OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

地味じゃないフォレスト

2007-02-01 17:17:00 | Weblog

この冬、一番冬らしくなって、あたりは雪景色です。

交通事故も多いらしく、朝の通勤時間帯には2件ほど事故車を見て、安全運転に心がけましたが、こういう寒い日には暖かい音が聴きたくなります。

そこで――

Out Of The Forrest / Jimmy Forrest (Perstige)

ジミー・フォレストはタフ・テナーとかテキサス・テナーとか称される、所謂コテコテ系の人なんですが、生まれは南部ではなく、セントルイスの出身です。

これはソウルミュージックの世界でもそうなんですが、コテコテ系といえども、北部や都市出身者の演奏には、ある種の洗練された雰囲気があって、ジミー・フォレストも例外ではありません。

けっこう派手にブローしていても、イナタイ雰囲気よりは洒落た感覚が滲み出ているように感じます。

もちろん黒っぽくR&B色の強い演奏は得意中の得意であり、1951年には「ナイトトレイン」なんていう琴線直撃のヒットも放っているほどですから、そのスピリットは本物です。

当然、モダンジャズ本流の作品も多く、後年はカウント・ベイシー楽団の看板スタアにもなっていますが、このアルバムは最もハードバップ色の濃い演奏をしていた時期の作品です。

録音は1961年4月18日、メンバーはジミー・フォレスト(ts)、ジョー・ザビヌル(p)、トミー・ポッター(b)、クラレンス・ジョンストン(ds) という、興味津々な顔ぶれです――

A-1 Bolo Blues
 ジミー・フォレストのオリジナルというスロ~ブル~スです。
 初っ端にこんな曲を据えてしまうアルバム作りが全てを物語っている、深い味わいがたまりません。
 ジミー・フォレストは決して一本調子で無く、深い溜息のような咽び泣きから熱い魂の迸りまで、当にソウルテナーの真髄に迫っていますし、気になるジョー・ザビヌルは、もちろん後年、ウェザーリポートで大活躍するあの人と同一人物ですが、ほとんどジュニア・マンス(p) の如き粘っこいタッチの好演です。

A-2 I Cried For You
 ヘレン・フォレスト(vo) のヒット曲として有名なだけに、どんな解釈になっているか、大いに楽しみでしたが、ジミー・フォレストはサブトーンを駆使した正統派のテーマ吹奏から、幾分、中間派っぽい楽しいノリを全面に出して、軽やかにスイングしています。
 とはいえ、その黒い「泣き節」は充分に魅力的で、出し惜しみしない美味しいフレーズとキメは流石だと思います。
 またジョー・ザビヌルは神妙にハードバッブをやってくれます。

A-3 I've Got A Right To Cry
 これがまた、黒~い演奏です。スローテンポなんですが、原曲の持つジェントルな雰囲気を大切にして、尚且つ、黒人ジャズの熱いフィーリングが全開という名演だと思います。あぁ、このサブトーン&力みの音色!
 言ってみれば、キャバレーモードかもしれませんが、このソフトな情感は一級品♪ この余裕と貫禄はバンド全体をグイグイとスイングさせて、リスナーを桃源郷に誘いこむ、間然することの無い境地だと思います。

A-4 This Can't Be Love
 いきなり軽いジョー・ザビヌルのイントロから、黒っぽいスマートさを存分に発揮したジミー・フォレストのテーマ吹奏が楽しい限りです。
 もちろんアドリブパート突入の際には力みのフレーズで、後はもう、グイノリの展開♪ これでもかとブリブリの音ばっかり出してくれます。
 またジョー・ザビヌルは、ちょっと迷い道ながら、本場アメリカへの憧れを滲ませて、自己満足的幸せに満ちたピアノを披露しています。 
 う~ん、ラストテーマのジミー・フォレストが、これまた良いですねぇ。

B-1 By The River Saint Marie / セント・マリー鐘
 おぉ、これはビング・クロスビーのヒット曲じゃないかっ!
 ここではホンワカと黒っぽく、余裕に満ち溢れたバージョンとして仕上げていますが、ジミー・フォレストはソフトなジャズセンスで迫ります。歌心が素敵ですねぇ~♪
 またリズム隊もメリハリのある好演で、トミー・ポッターのベースソロも全てが「歌」という素晴らしさです。

B-2 Yesterdays
 出たっ! ジミー・フォレストが十八番の泣きが心に染み入る名演です。
 まずテーマ吹奏が思わせぶりながら、グサリと核心を突くソウル魂があって、最高です。もちろんサブトーンの魅力、力み節のエグミのバランスは最高ですし、ゆったりとグルーヴィに盛り上げてくワザは、もうトリハダです♪
 リズム隊とのコンビネーションもバッチリですねぇ、3分52秒目以降の展開には眩暈がしてきますよ。

B-3 Crash Program
 これもジミー・フォレストのオリジナルで、バリバリ飛ばす痛快な演奏です。そしてこういう雰囲気ならば、俺に任せろのクラレンス・ジョンストンが大ハッスル! ジョー・ザビヌルは完全にジュニア・マンスのフレーズを盗み弾きです♪ もちろん親分のジミー・フォレストは笑って許すような、爆裂ブローの連発です。 

B-4 That's All
 オーラスは私の大好きなスタンダード曲ということで、素直に和みます。
 一転してビル・エバンス調というジョー・ザビヌルのイントロ&伴奏も微笑ましいところですが、ジミー・フォレストのサブトーンが優しくテーマメロディを奏でてくれれば、もう夢見心地の安らぎに満たされるのでした。
 そしてジョー・ザビヌルが繊細な新感覚で勝負に出ているあたりは、やはり只者じゃあないと思います。

ということで、正直言うと、ジミー・フォレストには、これ以上の出来栄えの作品もありますから、決して名盤では無いのですが、時偶、取り出して聴きたくなるという、魅惑の1枚です。

マニア的にはジョー・ザビヌルの参加が全てという視点もありますが、これも正直に告白すれば、ジャズ喫茶で最初に聴いた時にはそんな事には気づかず、入手する段になって初めて仰天した記憶が鮮明です。

まあ、こういう楽しみがあるから、ジャズを聴くのは止められないんですが♪

コメント (1)
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