OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

真似っこ part-2

2007-02-14 18:01:06 | Weblog

青森の八甲田山で雪山遭難がありましたですね。

ちょっと不謹慎かもしれませんが、映画「八甲田山」を思い出しました。

あの映画の中で加藤嘉が「1月と2月の八甲田は、白い地獄だよ」と言っていましたが、本当ですねぇ……。

ひとりでも多くの人が助かりますように、祈念しています。

ということで、本日はこれを――

The Clinica 21 Concert / Giampaolo Ascolese Trio (Philology)

全然知らない人のリーダー盤なんですが、実態はスティーブ・グロスマンのワンホーン演奏ですから、聴かずに死ねるかの心意気でゲットしたCDです。

そう、スティーブ・グロスマンと言えば、私の世代には避けて通ることの出来ないサックス奏者で、まだ十代だった1970年頃にマイルス・デイビスに雇われて一躍脚光を浴びた天才です。もちろんそのスタイルはジョン・コルトレーンの影響が大きい激烈モード派なんですが、駆け出しの頃には未熟なフレージングとアドリブ展開の単調さが、ロックビートでブリブリ突っ走っていた当時のマイルス・デイビスのバンドではロックギター的なニュアンスを表出していて、特にソプラノサックスが、なかなかに相性が良く、人気者となりました。

そして後にはエルビン・ジョーンズのバンドに移り、ここで本領発揮のコルトレーン節を炸裂させて、決定的な存在感を示しすようになり、とにかく疾風怒濤の演奏を常に期待されるようになったのが、1970年代のスティーブ・グロスマンでした。もちろんフュージョン系の演奏にも手を染めています!

しかしそれが一段落した1980年代中頃から、突如としてソニー・ロリンズ派に鞍替えしての4ビート回帰! これには多くのファンも仰天だったと思います。実際、当時のジャズ喫茶では、そういう傾向のスティーブ・グロスマンのアルバムが賛否両論でした。

ですから、このアルバムのように、ピアノレスのテナーサックストリオによるライブセッションとくれば、否が応でもソニー・ロリンズ畢生の名演集「ヴィレッジ・バンガード(Blue Note)」を思い起こしますから、興味津々で入手したというわけです。

録音は1999年12月5日、メンバーはスティーブ・グロスマン、Gianlua Renzi(b)、Giampaolo Ascolese(ds) という面々で、演目が最高に粒揃いです――

01 Whims Of Chambers
02 Over The Rainbow
03 Oleo
04 On Green Dolphin Street
05 Four
06 Body And Soul
07 Funji Mama
08 I Hear A Rhapsody
09 I Mean You

どうです♪ 聴いてみたくなるでしょう~♪

で、演奏パターンは、ほとんど同じです。つまりスティーヴ・グロスマンが全体をリードしてドラムスとベースがツッコミをいれつつ、全体で盛り上がっていくという構成が終始続くのです。

まず「Whims Of Chambers」は偉大なポール・チェンバース(b) が書いたオリジナルブルースを、曲想を大切にしつつ飄々と演奏するスティーヴ・グロスマンの余裕が流石♪ それも既に述べたように、徹頭徹尾、ソニー・ロリンズのスタイルで押しまくりですからねぇ~、呆れ果てるほどの物真似ぶりが見事というしかありません。

また本家ソニー・ロリンズが書いた有名ジャズ曲「Oleo」でも、お前、よくやるなぁ~! リズムアプローチや音色、息遣いまでも本家にクリソツなんですねぇ♪ 否、「♪」なんて書いたらいけないのかもしれませんが、それにしても痛快です。

そして「Over The Rainbow」や「Body And Soul」というスタンダードのスロー系演奏では、テナーサックス本来の極太の音色と少~しのコルトレーン節が出るんで、安心してしまいます。

それとラテンビートの「Funji Mama」では、ソニー・ロリンズにしか許されないはずの豪放磊落なカリプソグルーヴと4ビートの併せワザがニクイところです。ドラムス&ベースとの鬩ぎ合いも見事といって良いのか、これはソニー・ロリンズごっこ?

あと快適な4ビートに終始する「On Green Dolphin Street」や「I Hear A Rhapsody」あたりでは、笑っちゃうほどに本家そのまんまです。これでいいのか、スティーブ・グロスマンともあろうものが!? アンタの気持ちはどうなんだっ! と思わずタメグチで訊きたくなります。

さらにオーラスの「I Mean You」では演奏前のカウント掛声まで、ソニー・ロリンズの物真似やっているんか!? 許せん!

と言いつつも、実は物凄く楽しい演奏ばかりです♪

本当は、こういうのはパロディとしてマジに聴いているとバカを見そうな雰囲気なんですが、そう考えて深刻になるのは、かえって思うツボなんでしょうねぇ……。告白すれば、こういうのは好きですし、なによりも演奏が充実していますから、物真似演芸にでも接している気分で楽しめばOKだと思います。

実際、痛快なんですよっ♪

最後になりましたが、脇を固めるというか、実はリーダー Giampaolo Ascolese はベテランらしい風貌と同様に、分かっているっていうドラムスが流石です。ただし録音の按配でしょうか、もう少し、大きな音でミックスして欲しかったのが本音ではありますが。

またベースの Gianlua Renzi は、写真を見る限りでは若手らしいですが、なかなか野太い音で正統派に撤しての大健闘です。アドリブソロもケレンの無い真摯な姿勢が好ましく、けっこうバンドの要になっているのかもしれません。

ということで、これはスティーブ・グロスマンというよりも、ソニー・ロリンズの演奏という雰囲気までも楽しめる徳用盤と言っては語弊がありますが、これもジャズの醍醐味として楽しめるなら、幸せは保証の1枚だと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする