆も、また真なり!
さらにトミー・タレンタインは、ちょっと陰湿な雰囲気に終始していますが、そこが自己の資質にあっているか、なかなかに魅力的なハスキー節を聞かせてくれますし、反対に豪快な男気に溢れた、堂々たるソロでリスナーを魅了するのが、スタンリー・タレンタインです。
ということで、実はアドリブそのものは、全員がベストの出来ではなんですが、演奏曲が全部、最高なんですねぇ♪ トミー・タレンタインは作曲の方が演奏力よりも優っていると思います。「Webb City」のように全くの他人が書いた曲さえも、ヘッドアレンジで薬籠中のものとする力量も流石です。
したがってアルバム全体に何とも言えない暗い雰囲気があって、それがモダンジャズのハードボイルドな部分と見事にリンクしており、失礼ながら、これでアドリブがもっと凄かったら、大化けした作品かもしれません……。
とは言え、私はけっこう好きです、こういうのが。