何時も使っているネコ耳秘書が、優雅にも3週間の休みをとって、ニュージーランド方面へ遊びに行ってしまったので、今日からは派遣の秘書がやって来ましたが、この人が仕事の呑み込みは早いし、接客の応対も素晴らしく、加えて凛とした姿勢と面立ち、さらに巨乳という、ほとんど小池栄子みたいな♪
ちょっと吃驚でした。
ということで、本日の1枚は――
■Kenny Drew Trio (Blue Note)
1980年代から日本のレコード会社によって製作された一連の作品によって、すっかり人気者になったケニー・ドリューですから、好きなピアニストなんていうと、ちょっと恥ずかしくなるのが、ジャズ者の哀しいサガです。理由は、あえて述べませんが……。
しかし作家がデビュー作に収斂していくのと同様に、ジャズ演奏家も初期の録音に、その全てが出ている人が少なくないと感じます。
ケニー・ドリューも、そのひとりでしょう。ですから、後年のアルバムにしても基礎はデビュー当時となんら変わらないはずなんですが、どうせ聴くなら初リーダー盤を堂々と楽しんだほうが、精神衛生上、よろしいかと思います。これも理由は、あえて述べません。
で、このアルバムは10吋盤で、録音は1953年4月16日、メンバーはケニー・ドリュー(p)、カーリー・ラッセル(b)、アート・ブレイキー(ds) となっていますが、選曲も私好みというか、抜群なんですねぇ♪
A-1 Yesterdays
暗い雰囲気に満ちたオリジナル曲の味を忠実に再現したのでしょう、最初は無伴奏でゴージャスにテーマを弾いてくれるケニー・ドリューの真摯な姿勢が、潔いと感じます。
しかしインテンポしてからは、アート・ブレイキーに烈しく煽られて、アップテンポでガンガン、ブッ飛ばします。リズムへのアプローチやアドリブフレーズの要は、後年と何ら変わらないものがありますが、非常に鮮烈なムードに満ちているのは、時代のマジックでしょうか? とにかく快演です。
A-2 Stella By Starlight
リラックスムードが横溢した解釈になっているあたりが、素直で良いと感じます。 まあ、この曲に関しては有名スタンダードなんで、星の数ほどのジャズバージョンが残されていますから、これが決定版とは言いませんが……。
A-3 Gioria
ケニー・ドリューのオリジナル曲で、ズバリ、和みます。
緩やかなテンポの演奏なんで、ちょっとラウンジ系という雰囲気ですが、テーマ~アドリブにかけて全体の完成度が高く、多分、何度演奏しても、これと同じパターンになってしまうかもしれません。その意味では純粋ジャズでは無い?
否、これは立派なジャズだと思います。
A-4 Be My Love
一抹の泣きが入ったメロディ展開が、個人的には大好きなスタンダード曲ですから、ここで最初っからガンガン行ってしまうケニー・ドリューの演奏には???の部分もあります。しかし、ここまで熱く演じてくれれば、文句を言うことも出来ません。
ビンビン弾むカーリー・ラッセルのベースも怖ろしく、ビシビシ煽るアート・ブレイキーは鬼神の如くです。もちろんケニー・ドリューは開放的に弾きまくり♪ ちゃ~んと自分だけの「節」があるアドリブを聞かせてくれるのでした。
B-1 Lover Come Back To Me
グルーヴィな雰囲気のイントロが、まず素晴らしく、続けてグイグイと弾いていくテーマの解釈、さらにツッコミ気味のアドリブという、本当に勢いのある演奏です。
しかし、それゆえに落ち着きが無いというか、聴いていて疲れます。まあ、それがジャズの醍醐味なんでしょう。そして後年には、なかなか聴くことが出来なくなったフィーリングだと思いますので、結果オーライです。
B-2 Everything Happens To Me
あぁ、これは良いですねぇ~♪ 元々、私が好きな曲だとはいえ、力強い解釈が裏目に出ておらず、仕込まれたキメも嫌味になっていないと思います。甘さに流れていないあたりが、賛否両論でしょうか……。
ケニー・ドリューの非凡なところが聴ける演奏だと思うのですが……。
B-3 It Might As Will Be Spring
これも曲そのものが好きでたまりませんから、超アップテンポで演奏されたこのバージョンには意表を突かれ、茫然自失したのが第一印象でした。後年のケニー・ドリューならば、ボサノバ調か大甘の世界をやってくれるんでしょうが、う~ん……。
とすれば、後年の姿勢を一概に貶すのは大間違いという結論になりますねぇ。
まぁ、ハードバップ勃興期には、こういう解釈あったという証左になりましょうか、なかなか興味が尽きないところでもあります。実際、カッコイイ演奏なんですよっ!
B-4 Drew's Blues
オーラスはタイトルどおり、ケニー・ドリューのオリジナルブルースで、グルーヴィな快演になっています。
なにしろイントロからしてファンキーそのものですし、カーリー・ラッセルのベースの入り方とか、続くテーマ解釈あたりは、もう完全にハードバップになっています。もちろんアドリブは粘っこく、また弾みまくっています。
アート・ブレイキーとのコンビネーションも最高で、なんとラストテーマでは感極まった誰かの叫び声(?)まで録音されています。あぁ、短いながらも、本当に強烈な出来栄えです♪
ということで、1曲あたりの演奏時間は短いんですが、非常に完成度の高い作品になっています。
録音データ的には、ちょうどバディ・デフランコ(cl) の有名セッション盤「Mr.Clarinet (Verve)」の翌日に行われた事になっていますから、気合も充実していたのでしょう。またハードバップ前夜というか、当時、ほとんど閉塞状態と言われていた黒人ジャズの滾る情熱みたいなものが、残されているのかもしれません。もっとも演奏者側からすれば、そんな事はどーでもいいのが、真実?
とにかく、何時聴いても味わい深く、新鮮なアルバムだと思います。