OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

小鍋立てにジャズ

2007-02-04 18:40:11 | Weblog

おぉ、赴任地に戻ってみれば雪景色!やっぱり、冬ですねぇ~。

こういう日には鍋物を1人でつつき、こんなアルバムを聴いてみました――

Midnight Sugar / 山本剛 (three blind mice)

ジャズは本来、大衆音楽なので、楽しいのが基本なんでしょうが、1960年代頃からはフリーとかモードなんかが主流となって、しかも本質はエキセントリックなビバップにありとするもんですから、難しいもの、極端に言えばデタラメやっている音楽とされる事まであります。

さらに我国では、ジャズ喫茶でジッと腕組みして聴く雰囲気が定着している所為か、なおさら悩んで聴くものという風潮まで蔓延していたのが、1970年代前半までの状況でした。

そして、ジャズが好きだ→ジャズを理解しているということで、ある種の優越感みたいなものから、聴く姿勢までもツッパリになってしまう恐れがあります。

そういう私も、1970年代の若かりし頃は、自分の好きなアルバムに出会っても、素直に好きだっ! と言えない時期がありました。

本日の1枚は、当にそうしたアルバムです。

というのも、演奏のキモがあまりにも日本人らしいというか、コブシとか納豆臭さが全開の歌心なんですねぇ~♪ まあ、異論があることは承知していますし、お叱りも覚悟しておりますが!

とにかく聴いていて、日本人で良かったぁ~♪ とシミジミ感じ入るのです。

録音は昭和49(1974)年3月1日、メンバーは山本剛(p)、福井五十雄(b)、小原哲次郎(ds) というピアノトリオです――

A-1 Midnight Sugar
 山本剛のオリジナルというスロ~ブル~スですが、元ネタは「Afterhours」でしょう。でも、そんな事はどーでも良いんです。
 初っ端から福井五十雄の重心の低いベースが唸り、山本剛のピアノが、これまた重低音域を使いながら入ってくれば、辺りは忽ち真っ黒になっていきます。
 ちなみにこのアルバムは録音が秀逸で、実は「three blind mice」というレーベルは音質・録音の素晴らしさもウリになっていましたですね。
 肝心の演奏は、ネバリとかモタレに絶妙のコブシがあって、それが日本人にしか出来ないワザだと思うのです。黒人のやる同種の演奏よりも、よっぽっどイイ!
 と私は思っていたのですが、当時は、こういう琴線直撃スタイルをダサいとか、日本人丸出しの納豆臭さとして、聴くのが恥ずかしいという雰囲気が大勢でしたので、私も「これがイイ♪」なんて、とても言い出せませんでしたねぇ……。
 ですから、自宅で密かに聴いていたのですが、あぁ、今日聴いてみると、やっぱり良さがあります。山本剛の素直なメロディ感覚は、実に素晴らしいと思います。

A-2 I'm A Fool To Want You
 ジャズでは定番の有名曲で、「泣き」のあるメロディが人気の秘密になっていますが、山本剛は、そのあたりの掴みが抜群に上手く、テーマでの「間」の取り方から最高の思わせぶりを演じてくれます。
 もちろんメロディ感覚が秀でていますから、決してダレません。スローな展開の中では、むしろ次の1音が待ち遠しい感じです。そして裏切るような音やフレーズは出してこないのです。
 演奏は中盤からテンポを上げて、楽しい雰囲気になりますが、このあたりはエロル・ガーナーとか菅野邦彦に近いノリになって、ますますゴキゲンです♪ 歌心のあるアドリブが良いですねぇ~♪ 5分を過ぎたあたりからのフレーズとノリは、特に好きです。転がるようなアクセントと納豆のようなネバリのウマさは、この人だけの持ち味でしょうねぇ。
 控えめながら、小原哲次郎のブラシも上手いと思います。

B-1 The Nearness Of You
 これも人気スタンダードですが、通常よりも早いテンポで演奏し、山本剛だけのネバリのフィーリングを存分に聞かせてくれます。この独自の「間」の取り方が、あまりにも日本的なんで、当時はダサいとされたんですが、私は大好きですし、大方のファンも、そこが好きだと思います。
 しかもそこを埋めていくベースとドラムスが、また上手いです!
 それとアドリブの歌心は、これも日本人が大好きなメロディの作り方というか、ジャズピアノの良いとこ取りという雰囲気で、絶妙です♪ 楽しければ、いいじゃないですかぁ~、と当時、素直に言えなかった自分に自己嫌悪する瞬間まであるほどです。

B-2 It Could Happen To You
 これまたピアノトリオでは必須のスタンダード曲♪
 このアルバムと同時期に流行っていたケニー・ドリューの「ダーク・ビューティ(Steepl Chase)」ではウリになっていた曲でもありましたから、ここでのバージョンも大いに気になった記憶があります。
 で、結論はスローな展開でジンワリと迫ってくる演奏が、個人的に、やや退屈でもあります。しかし、その歌心と盛り上げ方は、クサミが強いほどの琴線直撃型です。つまりアクが強くて、好き嫌いがあるかもしれません。

B-3 Sweet Georgia Blues
 スタンダード曲の「Sweet Georgia Brown」から曲想をいただいた、山本剛のオリジナル・ブルースで、ズバリ、ゴキゲンです♪
 快適なテンポで、ひたすらにスイングする山本剛は、あまりにも素直で、聴いていてちょっと恥ずかしくなるほどですが、いやいや、これがジャズの楽しさ、魅力でしょう♪ まあ、こういう演奏をやってしまうところが、リアルタイムのジャズ喫茶で軽く扱われた証かもしれませんが……。

ということで、演奏しているメンバーは、ことさら日本人を意識しているはずは無いと思いますが、出てくるノリは明らかに本場物とは違っています。特に「間」の取り方とかコブシ、ですねっ♪

それを本物じゃ無いとか、言われたもんですから、聴かず嫌いをしているファンも多いと思われます。私の場合も、今、こうやって「愛の告白」めいた文章を書いていますが、確かに聴いていて、ちょっと恥ずかしくなるような部分は、確かにありますねぇ。でも、そこがイイ! と素直に言えるのは、私のツラの皮が厚くなった所為でしょうか……。

どうか、虚心坦懐に、お願い致します。

コメント (4)
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