もう、完全に春! そういう雰囲気です。
上野公園じゃ、桜が開花したとか!?
なんかウキウキするのが早すぎるのも、考えものですが、まあ、いいか……。
ということで、本日は、これです――
■Live In Zurich 1960 / Miles Davis (Jazz Unlimited)
なんだかんだ言ったって、4ビートをやっているマイルス・デイビスは、良い!
ジャズファンなら、これを否定する人はいないと思われますがっ?
ですから、海賊盤の類も沢山出ていますが、これはメンツからして最も嬉しい時期のブツでしょう。1993年に発売されたCDです。
録音は1960年4月8日、欧州巡業時のスイスにおけるライブで、メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds) という、歴史的クインテットです――
01 If I Were A Bell
ブレスティッジの通称マラソンセッションで残された名演ゆえに、ステージでも、これが出ないと納得出来ないのファン心理を鋭く突いた1曲目♪ こういうお客さんとの意志の疎通を大切にするあたりが、マイルス・デイビスの良いところだと思います。
肝心の演奏は、もちろん例のイントロがピアノで奏でられ、ジミー・コブのシャープでドライなブラシ、ブンブンブリブリのポール・チェンバースのベースが土台を作りますから、マイルス・デイビスは通常よりも、やや早いテンポでミュートの歌心を存分に聞かせてくれます。
気になる録音状態は、リズム隊が大きく録音されていて、特にジミー・コブのドラムスがド迫力! バスドラとスネア&タムでキメる、得意のビシッとしたアクセントがたまりません♪
反面、ピアノの音量が不足気味ですが、まあ、良いでしょう。
またジョン・コルトレーンは本来が音の大きな人みたいですから、ここでの無謀な大暴れが意地悪いほどに強く録音されています。しかし、これでも物足りない雰囲気になるのは、何故でしょう? ついグイグイとボリュームを上げてしまう演奏です。
02 Fran-Dance
マイルス・デイビスの繊細な歌心が楽しめるオリジナル曲♪ のはずなんですが、実はリズム隊がハッスルしすぎた雰囲気が濃厚です。しかもジョン・コルトレーンが唯我独尊のシーツ・オブ・サウンド! 歌心もヘチマも無いという……。
まあ人生の上昇期にありがちな若気の至りかもしれませんが、一説にはマイルス・デイビスのバンドを辞めたくて仕方なかった時期のジョン・コルトレーンですからねぇ……。リズム隊も同調してしまったのかもしれません。
ただしウイントン・ケリーは大人の姿勢で、良いアドリブを演じています。
03 So What
これが出なけりゃ収まらないという、この時期のマイルス・デイビスには欠かせない、説明不要の演目です。
ここでは、まずテーマ部分の雰囲気と勢いが素晴らしく、ジミー・コブのタイトなドラムスとポール・チェンバースのリードベースが最高! マイルス・デイビスも初っ端から熱いノリで、しかもクールなアドリブメロディを吹きまくりです♪ カッコイイ! リズム隊とのコンビネーションも隙がありませんねぇ~♪ 本当にジミー・コブが、分かっているという感じです。
そしてジョン・コルトレーン! もう完全にインプレッション状態ですよっ! ツッコミが烈しすぎて、リズム隊が置き去りというか、浮いています! これではリアルタイムのお客さんが、かわいそう……。というか、今から思えば、当然、コルトレーン宇宙に連れ去られた羨ましさがあるのですが、とにかく烈しすぎます!
しかしリズム隊も、必死の追走ですねぇ~♪ 自分達だけのパートになっても、ウイントン・ケリーは自己のペースを失っているほどで、アドリブでは最初、十八番のフレーズが出なくなっています。
ただしそこを煽るのが、ジミー・コブのリムショット! こういう美しき流れが黄金期の輝きだと思います。後半のお約束は、やっぱり楽しいです♪
04 All Blues - The Theme
この時期のマイルス・デイビスならではの、深遠なブルースが楽しめる名演です。
相変わらずジミー・コブのブラシ&スティックのバランスが素晴らしく、演奏全体の思わせぶりな雰囲気が和らいでいます。
そしてマイルス・デイビスがジックリとアドリブを演じていくバックでは、ポール・チェンバースの定型フレーズが絶妙の味♪
しかしジョン・コルトレーンは、ここでも逆ギレの暴走をやらかしてくれます。最初は神妙なんですけどねぇ……。だんだんに所謂スピリッチャルな雰囲気が強くなっていきますから、聴いている私は、またまたボリュームを上げてしまうのでした。
ちなみに続くリズム隊のアドリブパートでは、ウイントン・ケリーがネバリのファンキームードを存分に聞かせてくれますよっ♪ けっこうビル・エバンス風になる瞬間もあるんですが、本音は俗世的快楽追求というか、やっぱりジャズはこれが王道かもしれません♪
そして最後のテーマ曲は、何時もながら痛快! 私としては、このメンツで、こういうのを長く聴きたいんですがねぇ……。
ということで、だいたい1時間ほどのライブ音源になっています。つまり1曲毎の演奏時間が長いんですねぇ~。もちろんそれはジョン・コルトレーンの存在が全てです。一端吹き出すと、もう止まらないという恐ろしさ!
これには流石のマイルス・デイビスもサジを投げたんじゃないでしょうか? 帰米後、ついにジョン・コルトレーンは正式にバンドから独立していきますが、つい3年前には、悪いクスリの所為でマイルス・デイビスからクビを宣告され、途方に暮れていた姿とは逆に、堂々と親分に盃を返したあたりが、時代の流れだと思います。
無頼非情!