日本の心・さいき

日本の文化を通じて、世界平和を実現させましょう。

小児医療と親御さんの協力

2008-05-10 11:36:14 | Weblog
 一小児科医の意見として、参考程度に聞いて頂ければ幸いです。
 熱が急に上がって危ない状態になるのは、「脱水」と「けいれん」だと思います。
 けいれんは、熱が上がる時に、手足が冷たくて、顔色が青白くて、きつがっている時に起き易くなります。上がってしまって、手足が温まっると、それ以後にけいれんが起きることは少なくなります。たまに、上がってからけいれんが起きる子もいますが、マレです。
 熱性けいれん既往の子で、上がる時と上がってから又起きた例もありますが、マレです。日本人は、10人に1人近くあるとも言われています(けいれんの多い国民かな?)。
 座薬を上げたせいで、又、急に上がる時にけいれんが起きてしまった子どもさんを何人も診てきています。けいれんの大半は、長く感じますが、その殆どは5分以内で止まります。けいれん中は、刺激をしない方が賢明。心配な親御さんは、けいれん止めの座薬(ダイアップ、8Kgだと4mg、12Kgだと、6mg)を前もってもらっておいて、サッと使ってもらっている。
 熱性けいれんで後遺症が起きることはまずなく(100%ないと言い切る先生もいますが)、何度も起きれば、脳波の検査、出来れば、頭のCTの検査も必要かと思います。けいれんに左右差があったり、熱が余り高くないのにあったり、(軽い強直性けいれんがあったりなかったりした時間も含めて)20~30分以上あったり、お産の時に難産であったり、神経の障害を元々持っていれば、内服が必要なケースになる場合もあるかと思いますが、その時には、ちゃんと検査をする必要があるかと思います。
 私見ですが、いつも熱冷ましの座薬を使っていると、自分で治す力がなくなるのではと思っています。せっかく体が熱を上げてウイルスと闘っているにに、熱冷ましで無理に下げることで、ウイルスが元気になって、長引くことにもなり兼ねません。
 ウイルスでなく細菌が原因で頭にでも行ったら怖いと言われる親御さんが多いのですが、私自身は、前もって抗生剤を上げても、細菌性髄膜炎になる場合はなるのではと、思っています。不必要に抗生物質をあげることで、インフルエンザ桿菌や肺炎球菌(中耳炎や副鼻腔炎の原因菌としては、7割前後を占めていますが)の耐性菌につながらなければいいがと、そちらの方がより心配です。抗生物質で、腸にいるいい菌も死んでしまって、かえって免疫力が落ちることも充分に考えられるからです。(強い抗生剤の大量投与後に、細菌感染に掛かりやすくなる場合もあるかと思います)

 熱をどうしても下げたい時は、頸動脈が通っている頸部や大きな動脈が傍を通っている脇や鼠径部を少し冷たくした濡れタオルで拭くといいと思います(これが一番いいのではないでしょうか。20~30分すると、下がりますが、あくまでも、これは、本人がきつくて我慢できそうでない時に限るかと思います)。
 熱の原因の9割近くはウイルスで、(インフルエンザやヘルペスには、早期に使用すれば、特効薬がありますが)西洋医学で安全に使える西洋医学の薬はないと私は思っています。多くの親御さんが、アセトアミノフェンが安全と思っている様ですが、それによる自殺がヨーロッパで多くて、問題になっていますし、薬物中毒(肝障害)で一番多いのは、アセトアミノフェンではないでしょうか。アセトアミノフェンは、痛み止めとしても、日本では、頻用されています。
 基本的には、座薬は、1日1回、飲み薬だけだと、1日2回、5日間までと言うのが、一般的ではないでしょうか。
 私の場合は、漢方薬をよく使っています。漢方薬は、薬店でも気軽に買えますが、その使い方には、やはり、注意が必要だと思います。アセトアミノフェンが、痛み止めにも熱冷ましにも使われ、体質も関係ない様な感じで使われているのに対して、漢方薬は、オーダーメイド的な使い方で、それなにに難しく、基本的には、証を合わせないといけません。ただ、もしも間違っても、長く使わなければ、それで命を落とすことは、ありません(短期に使用しての死亡例、日本ではないと思います)。
 東洋医学では、医食同源と言って、食事が薬との考えです。例えば、塩でも、ずっと沢山取っていると、その内に、血圧が上がってくるでしょう。純粋に取り出した西洋医学の薬といつも摂っている食べ物の中間に漢方薬があると思えば分かり易いかと思いますが。

 私の使い方は、以下の如くです。
(葛根湯)最も頻回に使っています。上気道炎やインフルエンザだけでなく、急性胃腸炎でも私の場合は、よく使用しています。初め服用する時に、2回分飲むと、より効く様です。アセトアミノフェンが、起き始めに飲むと却って長引き、治りかけに飲むと、より早く熱が下がるのとは反対に、葛根湯は、出来るだけ早く使わないと効きません。ゾクゾクっとして、熱の上がる前に使うのが一番効果的ですが(48時間以上経つと、もう、効果が半減してしまいます)、それなりの注意点があります。心臓の悪い人、虚弱なお子さん、元々熱が高くならない子どもさんには、勧められません。
(白虎加人参湯)小さな子どもさんで、突発性発疹症を疑った時には、私は、よく使っています。3日の熱が、2日になったりしています。熱が高い、喉が渇いて水をよく欲しがる時に、よく使います。
(桂枝湯)体の弱い子どもさん、脈の弱い子どもさん、汗をよくかく子どもさんにしばしば使用しています。平熱が元々低くて、熱が出ても37度5分ぐらいで、それでも、熱できつがる場合などです。
(柴胡桂枝湯)ちょっと経過が経っていると、柴胡桂枝湯が効きますが、これを前もって予防的に、2週間おきに3日連続投与をしていると、経験的に、水痘や流行性耳下腺炎やインフルエンザになっても、軽くなっています(かなりの例で、これを経験しています)。又、ロタウイスルなどのウイルス性の急性胃腸炎の予防にも、確かに、効いている様です。
 他に、解熱剤として、黄連解毒湯、小柴胡湯、麻黄湯、小柴胡湯加桔梗石膏、升麻葛根湯(麻疹などの発疹のあるウイルス疾患の場合)、チクジョウンタントウなどを使用しています。

*昨今の小児の時間外が多くなっているのは、患者さん側が余りにも医者に頼り過ぎているのではないでしょうか。熱が出ても、その多くは、朝まで待てるもの。どんな時に急ぐべきか、その啓蒙を医療側もしてこなかったツケが、今来ているとも考えられます。医者も、裁判を恐れて、過剰な検査をやむなくしたり、入院させたり、余分な(抗生物質などの)薬も投与したりしていることもあるかと思います。子どもの急患は(看護学校で教えている私なりの言い方ですが)、カキクケコ、仮死(新生児)、気管支喘息、クループ、けいれん、呼吸窮迫症候群(未熟児)、それに、熱がなければ腸重積、あれば髄膜炎などを考えます。お産やクループやけいれんや喘息は、何故か夜に起きることが多いので、医師の負担が大きいのですが、お産も、出来るだけ休みの日でないように、又、時間内に出来る様にしている時代です。小児の場合も、小児科医の負担を軽くする意味でも、時間を決めて、集めて夜診療をちょっとの間だけでもする感じにしたらいいと思います。私の場合は、30年以上、常に、そんな感じでして来ていますので、深夜起こされることは、少ないです(昼間来て、夜も来そうなた喘息やクループの場合は、深夜の吸入の指示を前もってカルテに記載して、その通りにナースにしてもらっています)。

*(外来で熱のある場合に渡している熱型表に書いている内容)
 子どもの見方は、次の4点に注意することが大切だと思います。つまり、「機嫌」、「顔付き」、「食欲」、「睡眠」です。熱、咳、下痢などがあっても、以上の4点であまり問題なければ、あわてる必要はないと思います。その大半は、翌日受診しても間に合うものと思われます。
 しかし、熱はないけど、何となく顔色悪く元気がない(腸重積やショック状態?)、熱はさほど高くないけど、力のない咳をして殆ど飲まなくなって息づかいが何となくおかしい(細気管支炎?)、3カ月未満の子どもの発熱(敗血症や尿路感染症など)、嘔吐が止まらない、顔色がどんどん青白くなっている、痛みがどんどん増している(急性虫垂炎?)、全く眠ることが出来ない、けいれんが止まりそうにない時、意識状態がだんだんおかしくなっている(急性脳症)、そんな状態は救急ですので、直ぐに電話して下さい。
 発熱は、熱を出して治そうとしている体の防衛反応ですし、熱の経過を見ることで、病状経過を知ることができます。熱を安易に座薬で下げても、再び上がることが多く、ウイルスがかえって強くなって熱が長引き、又急に熱を下げてもその反動で上がる時にけいれんが起きることもあります。当院では、その様な理由から、安易に解熱剤の座薬を使用していません。熱で苦しそうにしていれば、濡れタオルで、首や脇やソケイ部を拭いてみて下さい。それでもひどくきつそうにしていれば、病院にお電話下さい。急に熱が上がっても、その多くは、あわてる必要はないので、翌朝医療機関を受診して下さい。小児の場合は、熱の原因としてはウイルスのことが一番多いのですが、その多くは上下しながら熱があっても3日間です。

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週58時間以内何て・・・

2008-05-10 06:57:11 | Weblog
 労働時間は週58時間以内が基準(平成20年5月2日、Japan Medicine)

 日本小児科学会の代議員会・総会が4月26日行われ、2次医療圏の基幹施設となる病院小児科を、「地域小児科センター」として認定する制度を推進していくことを決めた。藤村正哲小児医療政策室長(大阪府立母子保健総合医療センター総長)は、「代議員からさまざまな意見が出されたが、最終的に小児科医の労働環境の改善と良質な小児医療の提供を目指して、認定制度を実現していこうという方向が了承された」と述べ、4年をかけた構想が一歩進むことに強い期待感を表明した。順調に進めば来年早々にも、暫定基準による地域小児科センターの認定施設が誕生する。

疲労度増すと離職への思い増す 労働時間短縮がカギ
 代議員会・総会に先駆けて行われた総合シンポでは、地域小児科センターは病院小児科の重点化・効率化の望ましいあり方を追求し、病院小児科医の勤務環境の抜本的改善のための方策として、この認定制度が位置付けられた。
 認定制度準備小委員会の舟本仁一氏(大阪市立住吉市民病院小児科)は、地域小児科センターの小児科医の労働条件に関する認定基準について「時間外を含め週労働時間を最大58時間以内」とした。
 これは最低限順守すべき基準で、可能な限り週40時間に近づけることが望ましいとしている。
 こうした労働時間の削減は、今の小児科医師のストレス・疲労を軽減させるのに必須としている。例えば、小児科医の疲労度調査によると、疲労度5以上は疲労度ゼロに比べて「真剣に離職を考えている」割合が6倍以上に増え、仕事の満足度が10以上になると、10未満に比べて「離職を真剣に考えている」割合は約4分の11減少するなど、労働時間の短縮化が喫緊の課題となっている。
 一方、フロアからは「2008年度診療報酬改定における小児科に付いては、小児科医20人の算定要件がつくなど、極めて残念な結果だった。地域小児科センター構想を推進していく上で、経済的担保がしっかりしていないと、施設内での合意形成が厳しい」とする意見も出るなど、次期診療報酬改定を見据えた対応が求められた。
 藤村氏は、今後の小児科医療の経営的安定化を考えた場合、社保委員会を中心に地域小児科センターの診療報酬の在り方などを軸に検討していくことになるとした。

認定基準 人員体制、労働環境などの基準を明記
 学術集会では、地域小児科センター認定制度の認定基準が報告された。
 認定する病院小児科の前提条件については、疲弊する小児医療の現状を改善するためには小児医療の重点化は不可欠であり、その実現のための地域の合意は最も重要な条件としている。
 特に、地域小児科センターは、圏域における小児医療の研修を実施していることや、病院の基本的機能として日本医療機能評価機構認定病院であることが必須としている。
 圏域の中心病院である地域小児科センターが提供する医療サービスは、救急型、NICU型、救急+NICU型の3つの型のいずれかの医療サービスを提供している。一般小児型の救急体制と、周産期型の救急体制は必要とされる人的・設備的体制は異なるため、どちらかの体制が整備されていることを、地域小児科センター申請の必要条件としている。ただ、救命救急医療の提供は、必要条件ではないとしている。
 提供する医療サービスは、<1>小児科各分野の臓器専門医療を提供。必要な検査・診断・治療などを実施<2>小児医療、保健、医療従事者の教育・研修を総合的に進めるために、それぞれのネットワークが構築されている<3>特定機能病院以外においては小児入院医療管理料2の施設基準を満たす<4>保育士配置、プレールームが加算できる施設基準を満たす-などが挙げられている。

深夜勤務明けは帰宅が原則に
 小児科医の人員体制・労働環境については、地域小児科センターが小児のための適切な医療体制と適切な医療従事者の労働環境を実現するため十分な人員配置がされている必要がある。
 さらに、この体制は入院機能、外来機能ともに整備されている必要があるとしている。
 小児患者に対する診療を行うための十分な看護師配置も求められている。
 労働時間については、<1>平均して週58時間以内とする場合には、労働基準法第32条の2または4に基づく変形労働時間制の協定を締結する<2>深夜勤務明けは帰宅を原則とする<3>週に1日以上の休日を確保する-などが認定基準として盛り込まれている。

時間外賃金の割増基準も明記
 小児科医師の給与については、時間外割増賃金の支払いが基準にそって進められるとしている。
  時間外の割増賃金の支払いは、<1>平日の時間外で2割5分増以上<2>平日の午後10時から午前5時までは5割増以上<3>休日は3割5分増以上<4>休日の午後10時から午前5時までは6割増以上-となっているほか、女性医師・妊産婦医師・パートタイム医師の処遇などの基準も明記された。
 小児科の経営収支については、小児科の経営収支が黒字の場合に病院が小児科に供与するメリットシステムが明示されていることや、小児医療を対象に受け取る補助金の小児科配分システムの明示が基準となっている。

*ムーッ、理想的ではあるが、実践となると・・・。20人の小児科医何て、そんなに沢山の数、どこから集められるのかなあ?患者教育が大切と思いますが(夕方から熱が出ただけでは、急患でない。朝まで待てない場合は、どんな時か、地道に教育して行く必要があると思う。どうしてもの時は、時間を区切ってその時だけ診る様にしたらいいと思う。小児科医の資源は限られているのだから、患者さん側の協力が必要だと啓蒙していくべきではないだろうか。遠回りだけれども、結局は、皆がこれで楽をする方法ではないだろうか・・・?!)、そんな内容は、議題にも上らないみたいだなあ。

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