コロナで遠ざかっていた十三の第7芸術劇場に久しぶりに行った。太田隆文監督の『ドキュメンタリー 沖縄戦』を観るために。ナレーションは宝田明さんだ。宝田さんの魂の叫びのようなナレーションが心に残った。
米軍のフィルムと生存者の証言、専門家の解説とをたくみに組み合わせて沖縄戦の悲劇を教えてくれる。1500もの児童が学童疎開船で犠牲になった対馬丸。生き残った平良啓子さんの鮮明な記憶が実相を示す。嘉数(かかず)高地の戦い、司令部のあった首里城の攻防。さらに渡嘉敷島での集団強制死。集団自殺とはいわない。中学生以上は学徒隊に編入され、残ったのは老人女性乳幼児児童。乳幼児児童がみずから死を望むはずがない。役場から手りゅう弾を二個ずつ配られ一家一族で固まって爆死を強制された。知花昌一さんは読谷村のチビチリガマとシムクガマの事実を説明する。チビチリガマでは140名くらいのうち、80余名が鎌や包丁でのどを切り殺し合った。「生きて虜囚の辱めを受けず」の戦陣訓が軍国教育で一般住民にも徹底された結果だった。一方1000人もが避難していた同じ村内のシムクガマではハワイ帰りの農民比嘉平治、比嘉平三さんがアメリカは民主主義、殺さないよと、壕内の人を説得して、米兵と交渉し、全員が生存をかちとった。
県民の3分の1が死亡した沖縄戦の実相をあますところなく教えてくれる。2時間近い作品だが、圧倒的な迫力だ。いまこそ、すべての人が見るべき映画だ。私が見たのは終了間際だった。だが、これからも全国の良心的な劇場で上映されるだろう。機会を逃さずに見てほしい。
この映画を製作したのが、なんと浄土真宗本願寺派だ。西本願寺だ。えらい。東本願寺も西本願寺も、日中戦争・アジア太平洋戦争で、親鸞聖人の教えになきことを教えと称して、侵略戦争に門徒を動員したことを深く反省して戦争責任の罪責告白をしている。その実践のひとつがこの映画だ。イラク戦争にも、集団的自衛権容認の戦争法にも反対した。ものを言わない教団もあるが、小泉・安倍政権を支えるために戦争の道にはまり込む教団もある。そういうなかにあって、西本願寺の『沖縄戦』製作は称賛にあたいする。
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